第96話◇ハイドブレストの誕生

◇隠れ里に戻った主人公、ドリンの視点に戻ります◇



 隠れ里、白蛇女メリュジンの住んでるところ。

 雨も降らない嵐も来ない地下の草原では、家は無い。囲まれた壁の中、家の中で生活するという習慣の無いのが白蛇女メリュジン

 それもあってか服も着ない。ここには雨も降らないし、女しかいない種族の白蛇女メリュジンの羞恥心は俺達とは違う。

 それでも最近は料理するときとか、踊る子馬亭で給仕するときにエプロンをつけるようにはなったか。

 それはそれで目隠しに裸エプロンという、いかがわしいものになってしまったが。


 草原の上に敷物を敷いてそこに机とか本棚とかがある。下半身が蛇体なので椅子は無い。ベッドというものも無い。

 敷物の上に畳んだ布団とかある。肩からかける長い飾り布を、並べて下げてるのがクローゼット代わりというところ。

 そこに新しく並んでるのは目隠しかけだ。

 そんな白蛇女メリュジン住居の1角、机を並べたところに白蛇女メリュジン黒浮種フロートが集まってる。

 俺はそこに近づいて、仕事をしている男に尋ねる。


「ノクラーソン、どうだ?」

「どうだと言われても、なにがなにやら」


 椅子は無く、あぐらを書いて敷物に座り机の書類を見てるノクラーソンが、眉間に皺を寄せて言う。


「もと貴族であっても国を相手にどうするかなど、私ひとりではどうにもならん」

「ノクラーソンひとりで全部しろってことじゃ無い。白蛇女メリュジン黒浮種フロートができるように、ちょっと手伝ってやればいいんだ」

 

 ノクラーソンの正面に座って書類を見る。周りでも白蛇女メリュジン黒浮種フロートが書類を見ながら、なにか書いたり計算してたりしてる。


「計算とかは黒浮種フロートに任せて、人間ヒューマンが取り引きとか契約とかで、どこで嘘ついて何をごまかそうとするか、というとこをチェックしてほしいんだよ。これとこれは白蛇女メリュジンに任せちゃえ、はい」


 近くにいた白蛇女メリュジンに、手にとった書類を渡す。

 黒浮種フロートの作る新しい紙と筆記具はエルフの森でも人気出そうだ。


 今後は白蛇女メリュジンがエルフ同盟と交流して俺達はそのお手伝い。とは言ってもこれまで5千年素朴な生活をしてたから、いきなり国家間交渉なんて難しいだろうし。

 それでノクラーソンに先生してもらっての勉強会というところ。

 小人ハーフリングルノス、それとノクラーソンを部隊パーティに入れてた探索者部隊パーティ小姉御ちいさなあねさんのメンバーが手伝ってる。

 そこにサーラントとディグンと様子を見に来たところ。

 ノクラーソンが頭をかいて、


「私に国家間交渉など専門外だぞ」

「大迷宮監理局、財宝監査処の所長だろ。大雑把に組織の骨組みを作ってくれたら、あとは当人に考えてもらうということで」

「それは無責任なような」

「もともとノクラーソンが責任をとるところじゃ無いんだ。相談役としてどっしり構えて欲しいとこ。なんだ、心配してたけど楽しそうじゃないか」

「やる気の無い三流貴族のボンクラと違って、みんな素直で元気というのがいいな。黒浮種フロートは計算も早いし、白蛇女メリュジンは知識が追いつけば交渉ごとも有利な種族だろう。いざとなれば視線の魅了チャームがある」

「お? ノクラーソンにしては珍しいことを言う」

「後々のことを考えるとその場だけをごまかす魅了チャームは使うべきでは無いが、奥の手があるというのは安心材料だ」


 今ここにいる白蛇女メリュジン黒浮種フロートが外交官候補というところ。めんどうなことも多いけど地上の他の種族と関わるとこなんで、それを楽しみに頑張ってるみたい。


「それでノクラーソンに聞きたいのは今後の人間ヒューマン西方領域の予想絵図。俺達は人間ヒューマンの国について詳しく無いからな。アルマルンガ王国が無くなったあとはどうなると思う?」

「ふーむ。アルマルンガ王国が消えるのは確定なのか?」

「今はそういう流れで動いている。人間ヒューマン西方領域はアルマルンガ王国の支配地なんだろ?」

「実質、支配地だった、ということになるのか。正確には西方10王国同盟なんだが、この同盟の中で1番強いのがアルマルンガ王国だ。他の9王国はアルマルンガ王国の言いなりでな」

「それで同盟といえるのか? それ。アルマルンガ王国が支配してるのとは違うのか?」

「説明が難しいな。人間ヒューマン領域で貨幣を発行してる国はふたつ。中央の神聖国家ロードクルスと西方はアルマルンガ王国。西方で流通する貨幣の発行と管理をしてるのがアルマルンガ王国なのだ。これは西方の経済圏を支配してるのに等しい。それで他の9王国はアルマルンガ王国に逆らえず言いなりだったわけだ」

「貨幣の発行管理ってそんなに権力あるのか。あ、みんなちょっと集まって、ノクラーソン先生の授業が始まるから」

「「ハーイ」」


 ゾロゾロ集まってノクラーソンを囲む白蛇女メリュジン黒浮種フロート

 改めて説明すると白蛇女メリュジンは肩から飾り布を下げてるだけで真っ裸。かろうじて飾り布で乳首が隠れてるぐらい。

 ノクラーソンが白いおっぱいに囲まれてるわけだ。ディグンがそれを見て、


「ノクラーソン、おっぱいパラダイスじゃないか。役得だな」

「う、む、むむぅ」


 顔を赤くして視線をキョトキョトさ迷わせるノクラーソン。

 視界におっぱいが入らないように逃げてるカイゼル髭。お前なぁ。


「ノクラーソン、まだ白蛇女メリュジンの裸に慣れないのか? いつまでも思春期少年みたいにモジモジするな、気持ち悪い」

「やかましい、簡単に慣れるものか。あっちもこっちもおっぱいおっぱいなんて。白蛇女メリュジンはみんな美しくて目のやり場に困る」


 ノクラーソンの言葉にきゃあと喜ぶ白蛇女メリュジン

 机の上にノスフィールゼロを乗せて、と。

 ノクラーソンにはノスフィールゼロを見ながら説明の続きをしてもらう。


「ノクラーソン、これでいいか?」

「助かる、ドリン」


 ノスフィールゼロは首を傾げる。


「発情期が固定期間では無ク、いつでも性交可能で性欲が本人の管理下から外れそうにナル。人間ヒューマンはたいへんなんでスノ?」

「ノスフィールゼロ、私は黒浮種フロートほどに理性的では無かったようだ」


 がくりと落ち込むノクラーソンの肩を近くの白蛇女メリュジンが叩いて慰める。

 慰めてるつもりでおっぱい近づけて追い討ちになってるんだが、それ。

 おもしろいからそのままでいいか。

 ノクラーソンが咳払いして、


「話を戻すぞ。貨幣を発行して管理をしてたアルマルンガ王国が、実質人間ヒューマン西方領域の支配者だった。これまでは」

「アルマルンガ王国が無くなったあと、もとエルフもどきの希望の断罪団が、そこに新しく国を作る予定なんだ」

人間ヒューマン西方領域がどれだけその希望の断罪団を脅威に感じるか、なのだが。おそらく10王国同盟はアルマルンガ王国を捨てる」

「10王国同盟の支配者的存在なのに?」

「残りの9王国が生き残るためには、悪魔召喚の責任をアルマルンガ王国ひとつにとらせて、自分達は無関係だと主張するだろう。全ての罪咎をアルマルンガ王国に被せて、生け贄と差し出すことだろうな」


 サーラントが首を傾げる。


「10王国が力を合わせて、希望の断罪団に立ち向かうということは無いのか?」

「そうさせないように希望の断罪団に多種族連合軍の勇士がいるのだろう? しかもドルフ帝国のカノンを持つ兵団赤まで参加しているという。異種族が人間ヒューマン領域に攻めてはこないと考えていた国から見れば、悪夢だろうな」


 俺達が人間ヒューマンの領域を攻めても、得られる物は無い。神の加護の無い土地を奪っても守るのが難しいだけ。

 地下迷宮のある街を奪っても防衛し続けることができないから、やらなかっただけ。

 だが今回ばかりはそうはならない。


「多種族連合軍の戦力で襲って、あとの統治は希望の断罪団にさせる、か。古代魔術鎧アンティーク・ギアカノンで潰されるなら人間ヒューマンに抗う戦力は無い。それから逃れて助かろうとする国は、喜んでアルマルンガ王国を差し出すだろう」

「沈む船からはさっさと逃げ出すのは、賢い選択かな」

「更には、悪魔の召喚など許せん、アルマルンガ王国許すまじ、と言って協力を申し出る国も出るだろうな。それは異種族では無く、同族の希望の断罪団に協力するということで。その陰で希望の断罪団と交渉するつもりで。協力する代わりにアルマルンガ王国跡地の領土を分けてくれ、とか」

「なんとも逞しいことだな。だが、それが人間ヒューマンか」


「その後はアルマルンガ王国が無くなったあと、代わりの貨幣を作る国が現れるか、中央領域の貨幣を使うようになるかは、解らん。他の国が作ったところで、これまでの貨幣シードのように使えるかどうか。なにより貨幣の価値を支えた国が無くなり、日常で使えていた貨幣がいきなり無価値になるなど、前代未聞だ。金貨を鋳潰しても10分の1の価値の金しか取れない。貨幣の価値の信用が無くなる事態は、人間ヒューマン中央領域にも波及するだろう。私ではこのあたりが想像の限界だ。私に解るのはこれから西方領域の流通は物々交換になるだろう、というところだ」

「そうなれば俺の思惑どおり。ただ、希望の断罪団と人間ヒューマン西方領域の争いがどこまで広がるのか。ノクラーソンの話だと意外に早く収まりそうだ」

人間ヒューマンとて被害が増えるだけの状況からは逃げる。これまでの戦争は異種族が攻めてこないことが前提の人口減らしだからな」


 少しばかり人間ヒューマンの事情も解った。こういうのは人間ヒューマンに聞かないと解らないことだし。


「戦争の理由はそれだけでスノ?」


 机の上のノスフィールゼロが聞いてくる。


人間ヒューマン中央領域が西方領域に戦争をさせる理由ハ、人口増加と食料不足だけでスノ?」


 ノクラーソンが首を傾げる。


「他に思い付くところは人間ヒューマンの領土欲、侵略欲くらいだが」

「でスガ、勝てる見込みの無い戦争は侵略では無いのデハ? 黒浮種フロート人間ヒューマンの貨幣経済を考察してみましタノ。資料をまとめているところでスガ、中央領域にとっては西方領域の戦争ニ、人口削減のついでの目的がアル、と推測されまスノ」


 戦争の目的? 百年に1度の人間ヒューマンの人口減らしの戦争に、ついでの、他の目的?


「ノスフィールゼロ、ちょっと詳しく話してくれないか?」

「ハイ、でスガ、これは黒浮種フロートだけでは解らないノデ、ドリンさんとノクラーソンさんの知恵を借りたいのでスノ」

「俺とノクラーソンで? ノスフィールゼロがそう言うってことは、黒浮種フロートにとって、論理的じゃ無い分野ってことか」


 ノクラーソンも頷いて、


「解った。私で良ければ協力する。戦争の目的が解れば、百年に1度の戦争も止めることができるのかもしれんしな。その黒浮種フロートの推測についてだが」


 ノスフィールゼロの話には俺も興味がある。どういう考察なのか、それを聞こうとしたとき。


「ノッくーん。お昼のご飯、踊る子馬亭から貰ってきたよー」


 明るい白蛇女メリュジンの声が聞こえてきた。

 ノッくん? 誰?

 振り向くとそこにはノクラーソンの監視役のハズの白蛇女メリュジンフラウノイル。

 両手にバスケットを持ってニコニコ笑ってこっちに来る。監視役のハズじゃ無かったっけ?

 ただ、このフラウノイル、赤いチョッキというかベストというか、服を着ている。

 上だけだけど、肩の見える袖無しの、丈の短いお腹の見える真っ赤なベスト。


 回りの白蛇女メリュジンもざわついている。鎧とエプロン以外を初めて身につけた白蛇女メリュジンフラウノイル。

 フラウノイルに近づいた白蛇女メリュジン達も驚いている様子。


「フラウノイル、どうしたの? そんなの着て」

「うふふー、これはねー、ノッくんがねー」


 ノクラーソンが顔を赤くして立ち上がって、


「お、おい、フラウ、外でその呼び方は」


 ノッくんて、もしかして、ノクラーソンのことか?

 これは詳しく聞かないといけない。目でサーラントとディグンに合図する。理解したふたりは頷いて、素早くノクラーソンを羽交い締めにする。

 部隊パーティ小姉御も興味があるようで、部隊パーティメンバー全員でノクラーソンを押さえて口を塞ぐのを手伝ってくれる。

 部隊長パーティリーダー小妖精ピクシーロスシングが、とてもいい笑顔でノクラーソンの頭の上にいる。

 ふごふごごと呻くノクラーソンはこれでよし。

 視線をフラウノイルに戻すと、なんだかニコニコと幸せそうだ。


「フラウノイル、そんな『服』なんて着て、どうしたの?」

「えへへー、これはね、ノッくんが私に贈ってくれたのー」

「そんなの着て、うっとうしくない?」

「んー、なんか拘束されるような感じ?」

「服がプレゼント? わたしたち白蛇女メリュジンに?」

「それがねー、ノッくんたらねー、えへへー」

「えー、なになに?」

「フラウノイル、もったいぶらないでよ。ノクラーソンがなんて言ってプレゼントしたのー?」

「はやく教えてー」


 両手を頬にあててクネクネするフラウノイル。みんなに押さえつけられてふごごふごごともがくノクラーソン。

 みんな興味津々だ。


「ノッくんがね。『フラウ、私と結婚してくれ』って言うのー。で、『フラウの胸を他の男に見られたく無いんだ』って言って、私にこれをくれたのー」

「「ええーーーー!」」

「だから、ちょっと苦しいけど、これでノッくんが安心するなら、仕方無いかなーって」

「ノクラーソンってば意外と独占欲強いのねー」

「フラウノイルのおっぱい、独り占めにしたいって、ノクラーソンわがままー」

「ええーー、それってなんだかちょっと重たくない?」

「んー、でも、ちょっといいかもー。そんなに想われるっていうのもー」

「そっかなー? 私はいろんな種族とお付きあいしたいけどなー」

「結婚って、いまいちよくワカンナイよね」

「でも、俺のものになってくれ、とか、俺にはお前だけだ、っていうのはちょっと憧れるー」

「だけど、アムレイヤは『そういうこと軽く言う男は、どこでも誰にでも言うから気をつけて』って言ってたよー?」

「ノクラーソンはそーいうのとは違うんじゃない? 私が近づいても必死におっぱいから視線を外そうとするしー」

「ノッくんは1対1のお付きあいが普通の種族だっていうし、ノッくんが慣れるまで、みんなあんまりからかわないであげてねー」

「でも、ノクラーソンって未だに前の奥さんのこと引きずってるみたいだけど?」

「うん、酔っぱらってるときに前の奥さん自慢してるの聞いたことあるー」

「そういう一途なノッくんがいいのよー、可愛いしー」

「えー? フラウノイルってそういう趣味ー?」

「あ、でもノクラーソンは可愛いとこあるよねー」

「からかい甲斐はあるわねー」

「そんなわけで、私のおっぱいはノッくんひとりのものでーす。うふ」

「フラウノイルはそれでいいのー?」

「私達、白蛇女メリュジンが他の種族の習慣に合わせなくてもいいんじゃない?」

「だってノッくん見てると心配なんだもん。私達のために頑張ってくれてるんだから、私が支えてあげないとー」

「わー、フラウノイルって健気ー」

「わかったー、応援するー」

「えー? でもたまにノクラーソンをからかうのは許してくれない?」

「ノッくんは恥ずかしがりやさんだから、あんまりいじめないでね」


 うん、だいたい解った。


「意外に情熱的だったんだな、ノクラーソン」


 振り向くと地面にうずくまって震えるノクラーソンがいた。ピクピクと瀕死の重症を負っているようだ。


「わ、私は、私なりに責任をとろうと、しただけなんだ……」


 大鬼オーガのディグンがうずくまるノクラーソンを見下ろして、


「いろいろ上手くやってるみたいじゃないか? ノクラーソン?」

「これの、どこが上手くいってるというのだ? 私は、もう、死にそうだ……」


 小人ハーフリングのルノスがノクラーソンの背中を叩いて、


「いやいや、見直したぞノクラーソン。そのおっぱいを俺専用にしてくれ、他の男に見せないでくれ、なんて心で思っても俺は口に出して言えない」

「なんだその見直し方は。それでは私が欲望丸出しのおっぱい礼賛者ニストではないか……」


 サーラントが腕を組む。


「己の欲望に対してもマジメかノクラーソン。真摯な男だ」

「違う、違うんだ。欲望だけじゃ無くて、私を支えようと細かく世話をしてくれる、フラウの真心に応えたくて」


 小妖精ピクシーのロスシングがフラウノイルを見て、


「これを知ってしまうとフラウノイルの赤いベスト姿を見たら、『あぁ、あのベストの下のおっぱいはノクラーソンのものか』ってみんなに解ってしまう、ということね。隠れ里のみんなに、『このおっぱい所有者アリ、その名はノッくん』って教えるわけね。やるわねー、ノクラーソン」

「うおぉ、やめて、やめてくれ、そんな、そんなつもりじゃ無いんだ……違うんだ……なま暖かい視線で私を見るな……」


 天然か、ノクラーソン。やるときはやる男だったんだな。俺も見直した。

 お前が隠れ里に来てくれたことに感謝する。

 これからは赤いベストを着たフラウノイルを見ただけで、愉快な気分になれそうだ。

 机の上にはバスケット。ノクラーソン用のお昼のお弁当。俺はそのバスケットをノクラーソンの近くへと運んで、


「ノクラーソン、とりあえずお昼のご飯にしたらどうだ? 食べながらでいいから、ノッくんとフラウノイルのなれそめとか教えてくれないか?」

「ドリンが私をノッくんと呼ぶなー!!」


 ノクラーソンの叫び声が隠れ里に響き渡る。


 後に白蛇女メリュジンにこの風習が流行した。

 白蛇女メリュジンに本気になった者――男女問わず――が白蛇女メリュジンに服を贈る。

 それは俺ひとりの者になってくれ、という愛の告白になった。

 贈られた服、丈の短いチョッキのような服。

 『胸隠しハイドブレスト

 これを着た白蛇女メリュジンは現在決まったパートナーがいる、というサインになった。

 自分のパートナーを自慢したい白蛇女メリュジンは、この胸隠しハイドブレストを誇らしげに着るようになった。

 もちろんこの風習を作ったノクラーソンは、しばらくの間、みんなから勇者と呼ばれてからかわれることになったのだが。

 幸せそうだから、ま、いいか。

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