第一章
私には、大切な人がいた。
愛して止まない、大事な恋人が。
どうして過去形かと言うと、彼はもういないから。
今年の夏、彼は交通事故に巻き込まれて死んだ。
彼とは高校で出会って、7年間付き合っていた。
彼は運動が得意な人で、陸上部ではエースを勤めて、それでいて優しい人だった。
怪我をすることが異常に多くて、でもすぐに回復する凄い人で
私も「また?」と言いながら、笑ってお見舞いに行ったものだ。
人は、案外呆気ない。
あんなに元気な彼も、車にぶつかれば簡単に死んでしまうのだ。
彼の死で、私は人の命が儚いことを改めて考えさせられた。
他の人が、彼の代わりになればなんて最低なことを考えてしまうほど。
私は、彼を深く愛していた。
否、愛している。
私は、今でも彼を愛し続けているのだから。
彼の(ruby:死化粧:エンゼルケア)の少し前、私は彼の体重を計った。
特に、何か考えていた訳ではないけれど
意味もなく、ただしたことだった。
"21g"
彼の、生きていた時と今の体重の差。
その数字が、何だかとても大事に思われて、私はその21gという数字を頭に覚え込ませた。
まだ蒸し暑い、お昼のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます