あたしがいるのは深い森~鎖国日本の学生エージェント
江戸川ばた散歩
はじまりはアイスクリーム。
「アイスクリーム?」
彼は口をゆがめた。
「何だって君、まあそんな」
呆れてる。
「何だっていいじゃない」
あたしは言い返した。
「だって、あなたいつも言ってるじゃない。終わったら何でも『ごほうび』で好きなものを一つあげるって」
嘘はいけないのよ嘘は。
「だからってね君…… アイスクリームはないだろう?」
ほらほら、そうやって眉間にシワを寄せるとどんどん老け込むのよ。ただでさえ、おっさんなのにさ。
「いーじゃないの。あたしはそれが欲しいのだもん」
そういう態度を取ると、こっちもむきになるからね。
「それも一種類じゃないんだから。そう、基本はバニラよね。一口食べると甘味が舌にふわーっと広がってそれだけですごいシアワセ感じるようなの。それにチョコ。あ、それともチョコチップがいいかな。全部チョコでチョコな、チョコクリームがいいかな。それとそーよね。これははずせないわ、ラムレーズン。絶対それよ。それがいいの。それにして。三種類よ。基本はバニラ。それにチョコチップとラムレーズン。絶対よ。約束。しないとあたしは動かないから」
あたしは一気にまくしたてた。
「君はねえ……」
彼はふう、とあきれたようにため息をついた。
「どぉ?」
ぐい、とあたしは相手に迫る。
判ったよ、と彼は苦笑いを返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます