第69話 宗一郎の進路相談から正宗の爆弾発言
宗一郎が1人で遊びに来た。入学祝いのオロビアンコのボディバッグが似合っている。
もちろん宗平には内緒で来た。
「この間は宗平にブロックをありがとうにゃ。でもやっぱり宗平には部屋に籠もっての1人遊びが無理みたいにゃ…」
「そんな気はしていたにゃ」
「でもブロックは大切にしてるにゃ。棚に飾ってるにゃ」
「役に立てなくてごめんね、期待するだけさせちゃって…」
「そんなことないにゃ。いい夢を見せてもらったにゃ」
── 宗一郎が遠くを見つめる。
宗平はプレゼントのブロックを棚に飾って、これまで通り暴れ回っているらしい。
「あのね、今日はいろいろ教えてもらいたくて来たにゃ。高校も獣人学校に進むか、普通の高校を受験するか悩んでいるにゃ…もし受験するなら、今から準備しないといけないだろうにゃって」
今日は正宗&美哉に加えて文治郎もいる。
「私と文ちゃんはずっと公立で、これまで塾も通っていなかったんだけど」
「俺は進む方向が決まってるから。大学受験に向けて春から予備校に通い始めて感じたのは、やっぱり受験のプロに頼るメリットはあるなって。受験対策もできるし気持ちも余裕が出来る」
「私も大学は工学系に進みたいんだ。文ちゃんと同じ予備校に通う予定」
「宗一郎は、将来目指すものはあるにゃ?」
「僕は弁護士になりたいんだにゃ」
「どこの国の弁護士?」
「そこで悩んでいるにゃ」
「日本の弁護士になるなら日本の大学にゃ。獣人学校から受験するより普通学校の方が有利にゃ」
「やっぱり、そうにゃ?」
「それは間違いないにゃ」
「宗一郎君は日本で弁護士になりたいの?」
「今のところニュージーランドにゃ…」
毎年、夏の3ヵ月をニュージーランドで過ごしている宗一郎らしい答えだった。
「弁護士になりたい思いは変わらないにゃ。これは大人になっても変わらないと思うにゃ。でも、どこの国を拠点にするかは分からないにゃ。…その、それはパートナー次第にゃ? 僕は、よくガールフレンドが変わるにゃ。ニュージーランド以外の国で運命の恋人に出会うかもしれないにゃ。でも今のガールフレンドはニュージーランド人にゃ。今は遠距離恋愛なのにゃ」
── 予想外だった。超予想外だった。
宗一郎はモテる。まず容姿が優れている。超可愛い猫ちゃんだから当然モテる。
宗平の面倒を見てきただけあって我慢強く面倒見がよくて性格が良くて容姿が優れているのだから、そりゃあモテモテだ。
でも、こんなに可愛い宗一郎のお
「勘で決めたらどうにゃ? それで違うなって思ったら、そっちの国でも資格を取ればいいにゃ」
「やっぱり、それしかないかにゃ。かなり大変にゃ」
「美哉ちゃんは、文治郎が外国で暮らすとなったらついて行くにゃ? 文治郎は、美哉ちゃんが外国で就職するとなったらついて行くにゃ?」
「な!ななななな…」
「どっどどどどどどどど!」
正宗に2人が付き合っていることは内緒なのに正宗から核心をつく質問が飛び出して美哉も文治郎も動揺を隠せない。
「やっぱり2人は付き合ってるの?」
「そうにゃ」
宗一郎の質問に勝手に正宗が答えている。
「パッ! パッパパパパパ…」
「お! おおおおおおじさんは美哉が誰かと付き合うの反対じゃないのか? 俺でいいのか?」
「それは淋しいにゃ。でもそれは小学校の卒業式や中学校の卒業式で感じた淋しさと同じ淋しさにゃ。でも淋しいだけじゃなくて、それは美哉ちゃんの成長の喜びでもあるにゃ。
小さな頃から一緒に育ててきた文治郎もいい子にゃ。他所の子なら許さないところだけど文治郎なら仕方ないにゃ。反対する理由が見つからないにゃ」
「おじさん…」
「淋しいにゃ…」
正宗がポロポロと涙をこぼす。
「パパ! 私もパパのことが大好きだから!」
「にゃあ…」
正宗が美哉を抱きしめて泣きじゃくる。
「おじさん。俺は両親のサロンの経営を引き継ぐし、その為に大学卒業後は美容師の資格も取る。大学での勉強を活かした就職をメインの職にするか美容師がメインかは、まだ分からないけど日本で生きていくし、ここに住み続けるし、ずっと美哉のことが好きだ。おじさんのことは実の親より親だと思ってる。美哉ともおじさんとも離れるなんて考えたことない」
「私も。文ちゃんとパパとずっと一緒に暮らしたいな」
「文治郎…美哉ちゃん…」
将来の3人暮らしが決まった…というか、これまで通りの生活が、これからも続くだけなので泣く必要はない。まったく無い。
この家に住み、正宗と美哉と文治郎の3人で料理してご飯を食べて、3人でちょくちょく露子のお墓参りに行くのだ。何も変わらない。全然淋しくない。
可愛い顔して女の敵で男の敵だった宗一郎は『悩ましいにゃあ』と言って帰って行った。宗一郎の将来が心配だ。
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