第三章 2-2
「ふわっはははぁーっ! これよ、これよ、これなのよなぁっ!!」
もしも皇女の身に万一のことがあったら、もはや自分の命を差し出したとしても償い切れるものではないだろう。それは王国やホーリーデイ家を窮地に陥れ、
思い返してみれば、皇女は決して悪い人物ではなかった。無論、帝国内で絶大な権勢を誇り、国家の暗部とも密接に関わっていると噂されるため、自分の知らぬところでは様々な権謀術数を
しかし、それでも皇女は傍に居てくれた。自分自身を見失い、もう何もすることが出来なくなっていたとき、それでも寄り添ってくれていたのは皇女であった。今更こんな時になって、どこまでも底の知れない超然としたその姿に、自分は救われてもいたのだと気付かされた。
その皇女が恍惚の表情を浮かべ、口から
「やれやれ、随分と痴態を晒されておりますな」
貴賓室の扉へと身を翻した彼女の目に映ったのは、かつての軍事演習の陣幕で言葉を交わしたあの老魔術師であった。ミストリアが大陸随一とまで評した人物であり――
「ふん、
いつの間にか、皇女の表情はまたいつもの
「確かに
何かとんでもない話をされたような気がするが、二人はそんな彼女を意に介さず、熱を帯びたように議論を続けている。時折、ついに第五の属性が
「天人から
突然の問い掛けに彼女は当惑した。それは奇妙な話であった。属性と言えば、火水風土の四大属性に決まっているではないか。いくら自分が魔法を使えないからといって、それくらいのことが分からない筈もない。
しかし、そんな彼女の思考は、皇女の意味深な笑みによって否定されてしまう。いったいどういうことなのだろう。皇女の意図が分からず、
「ひょっとして、六大のことですか?」
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