#10
協力作業後の交流(?)も終わり、私的には『ヒューム』についての謎が増えただけのような結論が出た頃。
ビーッ、ビーッ
「敵襲警報!?」
「敵!? 敵って!?」
「そりゃお前、『ヒューム』しかないだろ!」
「で、でも、どこから!?」
バタンッ
「森坂さん、これ、なんですか!?」
「みんな、地下シェルターに逃げて! 制圧部隊のパイロットが何名か脱走して、この基地にあった稼働可能な『フェザーズ』を奪って暴れているの!」
「「「暴れている!?」」」
なんじゃそりや。っていうか、フェザーズ本体をそんなに集めていたのか、この基地に。
「暴れてるっていうのもよくわかりませんけど、パイロットが脱走できて、接収したフェザーズがここにあるのを知ってたってのは、どういうことなんですか?」
「それなのよ! 既に『ヒューム』のスパイが何人も日本に紛れ込んでいたの! 亡命者や難民のフリをして!」
「典型的な潜入方法じゃないですか!」
いやまあ、切迫した境界線じゃあ、どうしても防ぎ切れないとは思うけど。それにしたって、ピンポイントだ。例によって……
「……目的は、私たちですか?」
「あと、グランザイア博士ね!」
「博士いうな!」
「こんな時に、何こだわってんすか」
「私は、『教授』になり損ねた『博士』でしかないからだ!」
なにそのコンプレックス。わからないし、わかりたくもないが。
「だから……だから私は、『選ばれなかった』んだ……」
これは……『ヒューム』創設に絡む話かな? なんとなく、そんな気がする。気がするが、今は!
「とにかく、逃げ……きゃあっ!?」
ドシャアアアッ
ガランッ、ドオオオンッ
格納庫の壁を突き破って現れたのは、『フェザーズ』5機。これは多い。なにしろ、戦車換算で数倍の規模だ。
『いたぞ! ガキ共も博士も全員揃ってる! 歩兵部隊、取り押さえろ!』
フェザーズの機外スピーカーからの声に従って後ろからわらわらと現れた兵士たち。私たちを殺す気はなさそうだけど、捕まえるために森坂さん他の軍の人々を攻撃することはあるだろう。軍人なんだからしかたがない……と割り切れるほど、納得できる私ではない。
だから……わかっているよね、『ハルト』!
プシューーーッ
『な、なんだ!?』
「解析中の機体が、勝手に……!?」
格納庫でバラされていた、腕なし上半身だけのフェザーズ機体の、背中のハッチが開く。コックピットはお腹の方なので、機体の中が見えるとかそんなことはない。その代わり、背中の内側に格納されていた何枚かのプレートがスライドして、横に広がる。そして、
ゴウッーーー
背中のハッチの更に下に組み込まれている
「飛んだ……!?」
『ば、バカな!? フェザーズが、飛ぶなど……!?』
いやあ、コマンド群を解析した限り、もともと飛べるように作ってあったよ? だからこそ『
それはともかく。
ガシャアッ
ドガッ
ズンッ―――
空飛ぶ上半身フェザーズが、前衛のフェザーズ2機に後ろから突っ込み、地面に倒れていく。それに伴い、私たちを拘束しようとした歩兵部隊も後ろに戻る。2機に覆いかぶさるようになった上半身の機体がしばらく『接触』していると……。
パカッ
「「うわあああああっ」」
「成瀬くん、行くよ!」
「へっ、ど、どこに!?」
「こんな時にボケは要らないよ! 『フェザーズ』を操縦したかったんじゃなかったの?」
「……! おう!」
だっ
「ちょっ、待ちなさい!」
「霞!?」
とりあえず、地面に転がっているパイロットに軽く蹴りを入れて転がした後、開いているハッチに乗り込んで操縦席に座る。機体自体が横になっているから、重力がキツい!
「でも、とにかく『感応パネル』に手を置きさえすれば……!」
座席両端にあったそれらに両手をそれぞれ置き、いったん、心を落ち着けて―――
―――
キュイーーーン
よし! やっぱり『ハルト』を動かしていた時と
「そんな……あんな小娘が、いきなり起動させるなんて……!?」
下に転がっていたパイロットが、そんなことをのたまう。小娘で悪かったわねえ。まあいいや、ハッチ閉じよっと。
シューッ
「さーてと……
『了解』
キュイーーーン
シューッ
「起動できたみたいね。下手に通信接続して余計なこと聞かれても困るから、ネット接続と機外カメラのみオンにしてっと」
ピッ、ピッ
「それじゃあ、いっくよー!」
―――
ガシャン
グンッーーー
「あとは、自分の手足のように動かせばいいのよね。あ、それ♪」
ドゴオッ
呆けて立ちつくしていた後衛フェザーズ3機のうちの1機に、左足で腹パンする。ほとんど不意打ちだけに、我ながらヒドい。
ガシャーーーンッ
格納庫の壁にくの字でぶつかり、そのまま崩れ落ちて動かなくなるフェザーズその3。ちなみに、その1が私の動かしてるコレで、成瀬くんのがその2である。そういえば、個体名ってあるのかな? 『結晶体』を神秘化するくらいだから、なんか付けてそうだよね。北欧神話あたりの何かとか。組織ぐるみの黒歴史。
ガチャッ
「うわっ、乙女に銃を向けるなんて!? ……なーんてね」
今にも私の機体に機関銃タイプのそれを撃ち始める動きをした、フェザーズその4。だが……遅い、遅いよ!
ドスッ、ドスッ
小走りするような形で、フェザーズその4の銃を構える腕の横にあっさりたどり着き、銃を持つ手を掴む。
「ほいっ♪」
そのまま手を腕ごと手前に引っ張ってバランスを崩し、地面にうつ伏せ状態にする。
「んしょっと」
そして、背中に
ボスッ
……シュウウウ
「さてと、残りの1機は……おおお」
成瀬くんの機体が、最後の後衛の機体に寝技を決めていた。それはもう、見事な
「ねえ、ハルト、それって、どっちかがエネルギー切れるまで続くよ?」
『いや、僕じゃなくて、彼……
「えええ……」
成瀬くんって、別に柔道とかやってたわけしゃないよねえ? どちらにしても、このままでは埒が明かない。ので。
ガチャッ
パァンッ
とりあえず、持っていた銃でフェザーズその5のメインエンジンをピンポイントで破壊する。以上。
キュイーーーン……
カパッ
「おい、御子神! ギブアップ言うまで待ってやれよ!」
知らんがな。
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