最終話 ケットシーの直感
「おじさん公認てこと?」
「うん、文ちゃんと付き合ってることに前から気付いてたって」
嬉しいことに進級しても由香と同じクラスだった。
「しかもプロポーズまで…」
「ち、違うよ。そういうのは、…将来ちゃんとするって言ってくれたから」
「美哉は16歳だし、文治郎先輩が18歳になったら結婚できちゃうじゃん! すぐだよ!」
ぼん! と音がする勢いで美哉が赤くなった。
「そこに気付いていなかったのね?」
「…うん」
「もう! 美哉は可愛いなあ。おじさんは前から気付いてたけど知らんぷりだったの?」
「それが…付き合いだしたのは最近だと思ってるみたい」
「…中学の時は、もう付き合ってたよね」
「うん」
「最近ていつ頃?」
「この前の夏休み。“花火大会に何かあったのは分かってるにゃ。浴衣マジックにゃ。でも詳しい報告は聞きたくないにゃ” …って」
「花火大会で何か変わったこと、あったの?」
「何もないよ…パパがケットシーの直感で分かるにゃって言うのは、いったい何のことなのか…」
謎だが、下手に深掘りして騒動を起こしたくないので黙っていることにした美哉だった。
*******
一方その頃の文治郎は…
「という訳で、おじさんに認められた! もう隠れてコソコソ付き合う必要が無くなった」
「お前らが、いったいいつコソコソしてたんだよ!」
「いつも堂々とイチャついてただろうが!」
文治郎も教室で、
「いや、だいぶ遠慮していたぞ?」
「あれでかよ…毎日、送り迎えして、手を繋いで自覚なしか…」
「手を繋ぐのは美哉が迷子にならないようにだ。幼稚園でも特に注意するよう言われてたからな」
「当時はそうだったかもしれないけど、今は必要無いだろ。残念なイケメンだって知ってたけど…お前バカだったんだな…」
剛は高校からの付き合いなので見慣れていなかった。
「俺は小学校からの付き合いだから、この2人のバカップルぶりは見慣れてるけど、それでも当時から目立ってたからな。お前が告白される度に美哉ちゃんが拗ねて怒って。美哉ちゃんにラブラブな視線を送った男にお前が攻撃したりするから、巻き込まれないように避けられてたからな? 遠巻きにされてた自覚ある?」
直之は小学校からの付き合いなので2人の事情に詳しい。
「剛は短期間でコロコロと彼女が変わるのダメだぞ! 直之も早く彼女が出来るといいな!」
しかし浮かれた文治郎は、2人の話を聞いていない。
「くそ…ムカつく奴だ」
「俺たち、何でこいつと友達なんだろうな」
今までと変わらない2人は、これまで以上に学校でもイチャコラと遠慮が無くなり、文治郎や美哉に交際を申し込む生徒は現れなかった。
一年先に卒業した文治郎は、高校三年生になった美哉の学校生活が心配で仕方なく、可能な限り美哉の送り迎えをし、美哉を喜ばせた。
しかし、サッカー部の後輩たちに、美哉の学校生活をスパイさせていたことが美哉にバレて怒られた。
本人たちは破局の危機だったというが、周囲の友人たちは、イチャイチャしやがって…とまったく本気にしていなかった。
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