第42話 クリスマスツリー

「ちょっと早くにゃいか?」


レイクタウンデートでクリスマスのイルミネーションを見た美哉がクリスマスツリーを出そうと言い出した。


「そんなことないよ! せっかくきれいに飾るんだから長く楽しみたいもん」

「それもそうにゃ。美哉ちゃん、このオーナメントもきれいにゃ」

まだ早いと言いながら、美哉と一緒に飾り付けを楽しむ正宗。


今年のクリスマスツリーは青系の飾りとゴールドの飾りで仕上げた。


「ずいぶん大人っぽいツリーだな」

「美哉ちゃんと僕のセンスにゃ!」

まだ早いと言っていた正宗が偉そうだ。


「いいと思う。センスが良い。あと晩飯出来たから」

美哉と正宗がキャッキャしている間に文治郎が夕飯の支度を終えた。


「ありがとうにゃ」

「任せちゃってごめんね」

「いや問題ない」


レイクタウンデートのついでにコストコホールセール新三郷倉庫店に寄って買い物をしたので、火を通すだけのプルコギでお手軽に夕飯だ。今日買ったその他の食材は2人のお弁当や夕飯であっという間に消費する見込みだ。


「僕の好きなコスコのプルコギにゃ。残り野菜を足してくれたにゃ。悪くなる前に食べないとと思っていたから助かるにゃ」

少し古くなっていた野菜を全部入れて使い切ったようだ。


「少し取り分けて肉じゃがを仕込んだから明日の晩飯で食おう。明日は味が染みて美味い」

「文治郎が僕の胃袋を掴んで離さないにゃ」

「俺はおじさんの真似してるだけだよ」

「照れるにゃ」


「2人はそろそろ期末試験にゃ?」

「うん、文ちゃんのアドバイスとか過去問とか、助かってる」

「期末試験が終わったら美哉ちゃんはパパとお買い物に行くにゃ!」

「何かあるの?」

「美哉ちゃんにクリスマスのプレゼントを買うにゃ。欲しいものを考えておくにゃ」


愛娘の美哉にプレゼントを贈るのも一緒に買い物するのも楽しみで仕方ないようだ。

「ありがとうパパ」


「文治郎は今年も年末年始はサロンの手伝いかにゃ?」

「ああ、晴れ着の着付けやセットの予約が結構入っているらしいから。大晦日よりも年が明けてからの方が忙しくなると思う」

「大晦日の営業が終わったら健太郎と咲を連れてくるにゃよ」

「いつもサンキュ」


忙しい健太郎と咲に年越し蕎麦を振る舞うのが大晦日の恒例なのだ。


長年、自分たち家族に良くしてくれる正宗に内緒で美哉と付き合っていることが、ちょっと居心地悪く思えて仕方ない。文治郎が気まずい思いで正宗を見る。


「ところで美哉ちゃん、今日はウェイウェイしたクソガキに絡まれたりナンパされたりしていないにゃ?」

「大丈夫だよパパ、文ちゃんが一緒だったし」

「文治郎、もしも美哉ちゃんに手を出そうという不届きなウェーイがいたら縦に裂いて2本にしてやるにゃ」


── 美哉と付き合っているのが自分だと、絶対に言えないと思う文治郎だった。


いったいナニを裂くのか怖くて聞けないし、ペアネックレスについて、後で美哉とよく話さなければと思った。

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