どうも、他人の性癖が見えるヒロインです。【改稿作業中】

高福あさひ

第1話

「他人の!! それも性癖なんて!! 見えたくないし!! 知りたくなかったよ!!」


自分が転生したと気が付いたのは、他人の性癖が見え始めたころである。明らかに自分にしか見えていないと思われる矢印のついた、何か。それも人の頭上にある。それを不思議に思った純粋無垢だったころの私は見てしまった。その人の頭の上の文字が「ロリコン」とあることに。


最初は何のことだろうと首を傾げ、素通りしようと思ったのだが、あら残念。頭の中に「イエス、ロリショタ、ノータッチ」という言葉が思い浮かび、手を出せば犯罪だからなとドン引き。結果的にそこから前世を思い出した。全くもって、嫌な思い出し方である。


さて、その思い出した前世なのだが、私の二度目の生の世界は「剣の世界、魔法の国」という当時大人気だったアプリゲーム。そのゲームはヒロインの容姿が二種類あり、髪の毛の色と髪型、瞳の色の違いでタイプが分かれており、「剣士タイプ(Fencer)」と「魔法タイプ(Magic)」とある。


そしてここが一番重要なのだが、どちらのタイプを選んでもこのヒロイン、脳筋なのである。剣士タイプであれば、「腕力でゴリ押せばいいじゃなーい」だし、魔法タイプであれば、「魔力で(以下略)」である。異色のヒロインすぎて、大丈夫かとも心配にはなったが、内容はそれらが気にならないほどに最高だった。


一つのアカウントで複数のサーバーを登録することができるため、頑張れば全ストーリーコンプが可能。サーバーによってもストーリーが異なるものがあって、非常に手の込んだ作品だった。アプリゲームとして配信された後は舞台になったり、携帯ゲーム機のソフトになってそちらでもできるようになったり、と展開はさまざまであった。


全力で展開されまくったコンテンツすべてに課金しまくったのだが、ここで一つ注意がある。このヒロインに他人の性癖が見えるような裏設定も能力もなかった。公式設定集やファンブックを舐めるように見たが、そんな文章はどこにもなかった。もう一度言わせてください、そんな能力はなかった!!


「ソフィア、そろそろ時間よ」


「はい、お母さま」


今世の名前はソフィア・アクロイド。ばっちりあのゲームのデフォルトネームだ。ちなみに年齢は十二歳でゲーム開始時の年齢は十五歳。プレイヤーだったころなら簡単に選べた二種類のタイプだけれど、すでに髪の毛の色は銀色に瞳は紫なので魔法タイプであることがわかる。現実なだけある、選択肢なんて無いわ。


「今日も頑張ります」


「ええ、頑張りなさい」


ゲーム通り、私は魔法の適性がすでに高く魔法防御、攻撃ともにトップクラスを誇っている。だけど私は戦いはあまり好きではない。そして重要なことだけど、私は前世でこのゲームは確かにやりこんだが唯一、攻略できなかったルートがある。それは治療隊ルートだ。


そもそもヒロインの「剣士タイプ」は物理攻撃か物理防御のステータスが高ければ騎士団配属になり、「魔法タイプ」であれば魔法攻撃が高いのか、魔法防御が高いのか、それとも治療能力が高いかによって配属される場所が異なる。あえて「治療隊」へ配属されるためのステータスを上げるということは、隠されていたためできなかった。だが今世では私はその「治療隊」への所属を目指すわけでもなく、騎士団配属を目指すわけでもない。


戦いが嫌なら、戦わない道を進めばいい。そう思った私が目指す道は教会のシスターだ。そのために今から教会への伝手を作ろうと、教会で受けられる魔法治療に参加している。医師資格も何もないけれど、シスター見習いとして通いで教会に在籍しているので、簡単な魔法治療なら私もさせてもらえるし、実際に現場を手伝わせてもらえることもある。

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