安楽死に走る難病患者
近衛源二郎
第1話 そして彼女は、安楽死を選んだ。
『そして彼女は、安楽死を選んだ。』というスペシャル番組が昨年放送された。
某国民的公共放送局のスペシャル番組として。
とてつもなくショッキングな内容と不適切な意見の数々。
安楽死を選んだ患者は、当時52歳多系統萎縮症という神経難病で、ほとんどの身体機能は失われていた。
もちろん、自力では生きていくことは不可能である。
各方面で賛否両論、大きな波紋を呼んだ。
だが、日本人の難病患者が安楽死を希望する人数は、年々増えている。
現在、日本人が安楽死を選ぼうとしても、日本では、認められていない。
国内で認められていない以上、外国でということになるのだが。
現在、外国籍の人間の安楽死を受け入れている国は、スイスしかない。
そのスイスですら、外国人が安楽死できる団体は2団体しかない。
しかも、団体に加入するためには、様々な条件をクリアする必要がある。
① 人生を続けることが、死ぬこと以上の苦痛であること。
② 家族・親族の理解が、完全に得られていること。
③ 苦痛を取り除く方法が、他にないこと。
④ スイス国内での安楽死になること。
⑤ 安楽死と言えども、スイスでも、扱いは自殺になるということ。
⑥ 安楽死することを、スイス警察に説明できること。
⑦ 団体の入会金が約50万円と、渡航費用と安楽死までの滞在費用等々、だいたいですが約200万円の費用がかかるということ。
とんでもなく高い壁だと思いませんか。
そして、無事に安楽死できたとしても、日本では、位牌の持ち込みが認められていないため、日本でお墓が造れないこと。
火葬された灰は、川に流されます。
孤独死した無縁仏みたいな死に方になるんです。
その悲しさが、どれほど大きなものなのかは、理解できます。
もちろん、患者本人は、苦しみ抜いて、その苦しみから開放されますが、家族の気持ちは、本当に、それで良いのでしょうか。
様々なガンには、緩和ケアという病院の制度が利用できますが、神経難病には許されていない。
緩和ケアという制度は、末期ガンの患者が、治療を止めて、極力苦しまずに最後を迎えるために創られた、いわば消極的な安楽死というべき制度ですね。
末期ガンですから、耐え難い痛みに襲われかねませんね。
そういう痛みや酸素吸入を24時間絶え間なく行うことを目的にします。
神経難病の患者は、長期間痛みや呼吸の苦しみと闘いますが、自宅での24時間ケアすら、なかなか認定されるものではありません。
神経難病の登録や登録の継続に保健所に伺うと、自殺防止の会の方々に話し掛けられます。
増えているんだそうです。
小さな絆創膏が数枚入った資料を手渡されます。
電話番号がずらりと記載されてました。
神経難病の病名を告知された患者の自殺が増えているんだそうです。
自身が、近い将来、どんどん動けなくなる。
寝たきりで、何年も天井しか見えない人生になる。
言葉は、話せなくなる。
食事は、お腹に穴を空けて直接胃にチューブを通して流し込む流動食。
もちろん、味は感じない。
食事をすれば、当然排泄もあるが、ベッド上での、垂れ流しになる。
小用に関しては、尿道カテーテルを留置してビニールの袋に貯めるという方法で、下着やベッドが濡れることは少ない。
しかし、大便となると、紙オムツでの垂れ流しになる。
これが、床擦れの引き金になる。
お尻や背中の皮膚がタダレたりカブレたり、酷い場合は破れます。
小さな擦り傷ですらかなり痛いですよね。
お尻から背中にかけた大きな擦り傷が、どれほど痛いのか、想像してみて下さい。
神経難病には、筋肉が萎縮していくもの。
ALS等の筋萎縮症。
神経伝達ができなくなるもの。
脊髄小脳萎縮症等があります。
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