第四章 8-3
「左様でございますか。では、ダシャラタよ、ダイバ老師の軍門に
レイネリアから偽の天人地姫への面会を相談されたアナン老師が、出し抜けにダシャラタへ向けて言い放つ。その
先ほどまでの威厳に満ちた姿は
そもそも、老師は最初から翻意を促すためにイクシュヴァーク家を訪れたのだという。
ダシャラタも最初こそ渋ってはいたものの、敬愛する老師の
彼女たちも一度旅宿に戻り、少ない荷物をまとめて引き払うと、再びイクシュヴァーク家の敷居を跨いだ。ダシャラタの申し出により、事が片付くまで逗留することになったのだ。その夜は
明くる日の昼下がり、ダシャラタとラーマはダイバ老師の寺院に向けて出立した。拝謁は当主であるダシャラタと、暫定的に勘当を解かれた嫡子のラーマのみが許され、シータは邸宅に
やがて、ラーマたちは目的の寺院に辿り着くと、
二人を
寺院の僧侶に先導され、沈黙したまま通路を歩む二人の後方には、確かに彼女たちがいた。厳戒態勢の中を堂々と歩くその姿は、
『
周囲に温度差による空気層を生み出し、光を屈折させて背後の光景を投射することで、内部を透明化させる水属性の魔法である。
ただし、通常は術者本人を隠すものであり、他者を含む場合は効果範囲から出ぬように注意する必要がある。しかし、不用意に範囲を広げてしまうと、今度は意図せず第三者の侵入を招いてしまう危険性もあった。
彼女たちが誰にも察知されずに済んでいるのは、無論ミストリアの卓越した魔法技術によるところもあるが、ラーマたちが先を行くことにより、進行方向と速度が定まっていることもまた大きい。
やがて、一行は荘厳な造りである寺院の中でも、際立って厳粛な雰囲気を漂わせる一角へと足を踏み入れた。そこはダイバ老師が執務を行う区画であり、偽の天人地姫が逗留している場所でもあった。
そして、一つの部屋の前で誘導する僧侶の足が止まる。緊張した面持ちのラーマたちの前で扉が開かれると、彼ら二人だけ――実際には彼女たちも含めて四人だが――が中へと招き入れられた。
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