幕間 輿入れ準備・リュール編

 ラフィと別れて直ぐに、私は輿入れの準備をし始めた。

 私の家は歴史ある大所帯の傭兵団だけど、平民。

 だから輿入れの準備も直ぐに終わったし、ラフィが迎えに来るまで暇になってしまった。

 輿入れの準備が直ぐに終わったのは、偏に団員達の協力が大きかった。


『お嬢! こいつは何処に運ぶんで?』


『お嬢! 商人が来やしたぜ』


『姫ちゃん! お姉さんと買い物に行きましょうね』


 男女問わず、団員達は私の輿入れに積極的だった。

 前はラフィに食って掛かった団員も積極的。

 少し気になったので理由を聞いてみた。


『いやぁ、お嬢の旦那はマジで強いっすからねぇ。俺達も納得して送り出してるんすよ』


『お嬢は大食らいだけど、ラフィの旦那なら食いッぱぐれは無いでしょ!』


『姫ちゃんは優良物件を捕まえたわね。しっかり捕まえとかなきゃだめよ! あ、このスケスケ下着、持って行きなさい!』


 こんな風に、一人を除いてラフィに好意的だった。

 ただ、私が大食らいって言った団員はシメといたけど。

 そして、未だにラフィを認めない人物なんだけど、我が家のじじいだったりする。


『わしゃ認めんぞ! 輿入れ何ぞ邪魔して……あ! こりゃ! やめんか!!』


『先代、いい加減認めましょうや』


『孫が可愛いのはわかりやすが、しつこいと嫌われますぜ』


『先代、邪魔だよ! あ、こら! 先代が邪魔を! 誰か羽交い絞めにして上に連れてっておくれ!』


『は、はなせーーー!! わしはみとめんぞーーー!!』


 こんな感じだったけど、団員達が一致団結してじじいを排除してくれて本当に助かった。

 多分、私の私物に何もしないとは思うけど、今のじじいは信用できないので、団員達が私の代わりに荷物を見張ってくれたりもする。

 一応、お父さんが荷物の警護料を払ってるらしいけど。

 そして、じじいだけど……相変わらずウザい。

 今日もまた、開口一番、ラフィの悪口。


「あの小僧は駄目じゃ!」


「じじい、だまれ」


「ぐはっ! だが、負けん……負けんぞぉぉぉぉ!!」


「じじい、うるさい」


「ごはっ!」


「リュール、おじいちゃんにもう少し優しくして上げたら?」


「ラフィの事を悪く言うじじいは、竜に踏まれて地面に埋まれば良いと思う」


「ひでぶっ!!」


「まぁ、リュールの気持ちもわからんでもないねぇ」


「お義母さんまで……」


 おばあちゃんは私の味方らしい。

 でも、何かあったんだろうか?


「この孫好きラブジジイは、私と二人きりでもこんな感じだからねぇ」


「お義父さん……」


 お母さんもおばあちゃんも呆れてる。

 そして、ジト目でじじいを見ている。

 じじいは……うん、顔を逸らして悪くないと思ってる。

 やっぱり一度、シメないといけないかもしれない。

 何時、何処で、どんな風にシメようかと考えていると、お父さんが帰って来た。

 そして、今の現状を見たお父さんは、瞬時に今の状況を理解したみたい。


「親父……いい加減にしないと、俺も本気で怒るからな」


 お父さんが自分を俺って言った。

 これは、相当怒っている時にしか出ないやつだ。

 じじいはお父さんにシメられるかもしれない。

 お父さんが動くなら、私は様子を見る事にした方が良さげ。


「なんじゃい、なんじゃい! 儂の味方はおらんのか!」


「いるわけない。じじいは黙れ」


「……」


 私の一言に、じじいは撃沈した。

 何も言い返せないのか、諦めたのかはわからないけど、無言のまま部屋を後にした。


「リュール、もう少し言い方をだな……」


「最近のじじいはウザい。あれくらいでちょうど良い」


「娘の成長を喜ぶべきなのだろうが……言葉遣いに関して、お父さんは複雑だよ」


 お父さんは苦笑いをしながら、椅子に座って私を呼んだ。

 帰って来た時に、依頼書を持っていたから、多分その話をするのかな?

 私はお父さんと向かい合う形で椅子に座って話を聞く。


「とりあえず、親父の事は後回しにして、厄介事の話だな」


「かなりの面倒事?」


「面倒と言えば面倒だし、違うと言えば違うんだよなぁ」


 お父さんは要領を得ない話し方をした。

 つまり、捕え方によっては相当な面倒事になるんだろうな。

 ただ私は、遠回しな言い方は好きじゃないから、直球で聞く事にしたんだけど、聞いた事を後悔した。


「一つ目なんだが、リュールに爵位の話が出ていてな。ジャバの奴は何を考えているんだか……」


「本気? 事例はあるけど、反感も多いって聞いた」


 私とお父さんは揃って頭を抱えた。

 そもそもの話、傭兵国と他国とでは爵位と貴族に関して大きく違う点がある。

 それが女性当主なのだが、傭兵国と他国の違いは本物か代理かの違い。


 他国の女性当主は、条件付きで代理権限を行使する事が出来るのだけど、その条件は結婚して子を成す事。

 結婚した後は、婿入りした旦那に当主を任せるか、子に任せるかは自由だけど、婿入りした旦那の実家が介入してくるのを防ぐ為に、ほぼ生まれて来た子供に継がせる。


 対して傭兵国の女性当主には、他国のような条件は無い。

 真の女性当主となるので、柵はあっても鎖は無い。

 帝国も実力主義の国ではあるけど、女性が爵位を得て貴族になる事はない国。


 故に、女性で立身出世するのなら傭兵国が一番なのだけど、他国との兼ね合いがあって、中々貴族に取り立てられないのが現状。

 力があって、交渉が得意で、他国の貴族と渡り合える女性だけが傭兵国で貴族になれる。


 尚、傭兵国の女性当主の割合は1割程度だけど、他国から見れば多いと思う。

 そんな1割に私が入る?正直、面倒だから要らない。


「断って」


「私がか? 自分で要らないと言えば良いだろう」


「ジャバを消しても良いなら」


 私の言葉に、お父さんはため息を吐いた。

 私、何か変なこと言った?

 そんな私を見て、お父さんは苦笑した。


「わかった。だが、リュールにも着いてきてもらうからな」


「どうして?」


「理由は知りたいだろう?」


「うん」


「なら、一緒に行くのが手っ取り早い」


「わかった」


 私は、お父さんの言葉に了承して、一緒に向かう事になった。

 そして、次の問題の話に移るんだけど、これも大した事は無かった。


「本来は通常依頼で貼り出しをして、受ける話なんだが……何故かギルマスが、お前を指名していてなぁ……」


「どんな依頼?」


「新米冒険者が受ける依頼で、薬草採取の場所があるんだが、行方不明冒険者が多くてな。既に20人以上の新米冒険者が行方不明らしい」


「調査と原因の排除?」


「そうなんだが……行方不明冒険者はソロか2~3名位のパーティーが多くてな」


 お父さんの話し方だけど、どうにも歯切れが悪い。

 多分、ある程度は原因に予想がついているんだと思う。

 それでいて、歯切れが悪いと言う事は、多分そう言う事なんだと思う。


「人攫い?」


「多分な。問題は、新米とは言え、冒険者が簡単に攫われていると言う点だ」


「手練れがいる?」


「まず、間違いないだろう。だから、悩んでる」


「問題無い」


 私はこう見えても、Sランク冒険者で選抜大会優勝者。

 大抵の事はどうにかできる。

 ラフィ?あれは無理。

 実力が違い過ぎるから。

 そんな事を考えていると、お父さんがニヤリと笑っていた。


「今、彼の事を考えていただろう」


「うん。なんでわかったの?」


「親だからな。それに、リュールは意外と顔に出てるぞ」


 お父さんの言葉に、私はそんなに顔に出やすいのかと思ってしまう。

 そう言えば、団員達に言われたこともあったなと思い出す。

 でも、それ以外の人達は『何を考えてるのか分からん』って言われる。

 後、ラフィも『リュールって顔に出やすいよな』って言ってたっけ。

 団員達は付き合いが長いから分かるんだろうけど、なんでラフィには分かるんだろう?


「そりゃあ、婚約者だからだろう?」


「人の考えを読まないで」


 デリカシーの無いお父さんに、一言苦言しておく。

 お父さんは笑いながら誤魔化したけど、後でお母さんに伝えて、しっかりと叱って貰おう。

 それはそれとして、依頼の件だけど受ける事にした。

 直感だけど、余裕な気がするから。


「わかった。ギルマスには話しておく」


「よろしく」


「よろしくって……もう少し言い方をだなぁ」


「これが私」


 お父さんは、再びため息を吐いた。

 でも、これが私なのだから仕方ない。

 そして、最後の厄介事だけど、あのじじいだ。


「親父なぁ……。どうして毛嫌いするのか……さっぱりわからん」


「対処法は?」


「うーん……一度、ギルマスに話をして貰うか?」


「我が家の恥を外部に漏らす?」


「そうなんだよなぁ。平民とは言え、名が通ってる傭兵団だからなぁ」


「全員でシメる?」


「それは最終手段だな」


 ある意味、一番厄介な問題かもしれない。

 お父さんも頭を抱えている。

 もう、じじいの息の根を止めた方が早いと思う。


「リュール、その考えは駄目だ」


「人の考えを読まないで。後、冗談だから」


 お父さんの言葉に冗談と答えたけど、ちょっとだけ本気だったのは内緒。

 息の根を止めるのは無しにしたとしても、本気で分からせようとは思った。

 お父さんは、そんな私の考えに気付いてか気付かずかは知らないけど、提案をしてきた。


「お前が割と本気だと言うのは分かった。だから、私がもう一度説得するまで待ちなさい」


「失敗したら、シメても良い?」


「その時は、クッキーの刑だな。親父も、昔からクッキーは苦手だったしな」


「お父さんも、えげつない」


 傭兵国……と言うよりも、傭兵国を拠点に活動している冒険者と傭兵には有名な話で、クッキー刑は死刑よりも重罰と言われている。

 クッキー刑を受けた者は揃って口を閉ざすのも有名。

 だから、詳細は一切市井には流れない。

 噂だけが独り歩きしている刑なんだけど、お父さんは詳細を知っているみたい。

 聞いてみたいけど、何となく後悔しそうな気がしたから、敢えて聞かない事にする。


「とりあえず、親父の件は一旦預かる。ジャバの件に関しては、それなりに日数が必要だろうし、先に行方不明事件の方を片付けてくれ」


「了解。人手は?」


「潜むのにすぐれた腕利きを数名で良いだろう。一応、生かして捕える方向でな」


「最悪は、リーダー格と数名残して殺っちゃって良い?」


「……最悪はな」


 お父さんからも許可を貰ったので、最良と最悪の両方で動く事にする。

 そして……翌日から行動を開始したんだけど、結果から言えば僅か1日で依頼を完了してしまった。

 思い出すのもバカらしいから、簡単に説明すると……。


 私一人で囮を務めたら、簡単に獲物が掛かりました。

 一応、色々と話をさせて、情報を聞き出しました。

 襲い掛かって来たので、複数名を残しKILLしました。


 こんな感じ。

 生かしたのは、首謀者の冒険者と盗賊の頭と部下数名。

 後は全員、GO TO HELL!して、終わり。

 潜んでた団員達はドン引きしてたけど、一人で50人近くを相手にしたのだから仕方ない。

 生かした誘拐犯は潜んでいた団員達に任せて、私は帰路に着いた。

 これが依頼の顛末。


 そして、数日が経った頃、一番厄介だと思っていた案件が片付いた。

 お父さんに呼ばれて、部屋に入るとじじいが居た。

 お母さんとおばあちゃんも居て、家族での話し合いみたい。


「さて……親父、リュールに言う事は?」


「ぬ……うぅ……」


「じじい、話す気が無いなら、私は出かける」


 私が椅子から立ち上がろうとすると、じじいを除く家族3人が止めて来た。

 むぅ……用件は手短にして欲しい。

 特に、じじい絡みは。


「リュール、まぁそう言わずに」


「リュールや、このアホじじいに思う所があるのはわかるけど、少しだけ付き合っておくれ」


「お母さんとおばあちゃんが言うなら」


「あれ? 俺は?」


「お父さん! 茶々を入れない!」


 お父さんは、お母さんに怒られて小さくなってしまった。

 流石、お母さん。


「それで、話って何?」


「…………める」


「なに?」


「あの小僧と! リュールの結婚を認めると言ったんじゃ!」


「じじいが認めようが認めなかろうが、私がラフィと結婚する事実に変わりは無い。今更言われても、だから? って感じ」


「ぐふぅ!」


 私の言葉に、じじいが机に突っ伏した。

 お父さんは額に手を当てながら、天を向いている。

 お母さんは苦笑いしているし、おばあちゃんは口を開けている。

 わざわざ、今の言葉を言う為に時間を使ったのなら、とんだ無駄だと思う。

 でも、話はまだ終わっていない様で、じじいが話を続けて来た。


「そ、それでじゃな、リュールはいずれ子を産むんじゃよな?」


「当たり前。ボケたか、じじい」


「リュール、言葉使い」


「失言。ごめんなさい、お母さん。言い直す。ボケたの? じじい」


「まだボケとらんわ!」


 私の言葉にツッコミを入れるじじい。

 ボケるのは、まだ当分先らしい。


「いや、儂のボケはどうでも良いんじゃ。その、なんじゃ……子が産まれたならな……」


「さっさと言え、じじい。もじもじして、気持ち悪い」


「気持ち悪いは無いじゃろ!?」


「さっさと言って」


 私は急かすが、じじいは中々話そうとしない。

 その態度に業を煮やしたのかはわからないけど、代わりにお父さんが話を進めてくれた。


「つまりだな……曾孫の顔を見せて欲しいとだな」


「……」


 お父さんの言葉に、私は無言で答える。

 そして、私は無言に重ねて、もの凄く嫌な顔をしているだろうから。

 いや、きっとしている。

 何故なら、家族の反応が『そんな嫌って顔をしなくても』と、物語っていたから。

 じじいに関しては、既に泣きそうだった。

 家族の反応を見て、私はため息を吐きながら、妥協点としての提案をすることにする。

 ウザいけど……凄くウザいけど!一応、じじいも家族だから。


「じじい、幾つか条件を提示する。それを守ってくれるなら、子供に合わせる」


「全部吞むぞ!」


 じじいの食い付きが尋常じゃなかった。

 流石は先代ネデット傭兵団団長、反応速度は衰えていないみたい。


「一つ、ラフィの事を邪険に扱わない。一つ、教育方針への口出し禁止。一つ、嫁達との軋轢を生むような言動は禁止。一つ、私の子供の意思を尊重する」


「一つ目のだけは、何とかならん「じゃあ、会わせない」全部呑む!」


「リュール、それで全部か?」


「今思いつくのはこれだけ。後で思いついたら、足してく。証人はお父さん」


「お母さんやおばあちゃんじゃなくて良いのか?」


「家長はお父さん。だから、約束事に関してはお父さんが適任」


「わかった。親父、くれぐれも約束は守ってくれ」


「わかっとる。曾孫に会えんのは嫌じゃからのぅ」


 どうにか、一番の厄介事は解決したけど、まさか私の未来の子供を出しに使うなんて。

 私に中にあるお父さん評価が下落した瞬間でもあった。

 話し合いは終了したけど、私はお父さんを睨む。

 あ、お父さんが露骨に目を逸らした。

 これはお母さんの刑が必要だと理解したので、小声でお母さんに告げ口をしたんだけど、お母さんの反応は私の考えとは違っていた。

 話し合いが終った後、お母さんが私を呼んで、納得させるように話を始めた。


「お父さんも苦肉の策だったのよ。リュールはイライラしているし、お義父さんも頑固で折れなかったでしょう? 落し所としては仕方ないわよ」


「お母さんが当事者だったら、納得した?」


「どうかしらね? でも、仕方ないとは思ったかも。大切なのは今と未来だしね」


「過去は?」


「過去は過ちを繰り返さない為にあるものだと、お母さんは思っているわ。後は、良い思い出かしらね」


「全部大事?」


「そうね。だからリュールも、良い今と未来を、過去の出来事を思い出しながら目指しなさい。家族が笑い合ってる未来をね」


「わかった」


 お母さんと話をして、お父さんを許すことにした。

 お母さんが一定の理解を示している以上、妥協点だったと理解したから。

 でも、お父さんが妥協点として、苦肉の策を使わないといけない程、じじいは頑固だったのは予想外。

 私も家族の事について、まだまだ知らないといけないなと思った出来事だった。


 そして、じじい攻略戦から数日後、今度はジャバの方で用意が出来たと連絡があった。

 ジャバの方は……五月蠅かったら、今度こそシメよう。

 お父さんも止めないはず。


「よう。待たせて悪かったな。何しろ忙しいもんでよ」


「その辺りは、理解しているさ。おっと、口調は敬語の方が良いか」


「構わねぇよ。五月蠅い貴族共が居るわけじゃねぇし、大臣達は事情を分かっているしな」


「なら、いつも通りにさせて貰うかな」


「おう、気にすんな。ところで……例の話だが」


「断る」


 お父さんとジャバの挨拶が終わって、本題の話に移ろとしたジャバに、間髪入れずに私は断った。

 お父さんもジャバも苦笑しているが、大臣達は口角をヒクヒクさせている。

 何か、間違った事を言った?


「相変わらず、ド直球で話しやがるな」


「遠回しに話すより、こっちの方が楽」


「違いねぇ。ただな、俺は見知った顔だからってのを忘れるなよ?」


「問題無い。私も、ジャバにしか辛辣な言葉は……間違えた。ジャバとじじいにしか、辛辣な言葉は使わない」


「……シャイアス、お前、娘の教育をきちんとしてるのか?」


 ジャバが口角をヒクヒクさせながら、お父さんに話しかける。

 対するお父さんは、苦笑しながらもジャバの質問に答えた。


「それなりにだな。ジャバの場合は、リュールに負けたのが原因だろう」


「その話を持ち出すのかよ! 全く、親が親なら、子も子だな」


 ジャバが放った言葉を聞いたお父さんが、静かにキレた。


(あ、これは本当に怒っている時の気配)


 私は、静かに後方へと退避する。

 そしてお父さんは、私の退避が終わると共に、ジャバへと瞬時に詰め寄って、脳天にチョップを叩き込んだ。

 ジャバから「ぶべっ!」っと、変な声が漏れる。


「おい、ジャバ。もう一遍言って見ろ」


 お父さんの言葉に反論すべく、ジャバは脳天を抑えながら言い返す。


「そう言う所だよ! 直ぐに武力行使に訴える所! 軽い冗談ぐらい聞き流せ!」


「リュールが、私に似ていないと?」


「ああ! もう、めんどくせぇな! お前の娘が、そのめんどくせぇ所が似なかったのは、救いだと思ってるよ!」


「よし、殺す!」


「上等だ、ごらぁ!」


 こうして、話し合いの前に、お父さんVSジャバが始まったのは、いつも通りだった。

 お父さんとジャバのじゃれ合いが収まった後、爵位の件について話し合いが始まったけど、結論から言うと爵位は受け取らなかった。

 ジャバも初めから分かっていた様で、特に必死にはならなかった。


「大臣達が五月蠅くてな。家柄を合わせるべきだろうとな」


「余計なお世話」


「全く持ってその通りだな。むしろ、断ってくれて助かってる」


「貴族?」


「その通りだ。爵位の授与は、主に分けて二つ。王が変わる時の国民投票と、就任中の王が持つ特権だな。尤も、後者は強権発動に近い形にはなるが」


「だから貴族共が五月蠅い?」


「その通りだ。だから、実の所は助かってるって話だな」


 最後にジャバから、実質お礼みたいな事を言われて、話し合いは終わった。

 そう言えば、結婚式には招待してくれとも言われた。

 一応、お父さん繋がりもあるけど、私とは友人関係であるとも言われた。

 私としても断る理由は無いから、一応友人って形にはしておいた。

 ジャバは、一応って言われた時には何とも言えない顔をして、お父さんがそれを見て笑って、第二次じゃれ合いが勃発して……二人は仲の良い友達で戦友なんだな、と思った。

 私だと……多分、ヴェルグがそうなるのかな?

 お父さんとジャバ程のじゃれ合いはしないと思うけど。

 そして私は、日常に戻る。


(輿入れ準備も終わったし、鍛錬……雑貨屋に行って、ヴェルグに合いそうな小物でも買いに行こうかな)


 そして私は、ラフィが迎えに来るまで、鍛錬と……ちょっとだけ、オシャレの勉強をして、約束の日まで過ごした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る