村人C、闇落ちした女神とオネエ勇者と世界を滅ぼすことになりました
汐 ユウ
1.NPCの役割
私のステータス上の名前は「村人C」。与えられた役割は、この魔王と魔物によって侵攻を受ける世界を救いに来た勇者に、決められた台詞を言うだけ。
初めの村の入り口から二軒目。小さな家には効率を無視された小さな台所と、両親がいる設定なのに一つずつしかない椅子と机とベッド。下着と靴下を入れたら他のもの入らなくない?と思える二段しかないタンス。あとなんのために設置したのか分からない壺が複数。
実際、両親なんて出会ったこともなければ、服を着替えることもない。
NPCなんてそんなものだ。
勇者は今日も勝手にやってきて、タンスを勝手に開け、壺を割り、「なんもねぇな」と暴言を吐く。てめぇ不法侵入してきた挙げ句、泥棒みたいなことしてんじゃねぇよ!
なーんて言える権限もなく、
「お父さんとお母さんが東の森に行ったまま帰ってこないの。最近、魔物も増えてきているし大丈夫かしら」
という私の唯一の台詞を言うだけ。もう何千回何万回と言ってきたことか。
その上、この両親は必ず助からない。大丈夫もなにもない。
そして、私の話を素直に聞いて森に行った勇者は、魔物に食われてゲームオーバーとなる。このゲーム、結構鬼畜。
ちなみに私の話を無視する正規ルートを選ぶと勇者は先に進めるが、私たちの村は魔物に襲われて終わる。身体を食い千切られて死ぬ。上手く頸動脈を破ってくれるならまだいい、腕や足からちまちまとやられると地獄だ。
あぁ、今回の勇者は素直だったのか、攻略サイトを見ていないのか死んだらしい。
また次のゲームが始まる。
台所から三マス下のところで待機。せめて外の世界を見てみたいな。
私は、この小さな家の外を見たことがない。
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