第2話 初歩的なミス
狩りをすると決めた以上、狩場を見つけなければならないが、恐らく街周辺の狩場は混み合っているだろう。
「どっちに行こうか迷うな…北と東と西は人が多そうだし、南は樹海っぽいから強いモンスターが出そうだしなぁ…」
悩みに悩んだ結界…
「よしっ!やっぱ南にしよう」
そして俺はガイドブックを頼りに街中を歩き南の市門に到着した。
「君、市民証をこの上に
市門に居た門兵に言われ市民証を台の上に置翳した。
「市民ナンバー3608…ツキシロ‥サマ…確認シマシタ」
箱の様な台が機械的な音声でそう告げた。
「フィールドから戻って来た時も同じ様に帰還報告を忘れないようにな!」
「あっ、はい」
NPCと分かってはいたが、ついお辞儀をしてしまった。
南門を潜り抜け、そこで一旦思いっ切り伸びをした。
「よーっし、ゲーム初日だし…まずは様子見程度だな」
街を出てから最初の狩場があったが人がいっぱいで効率的に悪そうなのでスルーした。
「ここのモンスターはウサギなのかネズミなのか分かんねぇな」
更に先へ進み5分程歩いた所で1匹のモンスターを見つけた。
「犬?いや狼か? 初戦闘としてはチョッと不安だけどやってみるか」
俺は背中に担いであった弓を持ち…
「あれ?矢が…あーー矢が無い!」
初歩的なミスをした事に今頃気付いた。
「矢は自分で調達しなきゃいけないのかよ…今までやってたゲームじゃ魔術師ばっかだったからなぁ…ハンターって意外と面倒な職なんだな」
魔法職は初期装備のメイスやワンドがあれば攻撃が可能だが、ハンターの初期装備は弓であり、矢と言うアイテムが必要だった事に気付かなかったのだ。
「弓で殴る…なんてアホすぎだよな…ここはやっぱ短剣か…ま、なんとかなるだろ」
俺は弓を背負い直してから道端に落ちていた小さな石コロを拾いモンスターに向け投げた。
石コロが当たった瞬間[モンスターとエンカウントしました]と脳内アナウンスが流れた。
犬か狼か分かり辛い見た目のモンスターは【Lv1ウルフドッグ】と頭上に名前が表示され、有難い事にHPバーまで表示されていた。
「ウルフドッグ…どっちだよ!」
思わずツッコミを入れてしまった。
ウルフドッグは俺目がけ一直線に走り出してきた。
俺は右手に短剣を持ちウルフドッグを迎え撃つ。
ウルフドッグは俺の数メートル手前で跳躍した。
「モンスターさん、それは悪手だぜ!」
身体を横に
短剣を持つ右手が若干だが痺れた。
――感覚リアルすぎだろっ。
ウルフドッグの方は着地と同時にその場に倒れ伏した。
俺は
退治した狼犬が消えた直後、[ピコン]と音が鳴った。
「何だ今の音は…レベルアップを知らせる音かな?」
確認の為、ステータスを開いてみる。
――ステータスオープン
※ ※ ※ ※ ※
名前:ツキシロ
Lv:1
HP:100/100
MP:40/40
AP:95
職業:ハンター
副職:錬金術師
所持金:5120G
所持品:アイテムバッグ(小)
※ ※ ※ ※ ※
先程の音はレベルアップを知らせる音ではなく、アイテム系の拾得音だった。
「モンスターから通貨のドロップもあるのか…APも5減ってるな」
俺は暫くこの辺り一帯に居る狼犬を倒す事にした。
2匹目を倒した時[レベルが上がりました]アナウンスが流れた。
その後も淡々と狼犬を倒していき、結果的に所持金が6270Gまで貯まりレベルが5になっていた。
「そろそろ先に進んでみるか」
APが65も減っていたので、休息を踏まえ次の狩場を探す事にした。
先へ進むほど狩りをしている人が少なくなっていく。
今は5~6分に1人の割合でしか狩りをしている人を見かけなくなった。
「この辺はゴブリンかぁ」
今までは見た目で判断出来ないモンスターばかりだったが、ゴブリンだけは見た目で分かる。
体格は小さく体色が緑色、手には棍棒を持っている。
「これでゴブリンって名前じゃなかったら怒るぞっ」
俺は短剣を持ちゴブリンにゆっくり近づくと[モンスターとエンカウントしました]アナウンスが聞こえ、【Lv4ゴブリン】も俺に気付いたようだ。
俺はゴブリンより先に動いた。
「ギィィイー」
ゴブリンが叫び棍棒を振りかざし俺に向かって走り出してきた。
ゴブリンが俺目掛け棍棒を振り下ろす。
それを回避し、棍棒を持っていた腕を切り付ける。
「ギィッ、ギギィィィ」
「うわっ、血まで緑色かよっ」
切り付けられた事で棍棒が地に落ちたが、ゴブリンは反対の手で棍棒を拾い、再び俺に向かってきた。
「学習しねぇな!」
さっきと同じ要領で反対の腕も切り付けた。
「ギギィー」
武器を持てなくなったゴブリンは後退り始めた。
しかし逃がさない。
俺は体を低くしダッシュしながらゴブリンの左太腿を切り付け、勢いそのままにゴブリンの後ろから反対の太腿を切り付けた。
ゴブリンはその場で尻もちを付くような感じになり、抵抗出来なくなっかゴブリンの土手っ腹に短剣を突き刺した。
「ギィィィィー」
声と共にゴブリンは消えた。
≪レベルが上がりました≫
「ふぅー、やっぱ短剣じゃキツイなぁ。一旦街に戻って矢を調達しとくか…」
この先の戦闘を考えて一旦待ちへ戻る事にした。
これまでの戦闘でレベルは7となり所持金が6850Gとまで増えていた。
ステータスの確認も終わり来た道を戻る。
街の南門に着き出る時と同じ様に守衛が持つBoxに市民証を翳してから中に入った。
「道具屋は…」
ガイドブック記載の街のMapを見ながら一番近い道具屋へ向かった。
街の中を歩き直ぐに道具屋を見つけた。
「ここか、道具屋は…意外と綺麗な建物だな」
俺は中に入り売られている品々を物色しながら矢を探していると、店のNPCに声を掛けられた。
「何かを探してるのかい?」
「えっと、矢を…」
「矢ならあっちだよ」
NPCが指す方を見ると小さな一画に矢が置かれていた。
「矢ってこれだけ?」
「今時、矢を買う奴なんて居ないからね」
「えっ!?」
「アンタもしかして…アロースキルを覚えていないのかい?」
「アロースキル?」
「弓術の基本スキルだよ」
「いや、今日ゲームを始めたばかりなんで…」
「ゲーム?何だいそりゃ」
――あっそうか…俺達にはゲームでも、こっちの中では通じないか
「いや何でもないです。えーっと、今日ハンターになったばかりなので…」
俺は即座に言い直した。
「なんだい初心者ハンターだったのかい!」
「はいっ!」
「じゃあ私が教えてあげるよ!特別にねっ」
どうやらこのNPCはAI機能があるタイプのようだ。
「アロースキルって言うのはね、弓を引きスキルを発動させると矢が備わるスキルの事だよ」
「それって、矢が尽きる事は無いんですか?」
「矢は無尽蔵に撃てるね」
「じゃあ、ここで売ってる矢って…」
「あー、大半は目印に使ったりする時用だね」
「アロースキルの矢は数分で消えてしまうからね」
大量の矢を持たなくても良いってのは便利だな。
「そのアロースキルはどうやったら覚えられるんですか?」
「ん、簡単だよ!スキル書で覚えるだけだからね」
「スキル書?」
「まぁ初心者だったらスキル書の事も知らないか」
「す、すいません…」
NPCに謝っても意味はないのだろうが、会話をしているとNPCって事を忘れてしまうな。
「アンタ、ハンターって言ってたね?ハンターのスキル書ならハンターギルドで手に入るよ」
「ハンターギルドですか?」
「販売価格は知らないけど、初級スキルなら3000G~10000G位じゃないかな」
「結構な値段するんだ」
「何言ってんの、安い方だよ…主戦力スキルだと50000G~100000Gはするよ!」
「高っ!」
「初心者じゃ手は出せないだろうけどねっ」
「取り敢えず、ここの矢を10本下さい」
「矢筒はあるの?」
「あっ、矢筒もお願いします」
「じゃ全部で1300Gになるから、カウンターの上にある金銭登録機に市民証を翳して支払ってね」
「これに翳せばいいんですね?」
「そうよ」
――この市民証って便利すぎだろ!電子マネーまで備わってるなんてよ…近代的すぎる。
俺の所持金から1300Gが差し引かれ残5550G。
「ギリギリ初級スキルが買えるくらいか」
支払いを終えて店を出、ハンターギルドへ向かった。
ガイドブックを見るとハンターギルドは中央広場から西の方角に位置している。
中央広場まで戻り西へと歩くこと10分。
「ここがハンターギルドか…広場からは少し離れてるな」
俺はギルドのドアを開けて中に入ってみた。
「ハンターギルドへようこそ!」
カウンターから元気な声が聞こえた。
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