ぼっち高校生の俺にできた初カノが『童顔なのに少し大人っぽい大学生』なんだが、同時に俺の『先生』でもあって色々ややこしい件について
九条蓮@MF文庫J『#壊れ君』発売中!
第1話・高校の文化祭に大学生で"先生"のカノジョが現れた件
学校中が浮き足立っていた。
校舎の中庭では、模擬店がたくさん出店されており、各教室ではそれぞれのクラスが出し物を催していた。
今日文化祭だった。普通の高校の、普通の文化祭だ。
うちのクラスの出し物は、焼きそば屋。これまたどこの高校にでもある普通の出し物だ。それでも、クラスの連中は、それがさも特別なものであるかのように、気合を入れて模擬店を運営していた。
そんな自クラスの連中を渡り廊下から見下ろしながら、俺は大きなため息を漏らした。
彼らにとって、この空間は、特別だ。彼らの記憶では輝かしい思い出となって、きっと何年後かの同窓会で語り合われるのだろう。
しかし、きっと俺は彼らの思い出話の中には登場しない。俺はこのクラスの行事に殆ど参加していないからだ。
現在、高校3年生。もう受験まで数か月しかない時期に、そんなごっこ遊びに時間を割いている余裕はない。文化祭の準備期間は予備校で自習していたし、文化祭当日である今日も、本当は予備校に行く予定だった。
それなのに、彼女から『文化祭デートがしたい』という連絡が入り、学校に来る羽目になっている。
「おい、ユウスケ! 2年の茶屋、可愛い子揃いで浴衣姿なんだってよ。いかねーか?」
茶髪で軽そうな男が話しかけてきた。数少ない友人のケイタだ。
ケイタとは同じクラスで、1年からの友達だ。彼もこういったイベント行事を手伝うのはあまり好きではないらしく、模擬店の手伝いを抜け出してきたようだ。
「いや、ちょっと待ち合わせしてて」
そう答えると、ケイタが首を傾げた。
「待ち合わせ? お前が?」
「まあ」
「へえ。女か?」
「⋯⋯バカ、ちげーよ」
一瞬息が詰まって、返答が遅れてしまった。
ケイタはそこから何かを察したのだろう。ニヤついた顔を見せて、「あとで紹介しろよな〜」と笑いながら、その場を後にした。
『バカ、ちげーよ』が聞いて呆れる。言い逃れができないほど、彼の指摘は図星だったのだ。
「誰がお前になんか紹介するか。ていうか誰にも見られたくねー⋯⋯見られると色々やべーんだよ」
正直に言うと、この後の展開に関して、嫌な予感しかしない。できるなら彼女には来ないで欲しい。しかし、そうであったとしても、俺は彼女のお願いには逆らえないし、こうして連絡が来ることを今か今かと待ち望んでいる。
そんな時、スマホが震えた。LIMEアプリの通知だ。
ホップアップされた通知をタップすると、トーク画面が表示された。
『着いたよ。どこから入ればいいの?』
うさぎのキャラクターのスタンプと共に、メッセージが表示された。
俺が待ち望んでいた人からの連絡だったが、会える喜びと緊張が鬩ぎ合う。
『玄関から普通に。スリッパに履き替えて待ってて』
俺はそう返事を送って、階段を降りて生徒玄関に向かった。急ぐつもりなんてないのに、急ぎ足になってしまう自分がもどかしい。
生徒玄関では、一人の女性があたりを見渡していた。黒くてサラサラな髪は肩で切り揃えられていて、見ると思わず撫でたくなってしまう。
その女性は童顔で背が低く華奢なので、一見すると未成年に見えなくもない。しかし、よく見ると、メイクや佇まいが大人っぽく、OLの私服のようなカジュアルな服装からも、彼女が未成年ではない事が伺えた。
「あ、ユウくん!」
女性が俺を見つけると、笑顔で小さく手を振って駆け寄ってきた。その動きが小動物みたいにぴょこぴょこしていて、思わず頬が緩んでしまう。
「待たせちゃった?」
「大丈夫」
「ごめんね、駐車場で車停めるのに手間取っちゃって」
「ちゃんと駐車できた?」
「バカにしないでよ。今日はちゃんと停めれたから」
彼女は、真中ハル。21歳の大学3年生で、付き合って3か月目になる俺の恋人で、そして⋯⋯
「ていうか、まさか本当に来ると思わなかったよ、先生」
「だって、そうしないとユウくん、文化祭サボってまた予備校に来るでしょ?」
「そうだけど」
「高校生は、ちゃんと高校生しなさい。先生からの命令です」
俺の先生だった。
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