3-8 告白
『皆さん、こんにちは。ハルちゃんねるのハルです。
今日は俺が喋るだけの短い動画なんですが……気づいてる方や気になっている方もいるとは思いますが、最近、俺が中学時代にいじめられていたという噂が出ています。実際どうなんですかっていう質問も結構届いてるので、今回はそのことについて話す動画です。ついでに俺が動画投稿を始めたきっかけについても話せたらいいなって思います。
えーと、まず、いじめられていたというのは本当です。もともと俺、人見知りとかコミュ障のところがあって、小学校のときから友だちがあまりいませんでした。それで同級生にいじられたりしてたんですけど、中学生になる頃にはいじられるというよりもいじめになっていて。といっても、暴力ふるわれたりとかはなくて、無視されたり物を取られたり、まあそんな感じです。
些細なことばっかりだったんですけど助けてくれる人がいないってかなり孤独なことで、これって高校生になっても続くのかなって思ったらお先真っ暗な気がしました。
それで、一度全部やり直して変わってやろうと思いました。
中学卒業して実家を離れて知り合いのいない遠くの高校に進学しました。動画の投稿も高校生になったときに何か新しいことに挑戦しようと思って始めたことです。ハルちゃんねるって、今までの自分から変わろうとした結果、生まれたチャンネルなんですよ……ってカッコつけて言ってみたけど、別に何か大きなことをやってやろうって意気込んでたわけでもないですが……はは。
最初は一人で始めたチャンネルだったけど、高校の友達のさっちゃんと、さっちゃんの友達だったヒロが加わって、ヒロの高校の後輩で俺らとも仲が良い芙雪も加わって、気がついたら四人のチャンネルになってました。
今、すげえ楽しいです。ハルちゃんねる始めたとき、こんなに楽しいことになるって思ってなかった。
いじめのことがネットで話題になって、学校で友だちから距離を置かれるんじゃないかとか正直不安だったけど……みんな、噂のこと知っても今のハルが付き合いやすいイイ奴だから関係ないよって態度でいてくれて本当に感謝してます。
それからハルちゃんねるの三人にも。この動画、俺一人で撮って俺が編集するから、公開されてから三人も視聴者さんと同じタイミングで見ることになると思うんだけど。ここ最近、俺のこと気遣ってくれてるの気づいてるよ、ありがとねー。俺が今回のことで元気なかったのは事実だし、それを心配してくれるメンバーには本当にありがとうの言葉しかないです。
でも、いつまでも元気ない状態じゃ駄目だし、みんなが俺のこと心配してる状態だとやっぱ、動画の中の俺らの雰囲気もいつも通りじゃなくなっちゃうじゃん。視聴者さんからのコメントとかも、いじめの噂どうなんですか? みたいなのが定期的に来るので、このままじゃ良くないなと思って今回の動画を出しました。
ここで喋ってすっきりさせて、次の動画からは俺らメンバーの雰囲気もいつも通り明るく、皆さんにも気持ちよく動画を見てもらえたらなって思います。
えーっと、話がだらだらしてしまったけど、最後にまとめて要点を言うと、いじめの噂は本当です。いじめられたことがきっかけで変わりたいなと思ってハルちゃんねるをスタートさせました。今はチャンネルの仲間も増えて、高校でも友達がたくさんいて俺は幸せです。ということです! つまんない動画に付き合っていただいてありがとうございました。
次回からはまた四人で楽しいことしたいなと思います。あっそれとそれと! もう知ってる人も多いと思うけど、少し前にフユキが個人のゲームチャンネルを作ったので良かったら見てね! URL、概要欄に貼っておくので! ではでは、ハルちゃんねるのハルでした~』
ハルが真面目な顔から一転、笑顔で手を振って動画は終わった。
画面が停止してからも、私はしばらく椅子に座ったまま、ぼんやりとしていた。
「泣いてるの?」
突如、静寂を破って掛けられた声に、びくりと肩を震わせてしまう。何も音を出していないイヤホンを耳から抜いて後ろを向く。
「ヒロ。なんでいるの? ここ私の家……」
「おばさんが入れてくれた。ハルと芙雪も来てるよ。ほら」
彼の後ろから部屋に入ってきた二人がひょこっと顔を見せる。見慣れた三人の顔を前に、私は濡れていた目元を拭った。
「なんか様子おかしかったからこのまま帰ろうかとも思ったんだけど……どうした? 大丈夫?」
途方にくれたような表情で立ちつくしている男子高校生たちの姿がなんだかおかしくなってきて、まだ目が潤んでいることも忘れてつい吹き出してしまった。
「えっと、うん。大丈夫。ハルの動画見てたらなんか泣けてきただけ。なんか、なんていうかー……どうしよ、言いたいことはあるのに何て言っていいかわからない。話したいことはあるんだけど」
まだ半分泣いている状態で笑っている私を見て、三人が顔を見合わせる。
目が合った芙雪くんが、にこりと微笑んだ。
「今日、新しいゲームソフト買ったから一緒に遊ぼうと思ってヒロさんのとこにお邪魔してたんです。四人でやりませんか?」
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