第249話 逃げれなかったので、覚悟を決めました

 いくつか爆弾を落とした後、ジェネスに頼んで色々とやって第二ラウンド開始! ――とか思っていたんだが、会議は一旦中止となった。


「流石に情報量が多過ぎる。整理したいのもあるが――」


「ぶっちゃけるとな、精神安定させてくれって話だ」


 皇帝の表向きの理由に加え、裏の話を皇王が説明してくれた。

 ん? 陛下はって? 頭抱えて溜息出まくってます。

 と言うか、話を聞いてた大半がそんな感じだ。

 皇帝と皇王の持ち直し方が半端じゃないのだろう。

 そう言った理由で、会議は翌日に持ち越されたのだが、問題が一つ。

 縛られている神達をどうするかである。


「このままで良いんじゃねぇか?」


「あんたねぇ……流石に可哀想でしょうがっ!」


 ゼロ、ツクヨからコブラツイストを食らって撃沈。

 何も解決してないのに、ゼロの意識を落とすのもどうかと思うが、そこはメナトが引き継いだ。


「監視付きで釈放。まぁ、セブリーは帰る気ないだろうから、飯でも与えておけば大丈夫なんじゃない?」


「残りは?」


「アシスはラフィに用事があるみたいだから。リュラも流石に残るとは思うよ? 監視はいるだろうけど。で、一番お問題神たちなんだけどね――」


「レーネスは予測がつくけど、なんでシーエンが問題神?」


 メナト曰く、シーエンは良く言えばインドア派、悪く言えば引き籠りだそうで、地上には残っても、天幕内に引き籠る可能性があるらしい。

 じゃあ、何で釣るかって話なんだが、特に無いとも言われる。

 他の四柱と違って、一番物欲が無いそうだ。


「ご褒美作戦が無理とか、どうしろと?」


「ラフィ君、私に任せて下さい」


「「うわっ!?」」


 いきなり話に入って来たヴァルケノズさんに驚くも、良案があるなら聞くというメナト。

 つか、気配消して近付くなと苦情を言いたい。

 空気読んで言わんけどさ。

 そして、ヴァルケノズさんの案をメナトは承認して任せる形となった。

 理由としては、一柱くらい帰っても問題無いのと、有用な可能性があるからとの事。

 一日だけだし、問題もないだろうとの事だった。


「じゃあ、任せるよ。もし帰ったら、私に報告してくれ」


「はい。では、お任せください」


 こうして、神五柱の拘束は解かれた。

 監視者としては、セブリーにはツクヨ、リュラにはゼロ、レーネスにはメナト、アシスには俺が付くことに。

 アシスに関しては、俺に話があるとの事なので、必然的にとも言える形となった。

 こうして、各々が天幕に戻る中、俺とアシスは人払いをして会議用の天幕内を貸して貰った。

 各国からの許可は貰っているので、早速話を進めて行くことにする。


「で、話って何?」


「……獣人族に関してだ」


 アシス曰く、亜人との扱いの差にどうしても納得できなかったらしい。

 今の状態が続けば、獣人族はその種を絶滅させることになると。

 どうにかして、庇護を与えてやっては貰えないかという話であったが、ぶった切って断った。

 そもそもの話、順序が間違ってるんだよなぁ。


「あのな、獣人族の恨みの矛先は誰に向いてる? 家族が害される可能性がある以上、無理に決まってんだろうが」


「では、どうあっても無理だと?」


「今の状態じゃ無理だね。条件次第なら出来なくはない」


 はっきりと言ってやると、アシスは渋い顔になった。

 つうかこいつ、頭固すぎだろ。

 こっちは、条件次第では――と言ってるのに、条件すら聞いてこないとは。

 弱肉強食が根付きすぎてる弊害か?

 なんて考えていると、脅迫されました。


「ならば我は、お主の敵となろう。それで良いな?」


「あ? てめぇ、マジで言ってんのか?」


「無論だ」


「そうかい。ここまであほぅとは思わんかったわ。こっちは、条件次第って言ったのにな。オーケーオーケー……じゃあ、殺して滅してやんよ」


 お互いに殺気を飛ばし合う。

 だが、神特効の特性がある以上、アシス一人では勝つ事は出来ない。

 例え戦闘経験が豊富であっても、今の俺には覆せる状況である。

 二人して睨み合い、遂には天幕内に殺気の暴風が吹き荒れ、外にいる者達へと伝播していく。

 ある者は震え、脅え、腰を抜かし、逃げ出す者が出てきたところで、メナト介入。


「二人共、落ち着くんだ。私が間に入って話を聞くから、殺気を出すのを止めるんだ。これ以上は、世界に悪影響を及ぼしかねない」


「……ちっ」


「ふんっ」


 メナトの言葉で、とりあえずは互いに殺気を収める。

 収めた後は、何故、今の状況になったかを説明して……メナトがアシスにキレた。


「君はバカかい? いや、バカだったね。大馬鹿だね。死ねば良いのに」


「メナトよ、流石に我も怒るが?」


「図星を言われて怒るんだ? よし! じゃあ、神界で喧嘩しようか。言っとくけど、本気で潰すよ?」


「上等である。そう簡単に、我に勝てると思わぬことだ」


「ちょっ――ストーップ!!」


 何故か、メナト対アシスが開戦されそうになっていたので、止めに入る。

 そもそもさ、揉めてたのって俺だよね? なんでメナトまで揉めてんだよ! 君、介入者だよね? 調停的な役割できたんだよね?


「こいつがあまりにも馬鹿だから、ついね」


「我、本気で怒って良いか?」


「だぁぁぁっ! きちんと説明してやるから、とりあえずアシスは正座! あ? 文句言ってんじゃねぇ! 元はと言えば、お前の理解力無いのが原因だろうが!」


 その後、メナトと二人で滾々と説明するも、一部理解が追い付かない様で、リュラを招集して更に説明。

 アシスが理解するまでに、一時間以上かかってしまったが、どうにか納得して貰えはした。


「つ、つかれた……」


「全く……同じ神として頭が痛くなるよ」


「両者ともすまぬ。まさか我も、これほどまでとは……」


 三者三様に疲れ切っていたが、アシスから謝罪はされたので良しとしよう。

 それでだ、理解したところで問題解決の話をしていく。

 今ある問題点は複数。


 一つ、色んな国や種族に恨みを持つ獣人が多い可能性がある

 二つ、傲慢さゆえの他者を見下す行動をす可能性

 三つ、帝国からの同胞解放を強行してくる可能性

 四つ、亡国となった亜人国と同じ事をしてくる可能性


 これが、庇護する上での

 そう、国だけへの懸念だけでも4つあるのに、恨みの元凶である俺への問題点まで残っている始末。

 簡単に許可できるわけがない。

 それにだ、恐らくだが、獣人専用の法を整備しなければならない可能性もある。

 今のままでは不可能と言って良いだろう。


「という訳で、無理というよりは不可能」


「一つ質問である。仮に全てを解決したならば可能か?」


「うーん……受け入れてくれる国があれば?」


「お主が建国すれば良いだろう」


「簡単に言ってくれるな。良いか? 領地を開墾するのですら大変なんだぞ。魔法を使ってもな。なら、規模が違う建国がどれだけ大変か……」


「ぬぅ」


「それにだ、解決策を聞いてないんだが?」


 アシスに訊ねると、神託を降ろすそうだ。

 普通なら、種族毎に神子がいるらしいのだが、獣人族は現状いないらしく、少し無理をするらしいが、夢に干渉するそうだ。

 恨みに関しては、アシスが一身に受ける方向に持って行くらしいが、大丈夫なのだろうか?

 メナトに視線を向けると、口出し無用と首を横に振られた。

 この辺りは、神として譲れない領分らしい。

 一応、リュラとメナトが補佐するようだ。

 次に、奴隷解放に関して。

 これは不可能だと言っておく。

 先に亜人奴隷を解放してしまい、帝国は労働力を大幅に低下させた。

 内乱で犯罪奴隷に落とされた者達も多くいるが、足りていない状況だ。

 この時点で獣人まで解放したら、帝国が潰れてしまいかねない。

 将来的に、緩やかに解放していく手段しか取れないだろう。

 因みに、神として命令するならば、庇護はしないと言ってあるので、唸りながら諦めた。

 物分かりが良くて、大変結構である。

 とにかくだ、意識改革は必須である。

 話しはそれが済んでからと言って、終わらせた。

 簡単な話、やる事やったら、出来る限りのことはするよ、って話なだけだな。


 そして翌日、神も交えた会議が再開された。


「先に言っておくぞ、グラフィエル。昨日、各国とも話し合ったが、お主の発言に対して、どの程度の信憑性があるかという話になった」


「まぁ、そうでしょうねぇ」


 今の話は想定内。

 いきなり信じろと言われる方が無理である。

 まぁ、王達は信じている様だが。

 後は……この場にいる、一部の貴族かな?

 後は、半信半疑って感じだろう。

 完全否定しないのは……証拠が無いからかな?

 まぁ、信じるかどうかは、あなた次第って話だな。


「聞いておるのか?」


「聞いてません。厄介事は聞こえないんです」


 陛下の頬が少し引くついたが、周りの王達は苦笑だ。

 そんな中、皇帝が陛下に変わって話すという。

 これは流石に、聞かんと不味いな。


「良いかの? まずだ、こちら側の方針として、北部、西部、東部の土地を一定まで併合する。但し、三国総合で三分の一までだ。三分の二は、残す」


「小国領主同士で争いそうですね」


「まぁ、このままではそうなるであろうな。そして、纏めるとなると南部の辺境伯であろう」


「そうですね」


 一体、何が言いたいのだろうか? だが、次の言葉に、爆弾落とし返しをされてしまう。

 昨日の仕返しとかやめて欲しい。


「南部の辺境伯だがな、お主に従属するらしいぞ? 一部の野心ある貴族家は反発するであろうが、南部も平定に協力すると、書簡が届いておる」


「つまり、自分に建国しろ――と?」


 内心では驚いているが、そこはポーカーフェイスで切り抜けてみる。

 出来ているかは知らんがな。


「強制ではない。建国するならば――だの。するもしないもお主の自由だが、儂らからの本音を言えば、して欲しくはある」


「理由を聞いても?」


「お主の話が事実だと仮定するならば、早いとこ終わらせたいのだ。既に夏でもある。収穫祭迄には、ある程度は終わらせておきたいというのが本音だ」


「自分の建国はあまり関係……あ、さては中央と南部を押し付ける気ですね!?」


 バッと視線を逸らす王達。

 きたねぇ! やる事がきたなすぎる!

 そっちがその気なら、こっちも遠慮なくやりますからね!


「そっちがその気なら、こっちからも交換条件出しますけど、良いですよね?」


 ニッコリと笑って告げてみる。


「まて! お主のその笑顔……また難題を言うつもりであろう!」


 焦る陛下と各国王達。

 それに対して、笑顔だけで応えてみる。

 各国王達、深い溜息で応えた。


「聞くだけ聞いてやる。言ってみよ」


「獣人たちの扱いですね」


 獣人との単語に、アシスと皇帝の顔色が変わる。

 他の王達は、また内政干渉するつもりか!? と戦々恐々。

 なので、アシスの名を存分に使わせてもらう事にする。

 結果、皇帝が泣いた。

 比喩表現ではなく、実際に涙をほろりと流した。

 あー、なんかすみません。


「とは言え、神の願いならば……いやしかしなぁ」


「ですがこの話、ラフィ君が建国したらですよね?」


「するんじゃないか? その資格は十分だと思うんだが」


 陛下、竜王国王、傭兵王が何か言ってる。

 それとは打って変わって、焦る者も。


「ラフィ君、聖騎士の引き抜きを大量にしないでね。本当にしないでね! 振りじゃないからね!」


「我が国の労働力が……貴族からの突き上げも……儂、皇帝辞めて隠居しようかの」


「しっかりしろ、皇帝! あ、ブツブツ言い始めてるぞ? 衛生兵! 衛生兵っ!!」


 教皇、皇帝は焦り、珍しく焦っている皇王。

 あれ? この流れは延期になる?


「3日目など、やってられんわっ。それで、どうするのだ?」


 陛下に詰め寄られた。

 これは流石に逃げられないか。

 まぁ、年貢の納め時ってやつだな。


「わかりました、引き受けましょう。但し、手伝って下さい」


「やはりやら――今、なんと言った?」


「建国すると言いました。でも、全てが不足しているので、手伝って下さい」


 全員が、口をポカーンと開けていた。

 あれ? やって欲しくなかった? そんな中、父上が真っ先に復活した。

 珍しい、明日は槍でも降るのかな?


「なにか変な考えをしているな? まぁ、良い。それにしても、本当にやるのだな?」


「二言は無いですよ、父上。問題は山積みですけど」


「良い国を作るのだぞ。それと、手伝いが必要なら、言ってくるんだ。無理な事もあるがな。はっはっは!」


「ありがとうございます、父上。では早速、父上の出向をお願いしますね、陛下」


「「へ?」」


 間抜けな声を出す、陛下と父上。

 でもさ、手伝って欲しいと言ったら、二人共、首を縦に振ったよね? だからさ、父上には暫くの間、こっちに居てもらいます。

 衣食住は、きちんとしますから大丈夫ですよ。

 趣向品もありますから。

 え? 娯楽? あるわけ無いですよ。


「へ、陛下!」


「グラキオス、頼む」


「……はい」


 優秀な人材、ゲットだぜ! 期間限定でだけど。

 さて、そうと決まれば、次は獣人関連か。


「皇帝、一つ勘違いしてますので、話して良いですか?」


「な、なにをだ?」


「別に、奴隷解放を今すぐする予定は無いですよ」


「……まことか?」


「はい」


 獣人に関する奴隷解放は、帝国の労働力の推移を見ながら徐々に解放という形で行うと告げたら、皇帝大喜びである。

 但し、こちらの条件としては、奴隷商の区分分けと、獣人奴隷に対する改善案を盛り込んだ。

 どちらも国家資格が必要な職業にして、奴隷商人たちには箔を付ける様にする。

 区分としては、犯罪奴隷専用の奴隷商と借金奴隷や獣人奴隷などの非犯罪奴隷商に分ける。

 非犯罪奴隷の獣人に関しては、労働力の状況を見て徐々に解放。

 解放資金は帝国の財源から支払われる形とする。

 後は法整備などに関して。

 その他、細かい打ち合わせが必要なので、解放していくにしても数年後からという約束で合意した。

 アシスは不満そうであったが、これが最善手なので納得してもらう。

 嫌なら、手を貸さないと言ったら、渋々納得した。


「問題は、反発する者達だな」


「併呑する土地にも、今回の戦争で日和見していた大物貴族がおるしな。軍を動かすのが大変だ」


「流石に、これは国の仕事だからなぁ」


 陛下、皇帝、皇王の三人が、こちらを見ながら愚痴っている。

 いや。そんな目で見られても……いや、待てよ? 日和見って事は、決して敵対するわけではないし、仮に敵対したとしても、戦力は集中している状態ではあるし、スピード勝負をするならば悪くない手か?

 一応、低処理リエルでシュミレートしてみるが、そんなに悪くない結果が出た。

 一番最悪な状態でも、そこまで悪い結果でもないので、ニヤリと笑って、三王の思惑に乗ることにする。


「あれは……なんか企んでる顔だね。悪代官にしか見えないよ、ラフィ」


「失礼な」


 という訳で、元ダグレスト貴族に向けて、ダグレスト王家の滅亡と敗戦、そして、新国家の樹立を宣言した。

 まぁ、案の定、一部の大物貴族は待っていましたとばかりに挙兵したが、直ぐに鎮圧されたけどな。

 捕虜になっている元ダグレスト貴族家と挙兵した貴族家は、仲良く犯罪奴隷に落とされましたとさ。

 まぁ、罪を犯したのかは甚だ疑問ではあるが、後の禍根を断つ為って言われると、反論できないのが辛かったよ。

 命があるだけ儲けものだしな。

 普通は死刑だし。

 こうして、俺は貴族から王族? へとなったのだった。

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