幕間 真・嫁会議 帝国迎賓館編

 帝国内乱も終わり、ラフィ様の婚約者も増え、今は迎賓館でお茶会を開催中です。

 ラフィ様ですか?皇帝様の提案に断固反対する!と皇帝様と共に城に向かわれました。

 ラフィ様もおらず、時間もあるので、新しい婚約者を迎えてのお茶会となりました。

 勿論、進行は、私ミリアが取り仕切りますよ。

 正妻たるもの、きちんとしないといけませんから。


「それでは、改めて自己紹介としましょう」


 私の言葉で、全員が自己紹介をしていきます。

 そして、議題になるのが序列です。

 ラフィ様は嫌がるのですが、貴族としては必要な事ですから。

 

『理解はしてるけど、やっぱり慣れないし、気持ちの良い話じゃないよね』


 ラフィ様はそう仰っておりました。

 私も同じ気持ちはありますが、これも貴族に生まれた定めです。

 表向きは序列を作りますが、家庭内では序列無しと言うのが、ラフィ様が立ち上げた、新クロノアス家になります。

 ですので、今回のお茶会はそのお話もしないといけません。

 新しく婚約者となった皆さんは、どう言った答えを出すのでしょうか?

 ラフィ様が選ばれた方々ですから、心配はしていませんが……。


「では、表向きの序列なのですが……」


「ミリアさんが正妻で1位なのですね? 国の体裁を考えると、私は8位くらいでしょうか?」


「ミナさんの気持ちは嬉しいですが、私達は一つ下がります」


「ティアの言う通りなんだけど、それで良いの?」


「所詮は表向きの事だしね。リリィが気にする必要性は無いんじゃない?」


「そうですね。私達はラフィ様と一緒に居たいだけですしね」


「ラナさんの言う通りですが、問題が無いわけでもありません」


 私はそう言ってから、リュールさん、イーファさん、リジアさん、スノラさんに視線を移します。

 ヴェルグさんは半分婚約者みたいなものでしたし、周囲もある程度理解しているので、問題にはなりません。

 そして、視線を移した4人には、過去と現在の国が関与します。

 ですが、私の視線を受けたイーファさんが、耳を疑うような発言をしました。


「ふむ……表向きの序列のぅ。そうなると、妾達3人は一番下の方が好ましいか」


「イーファはそれで良いの?」


「それよりも、イーファ様の一人称が……」


「スノラよ。様付けはやめぃ。妾もお主等と同じ婚約者なのじゃ。故にイーファと呼ぶのじゃ」


「恐れ多いです……」


「駄目じゃ。今直ぐで無くても良いが、式を挙げるまでには直すのじゃ。これは必要な事じゃぞ」


「イーファさんの言う通りですね。ラフィ様が嫌がりますし」


「うっ……ど、努力します」


「それよりも、なんで妾?」


「ヴェルグよ、妾はラフィの妻になるのじゃぞ?お主等みたいには出来んが、もう少し柔らかくしようとだな」


「一緒じゃない?」


「なんと! しかし、妾にはこれ以上は厳しいのだが?」


「スノラに言ったじゃん。要努力だね」


「手厳しぃのぅ」


「話が脱線していますよ」


 手を叩いて、リーゼさんが話の趣旨を戻します。

 ラフィ様は序列の話をこれでもかと嫌がりますので、私達が自主的に決めて、ラフィ様に報告しないといけません。

 本来は当主であるラフィ様が決めないといけませんが、絶対ではありません。

 慣習と言うものがありますから。

 ラフィ様がお決めになられないのならば、慣習に沿った方向で決めないといけないのですが……。


「イーファさん、リジアさん、スノラさんは、元亜人国の王族になります。流石に一番下と言うのは……」


「今は無き国じゃ。国が無いのだから、平民と大差あるまい。それに、妾は王族ではないしな」


「リジアさんとスノラさんは違いますよね?」


「ミリアよ。先程も言うたが、今は無き国じゃ。亡国なのじゃ。お主なら、わかるじゃろう?」


「ですが……」


「ミリアさん、イーファさんの気持ちを汲んであげても良いのでは? イーファさんなりに、穏やかにしようと動いてらっしゃると思いますわ」


「リーゼさん……わかりました。では、リュールさんは……」


「私も、そちらの方が問題と思いますわ」


「リーゼも? ボクもそう思うんだよね」


 私達3人はリュールさんを見ます。

 リュールさんはこう言ったことには疎いようで、小首を傾げた後、お菓子を食べ直し始めました。

 そして、もう一つ問題なのが、序列の話になると必ず口を紡ぐ人がいるのです。

 そう……ナユさんとリアさんは、絶対に参加しないのです。


 シアちゃんは年齢もあるので、仕方ないと思います。

 ナユさんは身分を気にしていらっしゃるようですが、私達には無意味ですね。

 リアさんは零細とは言え、貴族の娘なのですから、もう少し参加してくれても良いのでは?

 そんな思いを込めて二人を見つめます。

 私の考えを理解したリーゼさんとリリィさんも二人を見つめます。

 あ!視線を逸らしました!

 これはいけません!有罪です!ギルティです!


「ナユさん、リアさん、お二人の意見はどうなのですか?」


「そうですね。特にリアさんは貴族なのですし」


「リリィさんのお言葉もそうですが、ラフィ様の初恋に当たるナユさんの意見が聞きたいですわ」


「「うぅ……」」


「まぁまぁ、3人とも落ち着いて。でも、二人とも悪いのは事実だからね?」


 ヴェルグさんが仲裁に入りましたが、さりげなくリアさんとナユさんに釘を刺しました。

 ヴェルグさんにまで言われるとは思っていなかったのか、二人は見合っています。

 そして、どちらともなく溜息を吐き、意見を言ってくれたのですが……。


「そもそもさ、適材適所ってあると思うんだ。僕はこういう話には向かない」


「私は元が平民ですし、あまり知識が……」


「それを話し合うのが家族なのでは?」


 私の言葉に、シュンとなるリアさんとナユさん。

 少し言い過ぎたでしょうか?

 いえ、これくらい言わないと、このお二人は発言しないのですから、問題無いですね。

 お二人の意見を待っていると、ヴェルグさんが止めてきました

 どういう風の吹き回しでしょうか?


「ミリア、そこまでだよ。リアはともかく、ナユは仕方ないんじゃないかな? 勉強はしているだろうけど、慣習まではわからないんじゃない? それとも、誰か教えたの?」


「そう言えば……」


 全員が視線を交わし合いますが、肯定の答えはありませんでした。

 つまりは、そういう事の様です。


「ナユさん、ごめんなさい。つい、知っているものだと……」


「私もごめんなさい。ナユさんだからつい……」


「ナユさんは、頭が良いから知っていると思っていましたわ。そもそも、知っているのが当たり前ではないのですよね」


 私、リリィさん、リーゼさんが謝ります。

 ナユさんは慌てながら、私達に顔を上げるように言います。

 ですが、勘違いで困らせてしまったのです。

 家族でも、きちんとしなければいけません。

 他家の貴族家は知りませんが。


「わかりましたから! ちゃんと参加しますから、頭を上げてー!」


「ですが……」


「謝罪は受け取りました。私も悪かったですから、これでお終いにしましょう! リアちゃんも参加しようね」


「わかったよ。ナユが参加するのに、僕だけが逃げるわけにはいかないか」


「じゃ、話を戻すよー。リュールの序列を確定させる前に、皆の序列を振り返ってみたら?」


 ヴェルグさんの言う事にも一理あります。

 ここは一度整理しましょう。


「じゃ、言ってくよー」


 ヴェルグさんが代表して言って下さるようです。

 

序列 1位 ミリア (神聖国・神子)

   2位 リリィ (王国・王族)

   3位 ラナ  (竜王国・王族)

   4位 リーゼ (皇国・皇族)

   5位 ミナ  (帝国・皇族)

   6位 ティア (王国・公爵家)

   7位 シア  (王国・侯爵家)

   8位 リア  (王国・騎士爵家)

   9位 ナユ  (神聖国・平民)

  10位 ヴェルグ自分(眷属)

  11位 イーファ(亡国・守護者)

  12位 リジア (亡国・王族)

  13位 スノラ (亡国・王族)

   ?位 リュール(傭兵国・平民)


 ヴェルグさんが読み上げてくれましたが、改めて見ると凄いですね。

 約半分が王侯貴族です。

 そして、私だけではなく、全員が思いました。

 皆さんがヴェルグさんの読み上げを聞いた後、示し合わせたわけでもないのに、視線が交わったのです。

 そして全員が頷きました。

 その後に出た言葉に、誰も異議を唱えなかったのです。


「「「「「「「「「「「「「「まだ、増えそうだよ(ですよ)ね」」」」」」」」」」」」」」


 満場一致での答えでした。

 これ以上増えたら、ラフィ様が大変になりそうな気がします。

 ごほん、話が脱線してしまいました。

 今の話を聞いて、イーファさんが提案を出します。


「ふむ……妾達の上辺りに、リュールを置いても良いのでは? それと、妾は一番下にしておくれ」


「リュールさんに関しては構いませんが、何故イーファさんが下に?」


「妾なりの矜持じゃな。生き残った王族は二人だけじゃ。ならば、二人は上の方が良い。妾は二人を見守る役割もあるのでな。ミリア達なら、理解できるじゃろ?」


「わかりました。イーファさんの意思は尊重します。リュールさんは何かありますか?」


「私? 私に関しては、特に無い」


「リュールさんに関しては…ですか?」


「ヴェルグは…もう少し上でも、良い気がする」


「あー、そこは出会った順とか、告白した順とか、慣習とか、色々あるから気にしたらダメだよ」


「ヴェルグが気にしてないなら、それで良い」


 そう言うとリュールさんは、お菓子に没頭し始めました。

 何でしょう?リュールさんの頭とお尻に、犬耳と犬尻尾が幻視出来てしまいます。

 かなり可愛らしいです。

 ハッ!いけません…少しトリップ仕掛けました。

 自重しないといけません。

 ラフィ様に悪い噂が立たないようにしませんと!


 とりあえず、現状の序列は決まりました。

 後で正書して、ラフィ様に見て頂きましょう。

 ですが、まだ増えそうなので、この序列も当てにならないかもしれませんね。


 その後は雑談で楽しみました。

 勿論、イーファさんのモフモフは外してません!

 モフモフを堪能しながら、ラフィ様の帰りを待ちますが、お昼を過ぎても帰って来られず、ご帰宅されたのは夕方になってからでした。

 ぐったりしたラフィ様は一言。


「覆せなかった……」


 とだけ言って、一旦部屋に戻られました。

 精神的にお疲れのご様子。

 ここはイーファさんのモフモフパラダイスを!

 ……結婚前の男女では無理ですね…………。

 後でお話を聞いて、少しでも軽減させましょう。


 夕食後、お話をする前に正書した序列表をラフィ様にお見せしました。

 正書した序列表ですが。


序列 1位 ミリア (神聖国・神子)

   2位 リリィ (王国・王族)

   3位 ラナ  (竜王国・王族)

   4位 リーゼ (皇国・皇族)

   5位 ミナ  (帝国・皇族)

   6位 ティア (王国・公爵家)

   7位 シア  (王国・侯爵家)

   8位 リア  (王国・騎士爵家)

   9位 ナユ  (神聖国・平民)

  10位 ヴェルグ(眷属)

  11位 リュール(傭兵国・平民)

  12位 リジア (亡国・王族)

  13位 スノラ (亡国・王族)

  14位 イーファ(亡国・守護者)


 となっています。

 ラフィ様は、この表を見て一言だけ。


「皆、納得してるんだね?」


 とだけ、聞いて来られました。

 私は勿論「はい」と答えます。

 ラフィ様は私の言葉を聞いて頷き、頭を撫でて下さいました

 これだけで私は報われます。


 その後、私だけ撫でられたのがバレて、皆さんからお説教されました。

 ですが、ラフィ様のなでなでを堪能できたので、悔いはありません!

 こうして、新しく婚約者となった皆と共に、帝国で暫く過ごし、我が家へと帰国しました。

 これからも皆さんと仲良く、賑やかに暮らせそうです。

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