第一章 6-1
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「お姉ちゃん、この花あげる」
レイネリアは笑顔で返礼しながら、受け取った
その過程で彼女が自身を『お姉ちゃん』と呼称したところ、イワナはその言葉に過剰ともいえる反応を示した。どうやら少女は『お姉ちゃん』というものに強い憧れを抱いているようであり、それがまた彼女を複雑な気持ちにさせたのだが、
「イワナちゃんはいつからここでお花を摘んでるの?」
彼女は同様に少女の髪にも
森に
訊きたいことは山程あったが、この不自然な状況に慎重にならざるを得なかった。幼い子どもが独りで生き延びられる筈もなく、必ず誰かが面倒を見ていたことになるのだが、果たしてそれは村の住民なのだろうか。
例えば、事情があって村を放棄したという可能性はないだろうか。その理由が疫病であることも考えられる。そして、少女が花を摘みに来られるくらいだから、移住先もそう遠い場所ではないだろう。
しかし、大量の家財道具が残っていたことが腑に落ちない。新しい土地に移住するにしても、あれだけの量を捨て置く余裕が山奥の村にあるとは思えない。
そして、帰らぬ隣村の住民のことも気に掛かる。特に二人は家族を残しており、
確実にこの村で何かが起きたのだ。その真相は未だもって不明だが、決して放置してはいけないことだけは分かる。それに今は少女もいるのだ。理由がどうであれ、この子だけでも保護しなくてはならない。
結局のところ、選択肢は一つしかないのだ。少女から村で起こった出来事を聞き出し、オユミたちと合流して調査を再開する。いつまでもこんな所で花を摘んでいる暇はなかった。
「イワナちゃん、もう暗くなるから家に帰ろうか。きっとお母さんも心配してるよ」
しかし、直後にこれは失言かも知れないことに気が付いた。もし仮に疫病からの避難であった場合、少女の母親が健在である保証はないのだ。気を揉みながら少女の顔色を窺ったが、無邪気な笑顔が崩れることはなく、やがて少し驚くようにして口許に手を当てた。
「いっけない、お母さんに水汲みを頼まれてたんだっけ。早くお
少女は摘んでいた花を放り出すと、村のある方角に向けて歩き出す。しかし、水汲みの割にはそれを入れる桶などの容器は見当たらず、またそのことを一切気にする素振りもなかった。
独りでトコトコと歩いていく少女を追い、彼女も慌てて駆け出そうとする。そのとき、ずっと黙したまま二人のやり取りを見守っていたミストリアが、
「レイニー、なんで泣いているの?」
突然のことに訳が分からず、ミストリアを見詰め返す彼女であったが、無意識に頬へと伸ばした
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