第一章

私には、大切な人がいた。



愛して止まない、大事な恋人が。



どうして過去形かと言うと、彼はもういないから。



今年の夏、彼は交通事故に巻き込まれて死んだ。



彼とは高校で出会って、7年間付き合っていた。



彼は運動が得意な人で、陸上部ではエースを勤めて、それでいて優しい人だった。



怪我をすることが異常に多くて、でもすぐに回復する凄い人で



私も「また?」と言いながら、笑ってお見舞いに行ったものだ。



人は、案外呆気ない。



あんなに元気な彼も、車にぶつかれば簡単に死んでしまうのだ。



彼の死で、私は人の命が儚いことを改めて考えさせられた。



他の人が、彼の代わりになればなんて最低なことを考えてしまうほど。



私は、彼を深く愛していた。



否、愛している。



私は、今でも彼を愛し続けているのだから。



彼の(ruby:死化粧:エンゼルケア)の少し前、私は彼の体重を計った。



特に、何か考えていた訳ではないけれど



意味もなく、ただしたことだった。



"21g"



彼の、生きていた時と今の体重の差。



その数字が、何だかとても大事に思われて、私はその21gという数字を頭に覚え込ませた。



まだ蒸し暑い、お昼のことだった。

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