第四章 5-2
レイネリアたちは村の外れにある粗末な一軒家に上がると、シータに案内されて客間に
ルンビニは聖地であることから周辺に比べて裕福な村であった。一方で、誰でも自由に住める訳ではなく、二人が訪れたときにも相応の
村では食糧を共同管理しており、
やがて、客間の準備が整い、シータが就寝の挨拶を告げて部屋を後にしようとする。きっとラーマの部屋で
「あなたは天人地姫に会ったことがあるのかしら」
唐突な問い掛けにシータだけでなく、彼女もまた面食らってしまった。教都にいる天人地姫は偽者ではあるが、逗留先には信徒が殺到しており、
…いや、本当にそうだろうか。ミストリアの言には何か確信めいたものが感じられる。彼女が
しかし、詮索されたくないのであれば、単に否定すれば済む話である。それにも関わらず、まるで返答に迷うような曖昧な態度を取ることは、暗に肯定しているとしか思えない。それが分からないほど、彼女はシータという少女を過小に評価してはいなかった。
そして、
ラーマとシータは教国でも有数のクシャトリヤ、武門の家柄の
そして、その原因となったのが、教都に現れた天人地姫の存在であった。教国は王を
現在の座長であるカショウ老師は高齢であり、次回の
ラーマとシータの一族は共にアナン派であったが、戦況が不利と見るや、シータの方はダイバ派に鞍替えをしてしまったそうだ。そして、翻意の見返りとして天人地姫への拝謁が叶うことになった。
結集を間近に控え、座長就任後の報復を恐れての苦肉の策ではあったのだが、その裏切りを善しとしないラーマの一族との関係は完全に決裂し、批難や衝突が絶えなくなった。まさに戯曲で語られるような悲恋であったが、それを聞いた彼女の心情は実に複雑なものであった。
今ここで、その天人地姫が偽者だと言うことは容易い。しかし、それが一国の指導者を左右する程のものとなると、どのようにして収拾をつければ良いのか、皆目見当も付かなかった。
万策尽きた彼女は、助けを求めるようにミストリアに視線を向けたが、やはりその表情は涼しげなものであり、自身の偽者が
ひょっとすると、これは幾度となく繰り返されてきたことなのかも知れない。
果たして、シータはそれをどのように受け取ったのだろう。僅かに目を見開いたかと思うと、次の瞬間、
「御身の
彼女は唖然としながら、きょろきょろと左右を見回した後、再び眼下の光景を眺めた。やはり、シータが自分の足下に跪いている。いつの間にかラーマも一緒だ。
一体これはどういうつもりなのだろう。これではまるで…自分が、
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