第212話 結構、深刻な問題だった

 今日も今日とて、全員が修練に励む中、約束の日が来た。

 そう、ミリア達による嫁会議の日である。

 全員で夕食を取った後、各員がそれぞれしたいようにするのが、我がクロノアス家の家風とも言えるのだが、今日ばかりは正妻――今はまだ候補――主導で行われる、話し合いだったり、情報共有の日である。

 なので、俺はいつも通りに部屋でとある計画を練っていたのだが、何故かナリアが呼びに来た。

 何かあったのだろうか?


「どうしたんだ? 今日の予定は、全て終わったはずだけど」


「ミリア様から、お館様をお呼びするようにと」


「ミリアが? 俺、なんかしたっけ?」


 こちらの質問に答えることなく、ナリアは急かしてきた。

 あれ? 当主って俺だよね?


「ナリアさん?」


「お早く、お願い致します」


「……わかったよ」


 こうして、ミリア達が待つ部屋へと案内され、ナリアが入室の許可を取ってから、中に入る。

 すると、どういう事だろうか?

 婚約者勢ぞろいではない代わりに、何故かブラガスがいる。

 それに加え、姫埼、春宮、蛍、雪代さんの四名。

 非常に面倒な話があるとしか思えないのだが……。


「ナリアさん、ありがとうございます。ラフィ様は、こちらへどうぞ」


「あ、ああ」


 ミリアに促されるまま、席へと座る。

 そしてナリアは、部屋の隅へと移動。

 給仕はナリアが担当するらしい。


(ナリアが給仕? 内向きな話か?)


 そう考えるなら、ブラガスが同席……嫁会議に? 違和感しかねぇよな。


「お館様のお考えもごもっともですが、事は結構面倒な話ですので」


「ブラガス、お前もか」


「そういうお顔をされていましたので」


 顔に出ていたねぇ……。

 言われてしまったら、ちょっと気になってしまう。

 思わず、自分の顏を触って確認していると、蛍が肩を震わせて笑っていた。

 ちょっと失礼じゃないですかね。


「ブラガスさんも、冗談は程々にお願いします」


「失礼いたしました。ですが……」


「ラフィ様の雰囲気は、今に始まった事でもないので」


「おい」


 軽くツッコんでおくも、華麗にスルーされてしまう。

 最近、俺への扱いが酷くないっすかね?

 だが、今日のミリア含め、この場にいる婚約者達の大半は、割りとオコだったようだ。

 何故オコなのか? 思い当たる節が無いんだが?


「なぁ、なんでオコなんだ?」


「本当に、ご自覚が無いのですか?」


「さっぱり。俺、なんかしたっけ?」


 本当に思い当たる節が無い俺に、この場にいる婚約者、正確には、各国との繋がりが一番深い婚約者達が集まっていたのだが、その全員が盛大にため息を吐いた。

 当然、なんで!? って言いたい。

 言えねぇけど……。


「ブラガスさん」


「申し訳ありません。詳細を伝え忘れていました」


「ナリアさんは……」


「私がお伝えするのもどうかと」


「そうですよねぇ。ナリアさんはラフィ様の理解者ではありますけど、メイドですし、言いにくいですよね」


「だから、一体何の話だ?」


 ブラガスはミリア達に謝罪し、ナリアも俺にわざわざ伝えるのはどうかと遠慮してる内容……さっぱりわからん。

 本気で首をかしげている俺に、ブラガスが一から説明してくれた。

 同時に、ミリア達がオコな理由も察しがついたが……。


「お館様は、八木様たち9名を、現在は食客として屋敷に滞在させておりますね?」


「そうだな。何か、問題あるのか? ついでに言っとくと、メナト達も食客だからな」


「……言い方が少々悪かったようです。問題点は食客の部分ではなく、八木様たちの方です」


「? 何が問題なんだ?」


「はぁ……。遠回しな言い方はやめにします。メナト様たちは、各国のお歴々の方々がどうにかなさるでしょうが、八木様たちに関しては、そうでは無いと言う事です」


「まだ遠回し過ぎる。直球で言え。直球で」


「はぁ……」


 直球で言えと伝えたら、ため息で返される。

 婚約者達も同じ反応。

 あれ? これ、相当やらかしてる案件だったりするのか?


「ミリアさん?」


「ラフィ様の抜けてる部分って、可愛いなって思ってましたけど、今回のは流石に……」


「リリィさんや」


「ラフィ、流石に貴族としてダメダメだと思います」


「リーゼさんも?」


「今回は流石にですね……」


 この後も、この場にいる婚約者達からダメ出しを連発される。

 そして、ラナの放った何気ない一言が、俺にトドメを刺した。


「ラフィ様。今回の件ですけど、シアちゃんでも理解してますよ」


「ぐふっ!」


「そう言えば、シアちゃんが私にどうするのかと尋ねてましたね」


「がふっ!」


「あら? リーゼさんもですか? 私もシアちゃんに聞かれました」


「ミナさんもですか。と言う事は、今回のお話、ラフィ様が抜け過ぎと言う事ですか」


「ミリア、流石にギブ。俺の心のライフは0だ」


 俺とミリア達の話に、ブラガスは再度ため息を吐き、話題に上がっている4人は苦笑い中だ。

 とここで、ふと気付いた。

 問題の人物は9人いるのに、何故4人しかいないのだろうと。

 その答えだが、まぁ考えたら直ぐにわかる答えだったな。


「4人だけの理由ですか? この後で色々と話すからですけど?」


 小首を傾げながら答えるミリアに、元々はその予定だった事を思い出し、何処まで抜けてんのかと、軽く自己嫌悪に。

 珍しく落ち込む俺を見たミリア達は、全力で甘やかしてくれたよ。

 素晴らしきかな、近い将来の妻たちよ!


「ラフィ様の落ち込みも無くなったことですし、話を進めましょうか」


 こちらの一喜一憂を察し、本題へと華麗に戻すミリア。

 流石は正妻候補様である。


「それで、この問題の件ですけど」


「そういやそうだった。で? 何が問題なんだ?」


「それはですね、八木様たちの出自に関してです」


 ブラガスが問題を教えてくれたのだが、ちょっと意味が分からない。

 そもそも、この世界に召喚と転生で来ているのだから、出自もへったくれも無いのでは?


「そういう事では無いのです。孤児であっても、最終的な育ちの場所は分かるのですよ?」


「ブラガスさんの言う通りです。それに、ラフィ様の場合は貴族でもありますが、同盟の盟主でもありますから」


「何処の馬ともわからん奴は駄目だと?」


 ちょっと不機嫌に答えてみるが、そうではないらしい。


「他貴族や他国からのやっかみや嫉妬がですね……」


「あ、そういう」


「ええ。男性で、仕官ならば、まだ手はあるのですが……」


 問題は女性陣らしい。

 それでもまだ、箒と澄沢はやりようがあるそうで、問題は今いる4人。

 ぶっちゃけると、俺の側室に入る可能性のある人物たちらしい。

 つうか、ミリア曰く、なし崩し的にほぼ入るだろうとの事。

 ちょっとだけ殺気が漏れて言われたので、ブルったのは内緒です。

 だって、ミリアのマジギレって、超怖ぇんだもん。

 とりあえず、咳払いをして話を進める。


「それで? 対策はあるんだろう?」


「その対策の為に、お館様に根回しをお願いしていたはずなのですが?」


「…………あ」


 この場にいる全員の目が、忘れてたな? と訴えかけてくる。

 そうです、忘れてました。

 なんか文句あんのかこの野郎!

 だってさ、毎日毎日トラーシャの相手お守りをしながら書類を片付けて、その合間に修練に付き合ってんだぞ。

 しかもさ、トラーシャの相手って軽く意識が飛ぶ時があるんだよ。

 昔は確実に飛ばされてたんだからさ、凄い進歩だと思わねぇか!?

 そんな状態で、書類で回されてきてない情報を覚えてろってのが無理難題なんだよ!

 と言うのを、訴える様に説明した。

 流石に、ミリア達は同情してくれた。

 但し、ブラガスだけは違っていたのは言う間でもない。


「お館様のご苦労はわかります。しかしですね、自分が何も意味のない事を言うと思いますか? その辺りは考慮して頂きませんと。お館様の立ち位置を悪くせず、評判も落とさずにですね――」


「だぁーーー!! もう分かったから! ブラガスの心遣いも分かったから! 本題の続き!」


 ねちねちと、めっちゃ早口で口撃してくるブラガスに、流石に耐えきれなくなってしまった。

 いやさ、ブラガスは良くやってると思うよ。

 でもさ、俺に対する優しさをもう少しだけさ。


「お館様は優しくすると、直ぐにサボりますので」


「そこは休憩と言え!」


「休憩? それは何ですか? この世の中に食事以外の――いえ、仕事が終わるまで休みなんて無いでしょう」


「おーーい! 誰かブラガスの頭を治療してやってくれ! おかしくなってやがる」


「おかしいのはお館様かと」


「お前だよ!」


 ダークネス企業の超社畜がそこにはいた。

 いや、きちんと休みは与えてるし、就業時間も決めてるから、社畜になる要素は無い筈なんだが?

 しかし、ここでナリアから一言。


「ブラガス様は就業時間後も、自室で仕事をされていましたので。食事も、仕事をしながら食べているところしか見ておりません」


 ブラガス、ガチの超社畜戦士が判明した瞬間だった。

 更に追加で、ナリアからとんでも情報が飛び出してくる。


「お休みの日も、ほとんど自室から出て来られず。食事をお運びした時ですが、書類とにらめっこを――」


「ブラガス! 明日から1週間休みをやるから、マジで休め! 仕事すんな! 書類とにらめっこしてたら、屋敷から叩き出してでも休みを取らせるからな!」


「仕事が追い付きませんが?」


「こっちでどうにかするから、マジで休んでくれ! 根回しも明日中に全て終わらせるから!」


 とりあえず、ブラガス超社畜戦士問題はこれで強制終了だ。

 明日から1週間、トラーシャの相手は……神喰に任せよう。

 ここ数日は遊んでいる様だし、問題無いだろう。

 ブラガスの爪の垢でも飲ませて社畜にしてやろうか?


「まぁ、お休みは戴きますが、もう少し後でお願いします。少なくとも、この問題が解決するまでは」


「はぁ。わかった。で? 根回しは何処にすれば良い?」


「お館様と深い親交がある方々にはお願いしたいのですが……」


 そう言うも、ブラガスは言葉を濁らせた。

 え? この話って、そこまで面倒な話なのか!?


「ラフィ様も、事の重大さが分かって頂けて何よりです」


「あー、ミリア達がオコな理由が分かった。超絶面倒な話なのに、何も手を打っていなかったからオコだったんだな?」


「それもありますが、ラフィ様にとって心友なのですよね? なのに、何も動かれていなかったので」


「余計な心配をさせてしまった。すまない」


「いえ。ですが、どうされますか?」


 ミリアの言葉に少し考え、1つずつ問題点を洗って行く。

 まず第一に、9人の出自に関して。

 次に、男性と女性では対応が変わる点。

 最後に、4人はさらに複雑だと言う点。

 尚、この中で一番楽なのは八木だそう。


「手間も面倒さもありますが、八木様が一番、辻褄合わせがしやすいので」


「時間軸が合わないだろうに」


「どうにでもなりますよ。ある程度の辻褄があっていれば、余程の事が無い限り騒ぎませんから。精々騒ぐのは、貴族派くらいでしょう」


「残りの4人は?」


「こちらは八木様よりも面倒ですが、やりやすさもありますので」


「例えば?」


 例を聞くと、まぁドロドロした貴族利権の話が、わんさか出てくる出てくる。

 ただ、下手な貴族に話しは持って行けないとの事。

 ならば平民は? となるが、こちらの方が返って面倒らしい。


「そもそも平民ですが、普通の家庭なら生活に苦しくも無く、かといって余裕があるわけではありません。となると――」


「商人……それも、大店か」


「はい。ですが、平民の商人です。信用度はピンキリですが、貴族よりも利権でドロドロですね」


「うへぇ。それは勘弁」


 ブラガスの話を聞いて行く中、ミリア達は一言も発しない。

 助言を得たい所ではあるのだが、家宰であるブラガスと当主の俺が話し合っている――と言うのが、彼女達からの助言を聞けない、話せないと言う一因でもあるのだけどな。

 現代社会なら、女性軽視だ! とか言われそうだが、この世界は男尊女卑である。

 大和撫子なら一歩引いて位だろうが、貴族社会で男尊女卑だと三歩引いて位になる。

 本当に、面倒な話だ。

 とまぁ、心の中で愚痴っておくとして、問題は女性4人か。


「それで? 姫埼、春宮、蛍、雪代さんに関しては、更に面倒って話だよな?」


「はい。この4名に関しては、奥方様のお力も必須になるかもしれません」


「そこまで面倒か。全員の対策は?」


 ここでようやく、解決策の話へ。

 八木に関しては、教皇ヴァルケノズさんの養子で行くらしい。

 全部それでも良いのでは? とも思うが、そうもいかないらしい。


「パワーバランスが崩れてしまいます。お館様はランシェスの貴族ですから」


「……何人迄なら可能なんだ?」


「八木様で定員でしょう。残る8人の内、常磐様、芹澤様、箒様、澄沢様に関しては、竜王国、帝国、皇国で受け持てるでしょう」


「神樹国と傭兵国を外した理由は?」


「神樹国で人族を養子と言うのには無理があります。傭兵国に関しましては、条件次第と言うのがありますので」


「その条件と言うのは?」


 傭兵国に関する条件だが、実はこれも面倒な話。

 傭兵王は未婚なので、基本、異性の養子は取りづらい。

 但し、姫埼だけはその条件を覆せる可能性があるそうだ。


「本当は同性が良いのですが、姫埼様は剣士です。傭兵国と言う特殊な国ならば、実力ゆえの異性養子が出来る可能性もあります。傭兵王が快諾すればの話ですが、期待薄でしょう」


「……土地の広大さから見て、帝国に2人。後は1人ずつか」


「はい。これで、パワーバランスは保てます。養子の仕官なので、やっかみと嫉妬はありますが、冒険者としてそれなりに名を売って貰えれば、知己としてや有名だからと押し通せます」


「ふむ……。で、残る問題が……」


「4名です」


 思わず頭を搔いてしまう。

 5人に関しては、根回しすればどうにかはなる。

 残る4人は、根回しをしてもどうにかなるかわからないって事か。


「策は?」


「こればかりは……。奥向きの事もありますので」


 ブラガスは言いずらそうにして、ミリア達を見てから、姫埼たちの方を見る。

 こっから先は、ミリア達の領分にも抵触するから、おいそれと口に出来ないわけか。

 そこまで理解した俺は、ミリア達の方へ向き直る。

 そこでようやく、ミリア達が口を開いた。


「ラフィ様は、どうなさるおつもりで?」


「正直に言うとな、わからん」


「4人は娶らないおつもりで?」


 ミリアの言葉に反応してか、4人が何かを言いかける。

 が、ナリアが制止した模様。

 どうやら、この状況はミリア達にとって想定内らしい。

 前もって、ナリアに頼んでいたのだろうと推測する。

 そうなると、俺の答え1つで全て決まる訳か。


「……ブラガス、お前の意見を聞きたい」


「よろしいのですか?」


「あくまで参考にするだけだ」


 そう言うと、ブラガスは一息吐いてから、現状打破の為の最善策を口にした。


「自分としましては、残る4名との婚姻は控えて頂きたいですな。妾や愛人ならば許容できますが、認知前提の側室は悪手です」


「弱点を作る事になるからか?」


「お館様は一代で今の地位をお築きになられました。当然ですが、半分は敵と認識してよろしいかと」


「味方は?」


「王に近しい貴族と、婚約者に関する貴族でしょうか。もう少し、仕官などで利益供与できれば味方も増えましょうが、如何せんお館様は選り好みされますので」


「耳に痛いな」


 今の話を聞いた4人は、悲しそうな顔をする。

 まぁ、自分達が俺にとって害でしかないと言われたら当然か。

 とまぁ、参考意見を聞いていたわけだが、ブラガスは続けてとんでもない事を言い出す。

 いや、ある意味間違ってないが、言い方を考えろって話なんだがな。


「とは言いますが、どうせお館様の事です。お好きにされるのでしょう? 敵対貴族は多いですが、冒険者の方では味方も多いです。どうにでもしてみせます」


「おい。言い方」


「敢えて、家臣ではなく、先輩冒険者として言わせて頂きます。口調に関しては、お許し願えると」


「許可する」


 ナリアが何か言おうとしたが、その前に許可を出したので、今回は聞き流すらしい。

 ただ、後でブラガスもナリアのお小言は頂く覚悟なのだろう。

 なら、その覚悟――ナリアのお小言は地味に効く――を組むのも、上に立つ者の役目だろう。

 そんなブラガスは、またも一息吐いてから、昔の口調で話し始めた。


「貴族がなんぼのもんだってんだ。惚れた女が第一だろうが! うだうだ悩む前に、行動あるのみ! ……ごほん。失礼しました」


「先に言っとく。惚れたかどうかはわからんだろうに」


「お館様は、4人の女性に好意を寄せられており、満更でもないのでしょう? ならば後は、お館様の気持ちと動きを無駄にしない様に、家臣一同動くだけですので」


「さっきの前置きの意味ねぇ」


 とりあえずツッコんでおくが、ブラガスはどっちでも良いらしい。

 俺と婚約者達と4人次第と言い切った。

 では、ミリア達はどうなのだろうか?


「春宮さんは少々あざといですが、別に嫌いではありませんよ。但し、正妻の座を譲る気はありません」


「私は二番目になっちゃってるけど、譲る気はないです」


「同じく、今を譲る気はありません。下剋上もあり得ますしね」


「あら、リーゼさん。面白い事を言いますね」


「うふふ。ミリアさんも頑張って下さいね」


 剣呑な空気を見せるが、絶対にわざとやってるな? これ。

 ミリアが正妻なのは、誰もが認めている事だ。

 わざわざ、ミリアが正妻ですよ――とアピールする必要が……あ、何となくわかった。


「ミリア達が知らない俺を知ってる蛍と雪代さんに、嫉妬してる訳か」


「ラフィ様、お口、チャックです」


「すまん。だけどな、一つ言わせてくれ」


「何ですか?」


「昔の俺を蛍と雪代さんは知ってるかもしれないけどな、今の俺を知ってるのはミリア達だぞ。まぁ、付き合いはリリィやティア、それにナユの方が長いが、それでも、二人の知らない俺を知ってるんだから、そんなに嫉妬すんな」


「嬉しいですけど、それでもしますよ」


「乙女心は複雑だなぁ……」


「ふふ。複雑なんです」


「ねぇ。私達の事を放置して、桃色空間作んないでくれない?」


「「あ……」」


「この、似た者同士め!」


 ちょっとラブラブはあったが、本筋は決まった。

 今後、どうなるかはわからないけど、選択肢が多い方を選ぶべきだ。

 決意をして、ブラガスの方へと視線を送る。

 それを受け取ったブラガスは、一礼してから部屋を後にした。

 尚、4人はポカンとしている。

 今の合図で気付けないのは、まだまだ精進が足りんなぁ。

 勿論、ミリア達は気付いている。

 だからと言う訳ではないが、ミリアが代表して伝えるらしい。

 黙って見守る事にしよう。


「皆さんは、お気づきになられませんでしたか?」


「私は、なんとなく」


「多分?」


「何の話?」


「私も分からないわ」


「ラフィ様は、この先での選択肢が増える方向で進める様にと、ブラガスさんに話を通したんですよ」


「「やっぱり」」


「「そうなの?」」


 反応が全く違うのは、ちょっと面白いな。

 ただ、これ以上は不謹慎と言われかねないので、思考をニュートラルに戻して話を聞いて行く。


「今後、ラフィ様の気持ちを振り向かせられるかは、貴方方次第です。貴方方がいくら好意を寄せていたとしても、ラフィ様が乗り気でないのなら、私達は全力で拒否します」


 ミリアの凄味に、唾を飲み込む4人。

 俺もちょっと飲まれそうだわ。


「ですが、アピールを邪魔するつもりはありません。相談にも乗ります。但し、ラフィ様は貴族ですので、貴族の慣習や法の中でのアピールでして下さい。もし万が一、ラフィ様の名に傷がつくようなことがあれば……」


「「「「あれば?」」」」


 その後の言葉を、ミリアは口にせず、ただニッコリと微笑み返した。

 ミリアさん、マジ怖いっすわ。

 4人もガクブルしてらしゃる。

 ただ、一つ気になると言うか、分からない事がある。

 4人に関する出自や立ち位置をどうするか、全くわかって無いんだが?


「なぁ、結局、4人ってどうするんだ?」


「ラフィ様は、根回しをお願いしますね」


「後は私達の出番ですから」


「ラナに任せて下さい」


「ふふ。久しぶりに骨のあるお仕事です」


「リーゼさん、お仕事って言うのはちょっと」


「ミナの言う通り。傭兵王は任せて欲しい」


「頼もしいけどさ……君ら、ちょっと楽しんでないか?」


 斯くして、不敵に嗤う婚約者達が動き出した。

 この後、4人に関してどの様な形で収まるのか?

 正に、神のみぞ知る――と言える。












 尚、ブラガスの休みは半月ほど延期になったとだけ言っておく。

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