学校のデッドリー怪談

ガッkoya

【プロローグ】死ぬのは誰だ

 雲が立ち込め、辺りは暗くなっていた。先程まで門出に持って来いだともてはやされていた春の陽気は鳴りを潜め、空気は湿り気を帯びている。


 俺達四人は草っぱらの上に立ち尽くし、何か言葉を探すように、あるいは誰かの言葉を待つように、互いの顔を見比べている。

 は冗談なのだと笑い飛ばしてほしかったのかもしれなかった。それでこの緊張感を取り払ってほしい。そう思う気持ちは俺の中にも存在した。


「どういう事だ。この中の誰かが死ぬとは」

 礼沢塔哉れいざわとうやが沈黙を破った。表情控えめの端正な顔はこの状況下においても崩れる事は無く、冷静に見えた。あるいは先程体験した『超常現象』を含めて一切を信じていないのか。


「間違いないと思うぜ。聞いた話と合致し過ぎだ。ただの集団ヒステリーだったら御の字だがな」

 速山光汰はやまこうたは先程の荒唐無稽な発言を冗談とは言わなかった。ポケットから取り出したスマートフォンを操り、何かしらのページを手繰り寄せ、内容を確認している。きっと今から俺達もそれを読まねばならない。ただ誰かが死ぬだなんてくだらない話、こいつは決してジョークで言ってはいない。


「おいおい、ふざけんのはよせよ、死ぬとかなんとか! ある訳ないだろそんな事! 俺はこんな所で死にたくはないぞ!」

 サドン崎デス男サドン崎デス男が馬鹿馬鹿しいとばかりのオーバーリアクションで迫り来る死を否定した。だが、いくら言葉と身振りで否定しても表情や声音に宿る恐怖を隠し切れておらず、喋っている途中で本音も漏れている。この異様な状況に、有り得ない話ではないと思わされてしまっているのだ。


「……これから入学式だっていうのにな」

 見ないふりは通用しないようだと覚悟を決めた言葉。呟いたのは俺だ。


 俺の名前は永露尚人えいろなおと

 今まさに高校に入学しようというこのタイミングで死の宣告をくらった、そんな新高校一年生の内の一人だ。


 永露尚人、礼沢塔哉、速山光汰、そしてサドン崎デス男。

 今日、この中の誰かが死亡する。


 それが一体誰なのか、きっとこの世界の誰にもわからないだろう。ましてや今日の早朝、俺達がこの公園に集まった時点でそれを予測できていた者なんて……。


 横目に満開の桜を見上げ、俺は家を出てからここまでの事を思い出していた。








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