第72話 俺に安寧と言う言葉は無縁らしい
朝8時前、現在俺は帝都郊外にいた
何故こんな時間にこんな場所にいるか?時間は2時間前に遡る
昨日はギルド運営の宿のVIP部屋に泊まり、いつも通り朝5時過ぎに起きて鍛錬を開始し始めるのだが、鍛錬中に地面が揺れる
地震かな?転生して初めてだったので「(この世界にもあるんだな)」と思いつつ、鍛錬を再開すると、突如、ギルド職員が現れる
ギルドは国にもよるが、朝早くから夜遅く迄か24時間体制で運営されている
首都は主に後者だが、早朝から訪ねて来る事は基本無い
早朝から訪ねて来る=不測の事態が大体である
「(また朝から戦闘かよ・・・)」
と心の中でため息を吐き、事情を聞こうとすると
「詳しい話は、ギルドで行いますので」
との事で、3人を起こしてギルドに向かう
ギルド内は帝都中の冒険者が招集されている様で、昨日よりも明らかに冒険者の人数が多い
ざわざわと騒がしい中、ギルマスが姿を見せ説明を始める
先程、見張りの兵士が東からゴーレムの群れを確認したそうだ
数は300前後で、ロックゴーレム100ちょいにアイスゴーレムとアイアンゴーレムが混在していると説明され、冒険者全員が怪訝な顔をする
ゴーレムの亜種同士が群れを成すなど在り得ない
魔物にも縄張りがあるし、そもそもゴーレムは知能が相当低いのだ
隊列組んで侵攻など、過去の話と照らし合わせても聞いた事が無い
確かに不測の事態で異常事態だが・・・殲滅するので関係ないか
説明の最後に
「帝国兵が出撃の準備をしているから足止めと、出来る限り数を減らし、生き残る様に」
と告げられて、話は終わる
あれ?っと思い、2つ質問をする
全員に強制参加になるのかと報酬についてだ
「勿論、強制だが、報酬は国から出るぞ」
との事だが、報酬はすっげぇ安く、大銀貨1枚で命張れと言う有様
「帝国上層部のおつむは大丈夫ですかね?」
と、毒を吐いたほどだ
そう思う冒険者は多く、みんな苦笑いしていた
毒を吐いた理由は、そのゴーレムを過小評価していた為だ
ゴーレムは確かにそこまで強くはないが、それは敏捷が低く、行動が遅い
攻防力に関して言えば相当なので、倒し方は遠距離から高火力魔法撃ち込んで殲滅か撃ち込んでから弱った所を各個撃破する類の魔物である
今回は数が多く、防衛線になるので、高確率で死者が出るだろうな
仕方ないか・・・と、内心で言い訳をしつつ、戦闘準備に入る
ゴーレムの群れは、1時間もしないうちに最終防衛ラインに辿りつくそうだ
「(何故そこまで気付かないんだよ!)」と、ちょっと心の中で悪態をつくが、それを言ってる場合でもないので帝都郊外へと向かう
見張りを疎かにした奴は、後の面倒事で吊し上げだ
冒険者達は10分で準備を整え、各自、郊外へと向かう
しかし、準備をしながら俺は思う
何故、俺が各国を訪問すると、緊急事態の戦闘が起こるのか?
他国に向かう>騒動が起きる>戦闘になる>柵が増える
神樹国は戦闘こそないが、騒動と柵は増えたからな
俺に安寧の日々は無いのだろうか?
もうこれ、呪われてるんじゃね?
神喰いの呪いなんじゃね?
そんな事を考えながらため息を吐きつつ、準備を済ませた
現在6時前
後、1時間弱後には戦闘開始である
帝国兵は戦闘開始ギリギリに到着するらしい
帝都に被害を出す気は無いが、万が一を考え、帝国民の避難を誘導してから戦線に参戦するらしく、間に合うように足止めを頼んだそうだ
一応は仕事をしているわけか・・・仕方ないと諦め、ギルマスに提案をしに行く
「悪いんだけど、こっちから仕掛けても良いかな?半分は掃討できると思うけど」
この言葉に、ギルマスは怪訝な顔をしながらも了承する
ついでに「一掃できるなら、してくる」と告げて、パーティー全員でゴーレムの群れへと向かおうとした
しかし、他の冒険者から止められたり、手柄を取られると思ってか「着いて行く!」という者もおり、結構面倒くさくなったのでギルマスに丸投げした
ギルマスは〝自己責任〟って言葉で丸投げした
「着いて行くのは自由だが、死んでも文句言うなよ」
と責任放棄した言葉を放つ
良い根性してるよ全く・・・結果、5分の1の冒険者が防御陣地から離れ、攻撃に移る事になった
前線を上げて攻撃に出る訳だが、俺はリアとナユの腰に手を回し、片手で持ち上げ、ウォルドは置いて、3人で先に前線へ向かう事にする
さっさと半分は片付けておきたい為だ
二人を連れて行くのは、さっきから二人を見る視線が妙にいやらしいから
対処は出来るだろうが、万が一を考えて連れて行く
ウォルドは男なので問題ない・・多分、問題ない・・・冒険者の中に漢女がいて、ウォルドに視線を向けているが・・・・きっと大丈夫だろう・・・
そんなわけで、二人を抱えて先に進むことにした
先に進み、魔法の射程範囲内に到着し、二人を降ろしてから魔力を込める
火属性系のゴーレムがいないので一気に減らすか
一定の範囲を結界で包み、ゴーレムを閉じ込める
アイスゴーレムとアイアンゴーレムは全部入ったっぽいな
それを確認してから、火属性の帝級魔法を結界内に放つ
【ゲヘナ・インフェルノ】
王級魔法のインフェルノと帝級魔法のゲヘナフレイムを複合させたオリジナル魔法である
威力的には神話級だが、後処理も考えて、威力は帝級まで落としている
それでも摂氏5千度になるので、結界内のものは基本蒸発する
一部金属は蒸発はしないが今回は全て蒸発した
1分程、結界内で無慈悲な灼炎が猛威を振るい、後には何も残っていなかった
このまま結界を解くと、熱が人を殺してしまうので結界内を一気に冷やす
【コキュートス】
王級魔法で水属性から派生した氷魔法
一気に冷やしたので、溶けた大地がひび割れていく
後で精霊に謝って癒してもらわないと
こちらも1分程冷やして魔法を解く
結界内は・・問題なさそうだな
結界を解くと、ゴーレムの核すら残っておらず「ちょっと失敗したな」と反省する
失敗なのは、討伐証明が何もできないからだ
ゴーレムは核を砕いて持ち帰ると討伐証明になる
だが、何も残って無いので証明のしようがないのだ
・・・・・次は、気を付けよう
3分の2程を2分程で一気に片づけ、後処理迄終えているのを目の当たりにしたゴーレム共は、何が覆ったのか理解できないでいた
完全に足を止めたゴーレム共だが、何体かはこちらに向かってきて、攻撃をする
攻撃自体は遅く、3人共余裕で避けている・・遊んでいるとも言うが
「・・・?なんだ?」
攻撃を仕掛けているゴーレムに違和感を覚える
魔物型ゴーレムは中心の核に向かって魔力が流れている
しかし、今、攻撃しているゴーレムは、全体に満遍なく循環して魔力が流れている
俺は、前に本で読んだことを、攻撃を躱しながら思い出していき、答えを見つける
この襲撃は人為的に仕組まれたものだと
今、攻撃を仕掛けているゴーレムには術者がいる
魔物型ゴーレムは操られたか扇動されたのだろう
後方からは、後10分程で冒険者達も来るし、こいつを調べてみるか
攻撃を躱しつつ2人に目線を合わせ、意図を伝えると、二人は攻撃の誘導を開始した
俺も誘導しつつ、あれを探していく
あれとは、術師ゴーレムに必ずあるemethと書かれた文字
術師ゴーレムを倒す方法はemethのeを削りmethにするか、完全消滅させるか、乗っ取る位しかない
当然、巧妙に隠されているのだが・・割とすぐに見つかった
胸部装甲の中に隠されていたのだが、何故わかったかと言うと、巧妙に隠されているとはいえ、そこから魔力が全体に流れていた
eだけ削るのは厳しそうなので、聖魔剣に力を込め、胸部に穴を開けて文字を消滅させる
ゴーレムは音を立てて崩れ、ただの岩に戻った
残りのゴーレムは、リーダーらしきゴーレムがやられたのか?本能が警鐘を鳴らしたのか?わからないが浮足立ち、各々に逃走を始める
当然、逃がすわけがないので攻撃に移る
ナユがリアに補助魔法をかけ、リアは身体強化をし、核の部分を一撃で粉砕する
俺も核の部分に斬撃を加え、一刀両断していく
3人で30体程倒した所で後続が到着するが、彼らは茫然自失である
見当たらないアイアンゴーレムとアイスゴーレムに、3人で倒されたゴーレムの残骸30体に、嬉々として未だ掃討している3人
その中で一人「俺も混ぜろぉぉ!」と、突っ込むウォルド
5分後、150体程いたゴーレムは、4人によって全て掃討された
尤も、ウォルドが倒したゴーレムは6体だけである
いや、ウォルドの名声の為に言っておくと、単騎で6体討伐は普通に凄い事だ
俺とリアが人間離れしているからそう見えないだけで
100体以上は俺が倒しており、俺達以外の冒険者は全員が畏怖する事にもなった
で、現在に至り、念の為だが警戒中であるのだ
現在10時過ぎ
俺は用事があるので、他の冒険者に任せ、現場を後にする
周囲からは当然
「なんで、てめぇだけ!」
「えこひいき、はんた~い」
「協調性皆無。乙」
などと、文句が出る始末だった
しかしギルマスは、どうやら諜報職員を付けていたそうで、俺が100体以上のゴーレムを単騎で倒した事を話し、全員が無事に帰還出来たのだから、、警戒任務位は引き受けようと説得した
更に帝国兵の指揮官が俺の名前を聞き
「皇帝陛下には、遅れる旨を伝えておきます」
と言ったので、用事が何かを全員が察して、何も言わなくなった
後腐れも無くなったので、帝城へ向かおうとして
「(そういや、朝飯食ってねぇなぁ)」
と、思い出す
冒険者達は全員が朝飯抜き中
指揮官にも聞くと、兵達も全員が
「朝飯は抜いて、此処に来ています」
と聞かされたので、この場で簡単な朝飯を振舞って行く事にする
どうせお偉いさん方は既に食ってるだろうし、更に遅れても問題無いだろう
と思い、3人を呼んで調理に入る
空間収納から調理器具を一式取り出し、水魔法にて水球を作る
水球は水道の代わりにもなており、切り替えで蛇口の開け閉めみたいな感じにする
ついでに
大型の竈も簡易ではあるが複数作り、ウォルドに大鍋を運んで貰い、水を入れる様に指示を出し、リアとナユには具材の下ごしらえを頼む
俺は米を研ぐ作業をするのだが、この辺りは水魔法を使って簡略化した
竈の火も魔法で火力調整できるので、沸騰したら弱めて出汁を取る
味付けは味噌にしよう・・満足感も得られる濃い味が良いな
各種野菜に肉を入れて、最後に米を投入し、蓋をして20分ほど待つ
蓋を開けると良い感じに仕上がったので、最後に卵を溶いて火を止め、数分蒸らして雑炊もどきの完成である
器と食器も土魔法と火魔法で簡素に作り、水と光魔法で消毒して完成っと
冒険者の何人かに手伝って貰い、帝国兵も合わせた全員に配る
1人1杯ではあるが全員に行き渡り、皆で遅めの軽い朝食を取る
食材を大分消費したし、後で買い足さないとなぁ
ランシェスに帰ってから竜王国に行って、米の買い付けもしなきゃな
そんな感じで遅めの朝食は無事に終わった
全員から感謝され、後片付けをして、今度こそ帝城に向かう
城に向かう際、指揮官と幾人かの兵が同行しており、道中でお礼を言われ「気にしないで良いですよ」と答える
後数時間後には警戒態勢も解かれるだろうとの事で、半日はゆっくりできそうである
ゆっくりできるよね・・・?
フラグが立った気がしないでもない
昼前に城に着き、謁見を行う
本来は、もう少し身なりを整えるべきなのだが、緊急招集もあり、今回は冒険者の格好でも問題無いとしてくれたようだ
この指揮官はかなりできる男であった
今日の謁見については、俺達以外は全て後日に回したそうで、時間は気にしなくても良いとの事だった
長居したいとも思わないので早急に切り上げよう
城に着くとメイドが出迎え、1室へ案内され、しばし待つ
15分後、近衛らしき騎士とメイドが呼びに来たので後を付いて行き、謁見の間へと入る
謁見の間で形式上の礼を取り、皇帝を待つ事数分
一人の男が玉座に腰を掛ける
しかし、何故この男が玉座に座っているのか?
玉座に座った男とは帝国の皇太子
ガズディア帝国皇太子ジルニオラ・ザズ・フィン・ガズディアであった
皇太子はこちらを睥睨すると面を上げる様に告げ、形式に倣い挨拶をする
何の用事か知らないが、人を呼びつけた理由を早く知りたいものだ
だが、告げられた言葉にマジ切れする事になるとは、この時、誰も予想していなかった
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