第6話 最後まで振り回される
転生迄地上時間で後5日か……。
長いような短かったような……いや、色々濃かったし長かったが正解だな。
物思いに耽っているといると、神様ーズから呼び出された。
「呼び出してすまんの。今日は蒼夜君に色々話しておこうと思ってな」
そう告げるジェネス様は孫におもちゃを買ってあげるような顔をしていた。
何となく亡くなったジィちゃんを思い出すな。
そんなことを考えているとジェネス様達は話を進めてきた。
「先ず武器についてじゃが、これは中々に面白そうなのが出来そうじゃと鍛冶神達から連絡があったのじゃが、出来るまでにはまだ時間がかかるとの事じゃ。出来上がったら渡すでの。楽しみにしておると良い」
「次に私だ。蒼夜君は神界で修練を積んできたがあくまで魂を鍛えたに過ぎない。転生後はそれに見合った修練が必要になる。それを覚えておくんだ」
ジェネス様の後にメナト様が修練をしろと言ってきた。
今度は転生後に神界で行った様な修練が必要なのか――はぁ……。
そう思いため息をつくとメナト様が勘違いしていると正してきた。
神界には特別な方法以外、人の身で来ることは出来ないとの事だ。
なので地上で神界でやっていた修練をするようにとの事。
しかしあくまで人の身で赤子からの転生である。
身体に負担を掛けぬよう行うべしと注意された。
そりゃごもっともだ。
セブリー様も頷いてる。
次にリュラ様とアシス様だ。
二人は俺に転生後に贈り物をすると言っていた。
何を贈るかは転生後のお楽しみだそうだ。
ジーラ様・ジーマ様・エステス様は魔法についてだ。
神界で修練した魔法は力が伴えば地上でも使える。
但し極力使わず最高でも帝級にしておけとの事。
帝級でも大概だと思うんですがね……。
それと魔法についてのスキルもくれた。
ここで確認しないようにとの事なので、転生後に確認してみよう。
シル様はスキルを与えて下さるそうだ。
俺の頭に手を置き光を俺に纏わせる。
数十秒ほどで光は俺に吸収されて収まった。
結構特殊なスキルを満載とか怖いこと言ってたのでスゲー気になるんですが。
トラーシャ様は成長上限を破壊する能力をくれたのだが、詳しい説明が一切なかったので怖いんですが……。
メナト様とセブリー様はもう既に渡してあるとの事だ。
何を貰ったのかさっぱりなのだが、渡したと言ってるのだから何か受け取ったのであろう。
シーエン様からはとある称号を贈ると言われた。
この称号は転生後、絶対に役立つそうだ。
最後にジェネス様だ。
「わしからは地上に存在しない創造魔法をスキルとして渡しておくからの」
ジェネス様は孫にダダ甘ジジバカスキルが発動したみたいだ。
そう思うのも無理はない。
それだけジェネス様から頂いたスキルがぶっ飛んでいたからな。
これは絶対に秘匿しよう心に決めた。
「さて、後は加護についてじゃが……」
そうジェネス様が話そうとした時、エステス様が急に慌てだした。
「ジェネス様、問題発生ですわ。あまり時間が無くなりましたの」
そう告げるエステス様にジェネス様も珍しく困惑していた。
「一体何があったのじゃ?」
「蒼夜君の転生先の赤子が生まれそうですの……。早めにに転生の儀をしないといけませんわ」
ちょっと待て!最後までこんなドタバタなのかよ。
そうツッコミたい衝動に駆られるも、メナト様がエステス様を鋭く睨んでいたので飲み込むことができた。
メナト様はその眼光のままエステス様に問いかける。
「エステスよ。貴様生まれる赤子の誤差の範囲は1~2日だと自信を持って言っていたな? それが誤差5日だと? まだ全てを話し終えてない失態どう責任を取るつもりだ? 蒼夜君は元々、神側の不手際での転生だ。更には我々の落ち度であった神喰いに関しても協力して貰っている。その上更に不手際を重ねる気か貴様」
いつもとは違うメナト様に俺は思わず唾を飲み込む。
今のメナト様は戦神たる力を辺りに漂わせている。
これが戦神メナト様の神たる力の一旦なのか……。
剣呑な雰囲気の中、お互いに睨みあうメナト様とエステス様。
そこにジェネス様の一喝が落ちる。
「おぬし等! 今は睨みあっとる場合か! エステスよまだ生まれてはおらぬのじゃな?」
「陣痛が始まってはいますがまだ産まれてはおりませんわ。読み間違えた私に責任があるのは重々承知しておりますが、まだ転生の儀は可能ですわ。このまま時間だけを浪費してしまっては赤子は死産してしまいますわ」
いやいや、なんで俺が転生できなきゃ死産なのよ……。
疑問に思うが、ジェネス様もエステス様も何やら神気を集めているな。
これじゃ聞けないか――と思っていると、代わりにシーエン様が答えてくれた。
転生とは2種類ある。
これは以前に聞いた話だ。
記憶を持った転生と浄化してから行う輪廻転生。
その輪廻転生は数が膨大であるとの事。
だから輪廻転生はシステム化してしまってるとの事だ。
今回の赤子には、システム化した中から浄化された魂が行かないように止めていて、俺の転生が間に合わなければ死産になる。
本来は死神の仕事もある程度はシステム化してあるとの話だが、神喰いのせいで綻びが出来てしまい、元通りになるまでシーエン様が管理している者達――眷属や下級神――が補っているわけだ。
「言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、蒼夜君の死もシステムが元通りなら回避できていたかもしれないの」
とシーエン様は話の最後に付け加えた。
今明かされる衝撃の事実!!
ってふざけてる場合じゃないな。
今ならそうだったのか!って位には思えるが死んだ直後の辺りなら間違いなく言い訳だろうな。
シーエン様って責任感とか真面目とか、俺の中の神様のイメージと真逆な感じがする。
そういや、初めて会った時も先ずは謝罪だったし、ホント真面目だよなぁ……。
死神って、基本、真面目な人しかなれないんだろうか?
転生とは無関係な事を考えてる間に、どうやら転生の儀の準備ができたようだ。
「蒼夜君。これよりお主を転生させるでな。いくつか話さないといけない事が出来てないので、必ず近い内に会いに来るのじゃぞ。では始めるぞい」
それだけ告げると俺の足元に複雑怪奇な魔方陣が現れる。
魔方陣が光を放ち始めると意識が遠のいていく。
神様達が何か言ってるが聞こえない。
そうして俺は意識を深い闇の中に落としたのであった――。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「どうやら無事に転生した様じゃの」
蒼夜がいなくなった後の神界にてジェネスが安堵の声を出した。
そして、メナトは依然エステスを睨んだままだ。
それもそのはずである。
本来なら生命を司る神が生まれる日時の間違いなどあってはならないしそもそもしないはずなのである。
シーエンが述べた通りシステム化してあっても、エステスが浄化された魂を止めたのであればより正確な主産予定日が分かっても良い位の事案なのだ。
それでもシーエンの件があったせいで慎重にならなければいけないため、誤差1~2日と言う報告は仕方ないと思っていた。
それでも3日あったのだ。
それだけあれば全ての事を伝え、与え、何事もなく送り出せる様に神々たちは準備していた。
それが破られたのだ。
メナトの疑心の目はエステスに向いてもおかしくない話である。
シーエンもまたエステスに疑心の目を向けていた。
そもそも生命神と死神は表裏一体だ。
元は一つの神であったものが二つに分かれただけである。
そして不知火蒼夜の死。
間違って命を刈り取ることは今までなかったわけではない。
だがその間違いは1%以下だ。
年齢・名前・住んでる場所・存在する世界・人種。
その他にも起因するものはたくさんある。
無論、確認ミスが無いわけではない。
だが今回の件はあまりにも出来過ぎている。
神側の都合の良い展開にだ。
シーエンは当初からずっと疑いの目を各神々に向けていた。
誰かが仕組んだのではないのかと。
そもそも、邪神に酷似した堕神や狂神等聞いた事が無い。
確かに神喰いは存在するが神がなる事はない。
邪神が神喰いになるだけだ。
だが神格持ちは邪神にはならない。
神格が邪魔をするからだ。
だから堕神や狂神になる。
今回の神喰い自体が異常なのだ。
そんな中の不知火蒼夜の件だ。
疑うなと言うのが無理である。
シーエンは他の11神に疑いの目を向けたが直ぐに数神からは疑いの目を外した。
真っ先に外した神は獣神・龍神・破壊神だ。
この3神はそのような裏工作は好まないし、破壊神に至っては神々の死も人の死も同価値である。
故に破壊神は絶対にない。
獣神は短絡的なので工作は向かない。
龍神は裏でこそこそ動くこと自体が嫌いである。
その為、この3名は無い。
次に外れたのは戦神と武神である。
この2神は仲が良い。
強者も好きだ。
戦神は頭も切れる。
だから裏工作などもするが先程のメナトを見る限りそういった類ではない。
純粋に殺気がダダ洩れだったのだ。
不知火蒼夜の不手際でも真っ先に制裁を加えたのは戦神と武神である。
当初はそれでも疑惑の目を向けていたが戦神の殺気は純粋さゆえの殺気だ。
裏工作した時には殺気なんて出ない。
武神はそういう類は戦神任せだ。
出来なくは無いしバカでもないのだが面倒くさがってしないのだ。
故にこの二人も外れる。
次に外れるは商業神だ。
彼女は人の死に直結する裏工作は絶対にしない。
それが彼女が決めたルールであり神格だからだ。
それにエステスを冷めた目で見ていた。
あれは疑ってる眼だ。
であるならば彼女は違うだろう。
残り5神に関しては警戒しなければならない。
特にエステス・シル・ジーラは要注意だ。
ジーマは正直わからない。
ジェネス様はあってほしくない
そしてシーエンは更に考え込むのだった……。
ジェネスもまたエステスに思うところがあった。
と言うか、ほぼ確信している。
間違いなく不知火蒼夜の死に関与していると。
伊達に創世神で神々の頂点に君臨しているわけではない。
ただし明確な証拠はない。
それ故に断罪できない。
ただ、かの老人は不知火蒼夜を好ましく思っていた。
人で言う所の孫みたいな存在に蒼夜はなっていたのだ。
故にジェネスは決めている。
蒼夜に何かあれば証拠が無くても疑わしき神全員を消滅させると――。
シルもまたエステスに疑惑を向けていた。
彼女は全知である。
しかし12神の行動と思惑までは全知でもわからない。
シルは蒼夜を気に入っていた。
異性としてではなく弟的な立場ではあったが。
そしてシルはシーエンの事を妹みたいに思っている。
シーエン本人はその事に気付いてないし知らないが、だからこそシルは最後の件に疑いを向けた。
シーエンも蒼夜も嵌められたのではないかと。
ただシルにとっては複雑ではあるが嬉しい誤算もあった。
一つは当然、神喰いの消滅。
そしてもう一つはシーエンの恋心である。
妹みたいに思ってるシルには喜ばしかった。
だがシーエン本人は全く気付いていない。
蒼夜と言う個人に対して執着していることすら自覚が無いだろう。
だからシルはシーエンを応援しようと思った。
但し、二人に少しでも悪意を向ける者には容赦しないと心に決めたのだった。
そして蒼夜は神々たちの思惑を知らぬまま無事転生した――。
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