第52話 時宗15歳

宗平そうへいがちっとも言う事を聞かないにゃ…。宗一郎が赤ちゃんの時と全然違うにゃ…。まだ言葉も通じないから困っているにゃ…」


ぐったりと疲れ切った時宗ときむね宗一郎そういちろうを連れて遊びに来た。


去年生まれた末の弟がやんちゃ過ぎて、15歳の時宗と8歳の宗一郎が毎日振り回されて疲れ切っている。

獣人の1歳は人族の3歳くらいの悪戯をやってのける。体力もあり、身体能力も高いのでやっかいだ。


「同じ頃の美哉ちゃんも宗一郎も、とっても良い子だったにゃ。宗平は誰に似たにゃ?」

吉宗よしむね兄さんに似たに違いないにゃ。連絡はしておいたから2人とも今日は泊まるにゃ」

「ありがとうにゃ、叔父さん」

「ありがとうにゃ」


時宗は15歳で中学三年だが獣人学校はエスカレーター式で受験がないので、比較的のんびりしている。

美哉は小学校六年生だが受験をしないし宗一郎は8歳だ。この週末はゆっくりと休めるだろう。


「晩ご飯は文治郎も来るにゃ、仲良くするにゃ」

「あの男の子にゃ、覚えているにゃ。いま中学生だったかにゃ?」

「うん、文ちゃんは中一で部活があるから帰りが遅いの。明日は土曜日で部活が無いから家で一緒だよ」



「あれ、叔父さんのスマホがブルブルしてるにゃ」

「どうせ吉宗兄さんと志津ちゃんにゃ。自分の子供の世話は自分でしろと言ってあるから無視で良いにゃ。

兄弟として出来る範囲を超えて宗平のお世話を押し付けられるようなら、ウチから学校に通えば良いにゃ。無理して帰る必要はないにゃ。子供のお世話と躾は親の責任にゃ」


「でも宗平は僕らの弟だしにゃあ…」

「それに眠ってると可愛いにゃ…」

ただし起きている時は悪魔だ。


「宗平も大切だけど時宗と宗一郎の健やかな成長も大切にゃ。いまの2人は育児疲れでボロボロにゃ。成長期の子供たちが、そんな風に疲れるのはダメにゃ」


家族4人で目を離さないようにしているが、宗平の暴れっぷりは半端ない。基本的に手のかかる子供がやらかすことは全部やる。毎日やる。その上でオリジナルのいたずらをやらかす。


今週のオリジナル悪戯は…


・ テーブルの上に出してあるものをすべて床にぶちまけた。調味料と郵便物とその他が混ざって現代美術のようだった。


・ 早朝にキッチンのシンクに入ってお風呂ごっこ。布巾で栓をして水を出しっぱなしでキッチンの床が水浸し&割れた食器が散乱。


・ 家族が疲れ切って目を離した隙に脱走。3時間後に2つ先のバス停付近で捕獲。


・ 母の志津が大切にしていた花壇の花を全部抜いて脱走。商店街の路上でお花屋さんごっこ。


まだ1歳だが、身体能力の優れた獣人なので人族の1歳が出来ないことも、やってのける。


「昨日父さんがプライムでペット用のゲージを発注していたにゃ」

「きっともう届いているにゃ」

「ちょっと虐待っぽいけど、宗平くんの安全のために必要だね」

「美哉ちゃんが、そう言ってくれると気持ちが楽になるにゃ」


「そう上手くいか無いみたいにゃ」

「パパ?」

「兄さんからLINESにゃ。兄さんがトイレに行く間だけと思ってゲージに入れたら、ゲージごと外に出ようとして家具を破壊しまくったそうにゃ」

「宗平…」

「あいつ…」

時宗と宗一郎が青ざめる。


「壊れた家具の破片を片付けないと危ないから、ゲージに入れたまま片付けていたら、超特大のボリュームで泣き出して鼓膜がビリビリして気絶しそうって書いてあるにゃ。

今もまだ泣いてるらしいにゃ。泣き声を聞いたご近所さんと警察が駆けつけて、破壊された室内を見て呆然。ボロボロな兄さんと志津ちゃんを手伝ってくれてるそうにゃ。良かったにゃ」

「…。」

「…。」


「2人はしばらく家で暮らすにゃ。兄さん達には僕から連絡しておくにゃ」



正宗の元で心と身体を癒した2人の“正宗叔父さん大好き”が加速した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る