第223話 教皇からの相談事と密談

 王城に呼び出され、会議を終えて直ぐに屋敷に戻ると……何故かヴァルケノズさんが来ていた。

 時刻は夕刻を過ぎる頃だ。

 もしかして、ずっと待っていたのだろうか?

 いや、それ以前にどうやって――。


「はろ~」


「なるほど……ヤナが依頼を受けた訳か」


「そういうことです。少し良いですか?」


「良いも何も無いでしょうに……」


 因みに、本当にさっき来たばかりらしい。

 良く考えてみれば、玄関先で出会ってるのだから直ぐに分かる事だろうに。

 会議中は自分に余裕があると思っていたが、意外と無かったらしい。

 気付かせてもらえたヴァルケノズさんには、ちょっと感謝だな。

 なんて考えながら、応接室に向かい話を聞く。


「ランシェス王、皇王、皇帝、傭兵王から連絡を頂きました」


「動きが速いですね」


「ダグレストの動きが異常ですしね。それに……」


「こっちは内乱ですしね」


「帝国とランシェスは、頭が痛いでしょうね」


 ヴァルケノズさんの言葉に対し、肩を竦める。

 貴族派の動きに関して読んではいるが、実際は後手に回ってるのが現状だ。

 帝国もそうであったし、内乱は後手になるから起こるんだろうな――とか思ってたりする。

 ダグレストに関しては……同盟理念のせいか。

 どうしたって、後手になってしまうからな。

 ヴァルケノズさんも同じ考えらしく、正確に、こちらの考えを読み取って頷いていた。


「グラフィエル君の考えは、理解してるつもりですけどね。ですが、今後はどうします?」


「それを聞くために、わざわざ?」


「も、ですかね。本題は別ですよ」


 珍しく、腹の探り合いになってしまう。

 別件はあると言うが、何か据えかねているのだろうか?

 まぁでも、考えは変わらんけど。


「まぁ、同盟理念は変えるつもりは無いですよ。そもそも、戦争なんて非効率で生産性の無い行動、やるだけ無意味ですよ」


「言いたい事はわかりますとも。それでも、人の欲は――ね」


「それには同意します。だからこそ、満たせば良いんですよ」


「何か良案があるので?」


「今は秘密ですかね」


 色々と案はあるが、各国が乗って来るかは微妙だったりする。

 なので、陛下にお伺いを立てながら決めるつもりだ。

 多少は、貴族の欲を満たせると思っているからな。


「秘密ですか。楽しみにしましょう。それで、今後はどう動くので?」


「同盟盟主として動かざるを得ないですね。皇国と帝国からも、戦力の提供を求められたので」


「応じるので?」


「皇国はともかく、帝国は応じるしかないでしょう。内乱から約1年。国力も戦力も、回復しきったとは言えないでしょうから」


 しかし、本当に珍しいな。

 ヴァルケノズさんが、こうも政治的な話を秘密裏に対談でするのは。

 狙いは何だろう?


「傭兵国も、賠償金に対する回復にはなるでしょうし、雇用は願ったり叶ったりでしょう。となると、竜王国ですが――」


「まだ詳しくは話してませんから、どう転ぶかは分かりませんね。ただあの国、恩義には報いる国らしいので……」


「有名な話ですね。受けた恩は3倍にして返せ――が、国是でしたか?」


「正確には、恩を仇で返すな――ですね。後、腐竜事件はかなり深刻な問題だったみたいで……」


「傭兵国の一部暴走もありましたからね。ああ、だからですか」


「ええ。あの国の貴族は、愛国心が強いですから。内乱とは無縁でしょう。だからこそ、国を救った俺に対して、不義理はしないんですよね」


 本当、重たい彼女並みに良くしてくれるのだ……竜王国の貴族達は。

 因みに、愛国心故に悪政には断固として戦ったりもする。

 竜王国で内乱が起こった場合、間違いなく革命戦争になるだろう。

 因みに、同盟理念には――内政干渉になる行為は禁止とも明記してある。

 判断基準は、善政による内乱に関しては、同盟派兵が可能。

 悪政による内乱に関しては、革命戦争として内政干渉になると判断される。

 善政と悪政の判断基準についてだが、まぁこの辺りは、頂点達にとっては直ぐに分かるらしい。

 正確には、分かりやすい問題――だそう。

 まぁ、俺も一つだけ分かるかな? 民が普通に過ごせなくなったら悪政だろう。

 流民や難民が増えたら、高確率で悪政だろうし。

 因みに、革命自体は否定しない俺なので、起こらない事を祈るばかりである。

 起こったら? その時に考えます!

 まぁそんな理由で、竜王国は話をしたら、なにかしら協力を申し出て来ると踏んでいる。


「グラフィエル君が話を通した時点で、協力は申し出るとして……何を頼むんです?」


「兵站でしょう」


 今のランシェスは、陸路の輸送で3分の1を封じられている。

 正確には8分の1だが、商人がわざわざ危険の増す輸送路を使う訳がない。

 南西に反逆者共が軍――軍と言えるのかは不明――を展開してるなら、安全性を増すために、南と西の輸送路からは一時的に手を引くだろう。

 そして、北は帝国からの買い付けもあるから、目減りする可能性がある。

 目減り量を算出すると、約半分が使えない。

 結果、東寄りからの調達が主流になるだろう。


「今回は流石に、帝国も飛空船を軍で使用するとの事です。教えなくても良いのに、不義理だからと伝えてくれました」


「容認したんですか?」


「今回は仕方ないでしょう。私怨込みの嫌がらせも兼ねてですかね」


「あれですか。だから容認したと。ダグレストも馬鹿な事をしましたねぇ」


「無くても容認してますけどね」


「何故です?」


 ヴァルケノズさんが不思議そうにしていたので、陛下に話した事と同じ内容を話す。

 正確には、気付いていない落とし穴を。

 それを聞いた後、何とも間抜けな顔をしていた。

 ただ、容認に関しては納得して貰えたようだ。


「なるほど。あくまでも、運ぶと言う内容しか容認してないわけですか」


「ええ。ただ、運ぶのが戦力と兵站なだけです。そもそも、武装が無いのですから、空の魔物に対しては無力でしょう?」


「そうですね。例外以外は、領域から出て来ませんし、武装自体が不要ですからね。盲点でした」


「もう一つ付け加えるなら、今回は先に仕掛けられてますから。防衛戦力の運搬は仕方ないでしょう」


 しっかし、本当に話しが見えない。

 時間が無いから、ダラダラ話している時では無いのだが。

 ただ、流石は教皇様。

 こちらの気配に機敏だった。


「顔に出てますよ」


「…………ちっ」


 顔に出てたらしい。

 まぁ、思ったより余裕が無い事に気付かせてくれたのだから、今回はバレても仕方ないのかもしれない。


「それでは、本題に入りましょうか」


「ようやくですか。わざわざ来たくらいですから、重要な案件だと思ってはいます」


「そうですね。割と重要です」


 お互いに視線を動かさず、若干、睨み合うような感じになった――ところで、ドアがノックされる。


「誰だ?」


「ミリアです。入っても良いでしょうか?」


 入室の許可を出すと、まずは客人に一礼。

 その後、足早に俺の隣に座る。


「ヴァルケノズさん側じゃなくて良いのか?」


「私は正妻候補ですよ。ラフィ様のクロノアス家を第一に考えませんと」


「ええ。それで良いです」


 ヴァルケノズさんも、分かってますよ――的な顔で、ミリアの言葉を肯定した。

 何だろう、この、二人で分かってますよ感は……。

 思わず嫉妬してしまいそうに――。


「嫉妬しなくても大丈夫ですよ。私には、ラフィ様しか見えてませんから」


「そうですね。輿入れの時は、時々、惚気話を聞かされましたし……。嫉妬するだけ時間の無駄ですよ」


「君らね……。はぁ……もういいや」


 多分、神子と教皇の、政治的に分かってますよ感なのだろう。

 そう思う事にしよう……精神衛生的に。


「それで? ミリアは何で来たんだ?」


「政治的なお話ですから来ました。神聖国なら私でしょう?」


「まぁ、確かに……」


「多分、私の国が一番厄介なはずですから」


「厄介?」


 どういう事だ? と聞こうとしたところで、ヴァルケノズさんが話し始める。

 どうやら、ミリアの言った事が本題らしい。


「はっきり言いましょう。今回の同盟要請ですが、意見が真っ二つに割れています」


「恐らくですが、反対しているのは貴族の、それも役職の無い貴族家でしょう」


「……俺への当てつけ?」


 何となく思った事を言ってみるが、それは理由の一つにしか過ぎないらしい。

 もしかして、神聖国もかなり不穏な状態?


「内乱は無いですよ。私兵はともかくとして、傭兵を雇えませんから」


「そうですな。傭兵国の王が要請するのですから、支払いは確実でしょう。もし、傭兵を雇うにしても、全部終わってからしか雇えません」


「だとすると……今後を踏まえて、強硬策を取りたくない?」


 問題を一つずつ洗い出し、一つずつ潰していく方向にしたのだが、先の質問に対する答えは、渋い表情だった。

 当たらずとも遠からずって所かな?


「ラフィ君も人が悪いですね。まぁ、取れなくはないんですよ……。後始末に力を貸して貰えるならって条件は付きますけど」


「教皇様。そんなに、状況は悪いのですか?」


「……ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、口調を崩します。愚痴を聞いて下さい」


 まぁ、愚痴くらいなら……なんて思って了承したのだが、次に出た言葉に、本当にヴァルケノズさんなのか!? って思ってしまう様な言葉使いだった。


「あのクソどもっ! 毎度毎度いらん邪魔ばかりしやがって! 無能のくせに、無能のくせにっ! ある意味、帝国とランシェスが羨ましいわっ!」


「きょ、教皇様?」


「ヴァルケノズさん、不満、溜め込んでたんだなぁ……」


 その後も、聖騎士隊に対する不満に、枢機卿の愚痴。

 そして、役職無しの、過去の栄光に縋りつく無能貴族への罵詈雑言に戻り、ぜぇはぁぜぁはぁ息を切らして終了。


「失礼しました。大分スッキリしましたよ」


「教皇様、おいたわしや……」


「俺にも不満ありそうで怖いんだが?」


「え? 無いと思っているのですか?」


 はっきりと、不満あるに決まってんだるぉ? と言われてしまった。

 これは言われても仕方ないか。

 色々やらかしてるからなぁ……特に、シル押し付け事件とか。


「まぁ、我慢できなくなったら言います」


「言われたくねぇなぁ……」


「ラフィ様。その時は、私も付き合いますから」


 ミリアの優しさが痛い。

 やらかした本人が苦情に耐えられないからって、奥さんを巻き込むなんて……。

 うん……苦情は、人知れず聞く事にしよう。


「さて、本題に戻りますが、今の愚痴が現状と見て貰って構いません」


「嫌な確認の仕方なんだが……」


「ですが、間違ってはいないと思います。若干暴走気味の聖騎士と枢機卿VS役無し貴族ですか」


「それでも前者は良いんですよ。賛成ですので。問題は後者です」


 役無し貴族と言うが、領地持ちも半数は居たりする。

 問題はその領地持ちが反対している事らしい。


「法衣はどうにでもなるんですよ。問題は、領地運営している者達です」


「最悪の想定は?」


「職務放棄でしょうね。ですが、それは諸刃の剣です」


「まぁ、そうだよなぁ。きちんと領地を運営しているから領主で貴族なわけだし」


「ですが、今されると面倒です」


「後釜は?」


「何代も納めてきた貴族家ですよ? 今まで問題も無かったわけですし、いきなり後釜を据えても……」


「領民からの反発は必須ですな。他国のゴタゴタに巻き込まれるわけですから、神聖騎士への敬意も失われる可能性が高いですし」


 強硬策的な解決を講じれば、別の問題が浮上して更に問題が発生しかねない。

 なんという負の連鎖。

 これは面倒すぎる。

 では、解決策はあるのか? って話になる訳だが、あるにはある。

 でも、やりたくない。

 だって、柵が増えるの確定なんだよ。

 だが、やらないと厳しい……のだが……いや、まてよ?


「ヴァルケノズさん、一つ確認」


「何ですか?」


「利益供与があれば、領主は黙ります?」


「…………黙らせることは出来ます。ですが、利益供与は何を?」


 これは渡りに船かもしれない。

 ただ、ヤナ達に加え、一部の者達には地獄を見て貰う事が確定してしまうが。


(いや、今更か。神喰は戦争終結まで、休み無しだな)


 そこまで考えて、ヴァルケノズさんに利益供与の話をしていく。

 どうせ、最速最短で、出来る限り多くかき集めなきゃならなかった話だ。

 この際だし、上手く使おう。


「領主ですが、大半は農地ですか?」


「農業は全ての領主が営んでいるよ。でも、それが……って、まさかっ!?」


「ええ。うちで買い上げます。ただ、食糧難になっても困るので、余剰食糧のみ買います」


 どうせ余ってる食糧で金にならんのだから、この際、金に換えてしまえば良い――と提案する。

 こっちは兵站の準備が早く終わって万々歳。

 相手は売れ残りが全て金に変わって万々歳。

 WINWINの関係だと思う。

 更に、同盟への貢献って言う餌を出せれば尚良し!


「貴族ですからね。面子は何よりも大切でしょう?」


「悪辣ですね。純粋だったラフィ君が、こんなにも汚れてしまって……」


「一言余計です。で、もう一つ面白い話もありますけど?」


「聞きましょう」


 隣でため息を吐いたミリアだったが、悪巧みには興味津々だった様で、食い気味で話し合いに参加してきた。

 ヴァルケノズさん? めっちゃ食い気味ですともっ!


「まず、黙らせるために買い取るのは必須ですが、買い取り額を変動させます」


「不満が出るでしょう?」


「ですから、安く売った領主には、同盟への貢献として勲章を贈るんですよ。年金は無いけど、新たに作られた勲章だったなら?」


「なるほど。それは確かに欲しいでしょうな。子孫にも良い話が残せますし、箔も付く」


「ですがそれだと、無償提供もあるのでは? それに、反対を黙らせるのは無理だと思うのですが?」


「ミリアの懸念は尤もだろう。だから、勲章の事は伏せる。買い取り額も、ある程度は向こうの言い値にするつもりだ」


「……なるほど。頭の回転が速い領主ならば、何かあると見ますね」


「逆に、目先の利益しか見ない領主は、高く売ってくるはずだ」


「だから変動ですか。変動額はいくらにするつもりで?」


「ヴァルケノズさんの立場もありますからね。適正価格から高低3割にするつもりです」


 二人共、何やら考え込んだが、暫くすると頷いた。

 問題は無いみたいだ。

 後、適正価格より安く売った領主には、同盟からの感状を贈る事にする。

 その中でも、3割安で売ってくれた領主にのみ、勲章を授与する旨も伝える。


「値段は、初めから伝えても良いのですね?」


「そっちの方が良いでしょう。後、税収もあるでしょうから、一先ずは中央が買い上げた方が良いかも?」


「そうですな。それと、次期神子についてですが……」


「それは関与しません。が、早く見つけてください」


「いえ。既に何名か候補がいます。ただ、現神子程ではなくてですね……」


「私を参考にしない方が良いと思うのですが……」


「だよなぁ。ある程度は仕方ないんじゃないの?」


 こちらの言葉に対し、ヴァルケノズさんは首を振った。

 どうやら神子選抜も、相当な面倒事になっているみたいだ。


「【神託】はともかく、他のスキルや魔法がですね……」


「それは……ヴァルケノズさん達の仕事でしょ」


「はっきり言います。どうせ、ラフィ君の結婚式は来年でしょう? 内乱と戦争。終結後から準備しても、年内は厳しいのでは?」


「まぁ、それはそうかもしれんけど」


「ですからね。どうせ聖騎士の派遣が決まっているならば、同道させようかな――と」


 ヴァルケノズさんの言葉に、ミリアの顏が険しくなった。

 神子候補を戦地に赴かせる? ミリアとしては、思う所があるのかも……。


「ラフィ様、勘違いされてます」


「勘違い?」


「はい。私が気になったのは、聖騎士の派遣に関してです」


 どういう事か? と聞いてみると、聖騎士の派兵をどっちに行うかで、状況が変わるらしい。

 改めて言われて、ちょっと考えてみる。

 ……あれ? 地味に内政干渉になりかねない?

 傭兵国は雇用契約してるから、どっちに派兵しても問題無い。

 帝国と皇国は、そもそも余裕が無いから不可能。

 竜王国は今の所、兵站のみ。

 神樹国は、元から軍は無いから関係無し。


「神聖国って、同盟派兵でも立場が微妙なのか」


「はい。宗教国家ですから尚更です」


「ダグレストなら問題無い?」


「問題無いですね。ですが、内乱だと――」


「信徒を守るために――って大義名分はあるけど、逆に内政干渉や侵略になりかねないか」


「同盟要請があっても、少し厳しいです」


 しかし、帝国の時と何が違うのか? ミリアが言うには、王の判断が最重要との事だった。

 当時の帝国は、上が認めていたからこそ、いろんな国が帝国内で戦闘が出来たと言う。

 しかしランシェスは現在、国内で他国の戦力が戦闘する事を認めていない。

 同盟要請は、あくまでもダグレストにだけ行っているのが現状だ。

 戦力は欲しいけど、痛くも無い腹を探られかねないのか。


「後は神聖国の貴族ですね。友好国ですが、奪える物は奪ってしまうと思います」


「面倒な……。解決策――」


 そう言いかけた所で、スマホもどきが鳴った。

 相手は……クッキーさんか。

 何の用だろうか?


『すいません。今ちょっと、立て込んでいて』


『聖騎士に関してでしょぉん? 教皇様からぁ、相談があったわぁん』


「…………」


「そっちの方が、話が早いでしょう?」


 思わずジト目になってしまったが、クッキーさんが絡むなら話は楽だ。

 冒険者登録してしまえば良いのだから。

 しかも、今後も考えて限定的に。

 この手は良く、傭兵国で使われるらしい。


「根回し早過ぎでしょう。まぁ、助かりますけど」


「聖騎士の装備でも、冒険者としてならば、言い訳し放題ですしね」


「ミリアも良い根性してるなぁ。聖騎士の装備に似せただけ――で、押し通すつもりか」


『装備に関しては関知しないからぁ、隙にして良いわよぉ』


『悪いクッキー……毒ッキー?』


『こっちはぁ、きちんと試験して、登録するだけだからぁ』


『マジで毒ッキーじゃん』


『んふふぅ。今回はぁ、誉め言葉と受け取っておくわぁん』


 そう言って電話を切るクッキーさん。

 これ、他にも何かやらかす気じゃね?

 なんでそう思うかって? 毒ッキーって悪口なんよね。

 向こうも分かってるのに、誉め言葉とか言ってたし。

 思い返したら、やらかし確定案件じゃん。


「なんか、どんどん面倒事になって行ってるような……」


「気にしたら負けです」


 そう言って、遠い目になるヴァルケノズさん。

 多分、気にし始めたら沼なんだろうな。

 後は胃が持たないか。


「その内、胃痛が起きそうですね」


「もう何度も起こってますよ。だから悟っただけです。後、他人事に言っていますが、原因の一人なのは忘れないでください」


「藪蛇だったか」


 斯くして、相談と密談は幕を閉じた。

 聖騎士の一部は、我がクランにて引き受けて戦力にする。

 残りは、ランシェス側の援軍としてダグレスト戦に参加。

 貴族達への対応は、先に話した通りに行う……枢機卿達が。

 枢機卿、仕事が増えるらしい。

 愚痴と文句は、ヴァルケノズさんが引き受ける。

 俺、良いとこどりです!


「後で返してください」


 最後にそう言って、ヴァルケノズさんは帰って行った。

 とりあえず、戦力増強と兵站の一部はどうにかなりそうだ。

 後は竜王国と……我が家か。

 父上には……念の為、非常時の行動に関して密にしておこう。


(さて……次は我が家だな)


 こうして、次は少し遅めの立食会へと向かった。

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