第四章 6-1
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「ねえミスティ、やっぱり最近私に厳しすぎはしない?」
翌朝、ルンビニを出立したレイネリアは隣を歩くミストリアに不満気な声を漏らした。しかし、当の本人は素知らぬ顔で首を傾げるだけである。
いつものように街道を二つの人影が歩いていた。しかし、これまでと異なる点はそれが倍になっていることだ。彼女たちに追従するように、その後ろにはラーマとシータの二人の狩人…いや、クシャトリヤの姿があった。
昨夜、二人は彼女のことを天人地姫と
二人がそのような誤解をしてしまったのにも理由がある。ひとつは、天人地姫が公の場に姿を見せることは稀であり、近年ではシュンプ平野の軍事演習、王都の成人の祝宴、そして帝都における
いずれも教国側は、少なくとも公式には参加しておらず、ミストリアと直に接した者はいなかった。教都における偽者騒動もそれを逆手に取ったものであるのだろう。
また、彼女たちは二人に名前を明かしてはいなかった。天人地姫の
これらに加えて、
結局、ミストリアからは誤解を解くことを制止され、また天人地姫の秘匿は陪従者の務めでもあることから、彼女は渋々、替え玉となることを承知したのであった。しかし、絶対にミストリアは面白がっているのだという確信が彼女にはあった。
そして、二人は彼女の伴をすることを願い出た。せっかく村への定住が認められたところなのだが、これまでの経緯を考えると無理もないことではある。
教都にいる天人地姫が偽者であることを証明できれば、それを認定したダイバ老師の失脚は必至だ。自動的に次期座長はアナン老師となり、シータの一族も手の平を返すようにアナン派に戻ってくるだろう。
彼女たちにしても、王国から遠く離れた教国の情勢にはやや疎く、また迂闊に正体を明かせない状況であるため、二人の申し出は渡りに舟でもあった。こうして互いの利害が一致したことから、教都へと向けた四人旅が始まったのであった。
教都クシナガラはヌーナ大陸の北端、霊峰タカチホを頂く教国の首都である。街道を北上して教国を縦断する道程となるが、それほど国土は広くないため、今の彼女たちであれば二週間ほどで踏破できると思われた。
帝国と比べると遥かに短い期間ではあるが、あちらは皇女による介入と支援もあり、
「この先にありますのは、聖地ブッタガヤでございますッス」
信徒の巡礼は四大聖地を
それにしても、ラーマの口上には未だ慣れない。名門の家系らしく、本当は上品な物言いも出来るのだが、あまり彼女に仰々しく接すると周囲に怪しまれてしまうため、今までどおりの言葉遣いとさせていた。
最初は畏れ多いと恐縮しきりの二人であったが、同行する内に徐々に固さが取れてきたようで、いつの間にやら賑やかな旅路となっていた。そして、ルンビニを発つこと四日、彼女たちは第二の聖地ブッタガヤへと到着した。
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