第3話 神喰いとの戦い?

 シル様の案内の元、封印の地へやってきたが、なんもない。

 無限ともいえる空間が広がってるだけである。

 そんな中を方向感覚もわからずに進んでいくと、透明な壁みたいなのに勢い良くぶつかる。


「いってー……」


「ここから先が封印の内部です。空間転移を使いますので、後はお願いしますね」


 そう言うとシル様は、俺を転移させ封印内部へ送り込んだ。

 ん?ちょっと待て!?封印したまま消滅出来るって言ってたよな!?中に入るとか聞いて無いんですけど!?

 だが叫ぼうにも見える範囲には俺一人。

 こっからどうすんだよ……。

 そう思っていると、いきなり目の前が歪み始め、何かが姿を現した。


「人間か……。魂だけの存在である所を見るに、ジジィの差し金か」


 真っ黒な人の形をした者は、言葉を発した後に襲い掛かろうとするが、光の鎖が両手足に首に加え、体のあちこちに巻き付かれていた。


「あんたが神喰いか?」


 そう聞くと、そいつは嗤う。

 そして俺にこう告げた。


「神喰いかどうかは知らねぇが、神なら腐るほど喰ったぜ。不味いがな」


「不味かったら、何故喰うんだ?」


「力を取り込めるからさ。力を取り込み、ジジィに変わって俺が世界を管理する。管理した世界は、俺の意のままに好きな事を出来るじゃねぇか」


 ああ……こいつはクソだな。

 何故、堕神や狂神なんて言われるのか分かった気がする。

 こいつは害悪にしかならないな。

 さっさと消滅させるか。


「最後の言葉セリフは、それで良いか?」


 俺が告げると、神喰いは嗤いながら告げる。


「お前は、神達がわざとお前を殺し、神界へ招いたとは思わないのか? 神は傲慢だ。世界の存続の為なら、人の命も神の命も平気で利用し犠牲にする。俺はそんな神共を喰らい、俺が管理すると言ってるだけだ! 俺の方が人に優しい神になってやれるぜ」


「お前の言う事は、少しだけ理解できるが、少なくともお前に任せたいとは思わないな」


 その言葉を合図に、俺は教えられた場所へ神刀ゼロを一気に刺し貫く。

 ジェネス様から、神喰いが元は何を司る神であるか聞いている。

 神はその神々によって、体の何処かに神格を宿している。

 神喰いは元食神だ。

 かなり位の低い神で、上位神に料理神や食材神等がいる。

 今言った神全てが、食べると言う事に対しても司っているので、ただ食べるだけを司る食神が消滅しても問題はない。

 そして、食神の神格は、人でいう所の胃がある場所に隠されているとの事だった。

 俺は神刀ゼロに、神気と破壊の力を込める。

 神刀を刺した場所から、取り込んだ力が勢いよく漏れていくのがわかる。

 神刀だからだろうか?確実に歪な神格を破壊したことがわかる。

 そんな中、神喰いが更に言葉を発する。


「がッ! ……なる、ほど。あのジジィが、選ぶだけはあるの、か……。お前も、利用され、て消さ、れるぜ? 俺の様、にな……」


「利用される? どういうことだ!?」


「それを……おしえ、るとおも、うか? まぁ……せいぜい、頑張るこ、とだ、な……」


 そう告げて、消滅した神喰い。

 俺は何処か腑に落ちない感じもしたが、神喰いがジェネス様達を裏切らせたかったのでは?という可能性を考えて、神喰いの言葉を聞き流した。

 そして、あの死神シーエン様の謝罪を思い出し、俺は消滅した神喰いに向けて言葉を発する。


「死神シーエン様の謝罪と涙を見てから言えよ」


 そして俺は、神喰いの利用されて消されると言う言葉を完全に否定した。






「しかし、あまりにも簡単であっけなかったな……」


 俺は、もっと戦いになると思っていたので、かなり拍子抜けしていた。

 だが、異変は直ぐに起こる。

 突如空間が明滅し、揺らぎ、明らかに異常事態が起きていた。

 すぐにこの場から離れる事を怠ったゆえの出来事。

 油断大敵である……。


「ちょ! 何が起こっているんだ!? 神喰いが復活したりしないだろうな!?」


 明滅はどんどん早く、激しくなり、空間の揺らぎが大きくなっていく。

 これはヤバい!そう思った瞬間、何かが壊れるような音が響き、空間は白い光に包まれた。

 突如、身体を打ち付けるような衝撃が走り、封印の地は白い光に飲まれた。

 それと同時に、俺は意識を手放した。




 封印の地が消滅したのであった……。





 気が付くと、白い空間を漂っていた。

 意識はあるが、身体は動かない。

 ここはどこだろう?そう考えた矢先、何か矢印が出てきた。

 矢印は目の前で上を指している。


「なんだこれ?」


 そう呟くと同時に、いくつかの光が人の形を取っていく。

 やがて光は11もの人の形になり、各々声をかけてくる。


「よう人の子。神喰い滅ぼしてくれてありがとうな」

「我らでは、封印しか出来なかったからな。礼を言う」

「さて。詫び代わりと言ったらなんだが、自分たちの残った力をお主にやろう」

「それと、君を神界にも連れて行ってあげるよ」

「封印の地とは言え、世界崩壊の力を受けて生き残ったんだ。おめぇさん、見どころあるぜ」

「僕たちも疲れたからね。力を譲渡して、人として転生するよ」

「伝言を頼めるか?」

「我々は消滅する前に、輪廻転生の儀に向かう」

「我が後継者達よ。これからも世界の管理を頼んだ」

「ジィ様に、力を使った伝言も君に託そう」

「人間よ。願わくば汝が次の生に、幸あらん事を!」

「「「「「「「「「「「では、さらばだ!!」」」」」」」」」」」


 告げるだけ告げると、光の人達は消えてゆく。

 俺は何かに導かれるように白い世界から遠ざかり、別の場所へ抜けた。

 あれは一体何だったのだろうか?

 そう思いながら、俺は自分の意思とは関係なく、白い世界から離れてゆく。

 先程見た、矢印の方向に向かって。

 暫くして、完全に白き世界から抜ける。

 そして、ある程度離れると、白き世界は消滅した。






 そして、俺は再び意識を手放した……。

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