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としょ
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小説「坊っちゃん」
例えば、大人になってから、坊っちゃんと呼ばれるような、ムズムズとした感じ。新米なのに先生と呼ばれるような、遠くにある実感。真実を述べているのに、虚言だと言われる妄想視。全部、反対である。繋がっているけれど、どこまでも伸びていく、宇宙のようなものであるからして、えー……。
目の前に、自殺志願者が立つ。
死から逃れられない、などと言うもんだから、くだらんと返してやった。だが、次が出てこない。喉までは出かかっていて、破裂しそうなほどの膨張を感じるのに、口から出るのは、消えそうなほどに震えていて、縫い糸よりも細い息。まるで喉元にブラックホールが発生していて、どこかの街のスピーカーから出ていってしまってるとしか思えないのは、全部、妄想である。死を語ると、目に生が灯る。その目で俺を見るな。だが、俺を見ているうちは死なないだろう。くだらん、これは声に成った。
「そんなに死にたけりゃ勝手にしろ。だが、人と同じ死に方はするな。首を吊るとか、電車に飛び込むとか、薬物を大量に飲み込むとかな。それこそ、くだらん。一回きりなんだから、考えて使え」
「じゃあ、先生だったら何に使うんですか。同じように考える人はたくさんいるので、考えられるものはやり尽くされています」
「そうかい、なら俺は宇宙に行くな。月の裏側でミイラにでもなってりゃ、世紀の大発見だぜ」
ふぅむ、と言って考え込んだ。ガキが、これくらいで黙り込むようじゃまだまだだな。ガキはガキらしく、野はらを駆け回ってりゃいいんだ。ま、独創的なものを考えるこったな。初めてのことなら、役に立つかも知れんぜ、そう言って立ち去ることにした。あ、そうそう、これから、俺のことは坊っちゃん先生と呼べ、と最後に言うと、あいつは、不思議そうに口を開けたまま、うんともすんとも言わないまま、俺のことを、見つめるばかりだったので、何も思いつかないなら、宇宙で死ね、地上では生きろ、と吐き捨ててやった。
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