第15話 ママのお墓参り
「今日も暑いにゃあ…」
「来週はお盆だから、秋はすぐそこだよ」
「待てにゃい…今すぐに涼しくなって欲しいにゃあ……」
秋までとても待てない正宗が無茶を言う。
「朝早く出てきて良かったね」
正宗のために朝の5時過ぎに家を出た。お墓の掃除を終えた今はまだ6時だ。7時前には帰宅して水風呂に浸かりたい。
「今日のお花は露子ちゃんの好きだった向日葵にゃ」
可愛らしいブーケをいける。
「パパ、お線香もどうぞ」
「ありがとうにゃ」
普段からお仏壇にお花やお供えを欠かさないが、頻繁に通ってお墓も綺麗にしている。
「美哉ちゃんの成長を見守って、孫に囲まれて孫の成長を、思う存分見守ったら僕もこのお墓に入るにゃ。露子ちゃんをあと50年くらい待たせると思うけど、しょっちゅう来るから許してにゃ」
「私もパパに長生きしてもらって、ずっと側にいてほしいな」
「美哉ちゃんは可愛くていい子にゃあ」
正宗の目とヒゲが波型に崩れる。
「おはようございます、お早いですね」
お寺で借りた桶などを片付けていると住職が現れた。
「朝早くからご苦労様ですにゃ」
「正宗さんと美哉ちゃんも。正宗さんはかなり頻繁に通われているのでしょう?いつも新しいお花をお供えされていて、奥様は幸せですね」
「露子ちゃんに寂しい思いをさせる訳にはいかないにゃ」
「でも気をつけてくださいね」
「何かあったにゃ?」
「……実は…最近お化けが出ると噂が立ってしまって」
「お化け?人魂とか幽霊かにゃ?」
「目撃者の話によると立ち耳で立派な尻尾の巨大な動物霊のようなんです。目撃情報が寄せられたのは暑さが厳しくなってからで、よく夜に現れるようです。警戒して見回っているのですが、まだ遭遇出来ていないので対策も出来ていないのです」
「それは心配にゃあ。美哉ちゃんは1人で来ちゃダメにゃ!」
「檀家の皆さまにご心配をお掛けして申し訳無いです」
「いやいや、住職も忙しいのに頑張っているにゃ。この前会った時も見回りかにゃ?」
「そうなんです、この前正宗さんたちに会った夜も目撃情報が寄せられまして…」
「そうにゃ?」
「ええ、さらにその前に正宗さんに会った夜も」
「けっこう頻繁に出ているにゃ。でも、もし幽霊が露子ちゃんなら連れて帰りたいにゃあ」
正宗が両手を頬にあてて夢見るようにつぶやいた。
「こんなに愛されて幸せな奥様が化けて出るなんてあり得ないですよ」
「それは残念にゃ。夏の間は暑過ぎるからお墓参りは早朝か夜、…夜が多いにゃ。僕らは夜でも人族より目が見えるから。よく夜にお参りしているので気をつけて見てみるにゃ」
「ありがとうございます、でも無茶はなさらないで下さいね」
怖いねえ…と言いながら立ち耳で立派な尻尾を持つ巨大なケットシーの正宗と猫耳と猫尻尾を持つ愛娘の美哉が帰っていった。
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