ナイトメア・アーサー/Knightmare Arthur ~Honest and bravely knight,Unleash from the night~
第496話 王侯貴族がしゃぶしゃぶつつく・後編
第496話 王侯貴族がしゃぶしゃぶつつく・後編
さあさあここで続・スーパーしゃぶしゃぶタイム開幕だぞー。
「今度は野菜も食べてみましょうか……白菜が美味しそうですね」
「ふがふが……ハルト、やはり肉を食わねばならぬぞ。肉体の基本は肉だ。んん? 自分でも何が言いたいかわからなくなってきた」
「……よく考えたら父上、『紅の守護竜』の儀式で疲れておられるのですね。そういうことでしたらもうたらふく食べていってください」
「うむうむ、私は食うぞ。今後一ヶ月は食わなくてもいいぐらいに食うぞ」
「逆にまたしゃぶしゃぶを食べたいという気持ちの表れですね。お気に召していただけて何よりです」
そして二回戦も無事に閉幕。
「ではエリスとアーサーの件についてはこれぐらいにして。今度はグレイスウィルの政治に対して、意見をつらつら述べていきましょうか」
「うむ……先の戦いで皆感じた所があるだろう。この機会に私にぶつけてくれ」
ハインラインは瞳をしっかりと据えて、仕える臣下達を見つめる。しゃぶしゃぶ食べてエネルギー満タンだ。
「……まあ如何に我々が平和ボケしていたかってのを思い知らされましたね」
「一度侵入を許したと思ったら、立ち直せずにあの様だ。民には辛い思いをさせてしまった……」
「軍備増強は言うまでもない。領土拡大と魔術研究には、より一層の精進が求められるだろう」
「魔法学園にも優秀な人材の育成が求められますねえ……生徒数が減少してしまった今、色んな所から入学希望者を続々募るべきかと」
「……私は正直、『紅の守護竜』に頼るのも限界があると思っています」
ハルトエルは重々しく口を開く。ハインラインの顔色を、敢えて気にしないようにしながら。
「……そう思うか」
「はい。幾ら優れた魔術と言えど、結局は帝国時代の遺物です。我々でも知り得ない構造が隠されています……扱い切れなくなる時が必ずやってくる。そのようなものだけに防衛を任せるわけにはいかない」
「……」
「だったら改造でも何でもして、扱えるようにすればいい……赤薔薇の魔術師達は優秀だ。そうだろうハインライン?」
「兄上……」
「自信持てよ。お前の治めるグレイスウィルは、あるものだけでやりくりしていくだけの内向な国か? 新時代の台頭者として、未知を切り開いていく最先端だろう?」
「誰も知らないような方法で、愛しい祖国を守ってみせろよ。お前の導く先が何処に向かうか……見せてくれよ」
口こそ悪いが、笑いながら言うハインリヒ。
本心を見せながら話してくれる彼に、ハインラインはどこか安心感を覚えていたのだった。
「うん……こんなものですかな。あまり国王陛下ばかりが責任を感じておられても、話は先に進みませんから」
「……礼を言おうアドルフ」
「いえいえ……それでは、他に共有しておきたい事項とかございますか?」
ルドミリア、シルヴァの手が上がる。先に話題を振られたのはルドミリアの方だった。
「私の方からは取り締まりの話を……先日回収させていただいた『拳銃』についてです」
資料を提示しながら彼女は話す。
「ケン銃? 象形文字は何をあてがってるの?」
「『拳』だ。拳の中に収まる大きさということから、グロスティ商会と共に命名した。そして彼らとは協力していって、見つけ次第回収していくようにする予定です」
そんな武器の図面を見て、ハインラインはふうむと唸る。
「技術を持たない盗賊であろうとも、簡単に人を殺せる武器……」
「これが一般の手に広まってしまったら何が起こってしまうか」
「だからこそ我々の手で制御するのです。この武器に対して未知がなくなるまで、徹底的に締め上げなければ。そういうことをいたしますので、何卒よろしくお願いします」
「うむ、管理はルドミリアに一任する。よい成果を期待しているぞ」
「仰せのままに……」
続いてシルヴァの番。彼からは第一階層についての話が持ちかけられた。
「例の『呪縛地域』ですけど、今後の対応はどうします? 現状では民家の損傷とかも見られていて、ついでという名目で手を加えられてしまうんですよね」
「うーむ、それもまた悩ませる問題であるよな……」
「『呪縛地域』ってあれだろ? 第一階層居住区の、手を付けられなくてそのまま古びた地域。一ヶ所の公園を中心に広まってるっていう」
「それだよトレック。聖教会もキャメロットも何故かその地域には手出しできなかった。もう呪いとしか考えられないんだよ」
「だが――呪いと言っても何か悪影響が及んでいるわけではない。手を付けられないだけっていう点がこの問題の重要な箇所だな」
「単に手を加えようとしても、魔術か何かに弾き返されてできない。たったそれだけの地域だが……いつから発生していたのかもわからない」
「都がアルブリアに移る前から、島民によって存在は確認されてきたようだ。もしかすると帝国時代より長い間、そこにあった可能性もある」
「ん? 帝国時代以前より存在していたなら、本当に手付かずのままになるんじゃないのか?」
「何かねー、時々そういう工事ができちゃう時があるんだよ。それこそ公園みたいな。文字通り神の気紛れって感じに。それを否とするか良しをするか……」
この後あれこれ意見が交わされた結果――
出てきた結論は『良し』の方であった。
「やっぱり今のグレイスウィルにゃあ、前々から積み重なっていた問題をどうにかする元気はありませんものね!!」
「先ずは住民の生活復旧が最優先だ。呪縛地域については……また今度ということで」
「悪影響がないという点はやはり大きいですね。では、最後は自分から……」
一回咳き込んでから話すアドルフ。
「アルビム商会について--彼らは魔術大麻を生徒にも売り歩いている様子。グレイスウィルでも密売に及んでいる模様」
「グロスティ商会も目を付けておりますが、出処を探し出すのは難儀しているようです」
「加えてドーラ鉱山の進出を強めているようで--」
ぴくっと眉を吊り上げるのはシルヴァ。
「……ドーラ鉱山、セーヴァが何だかんだ拡充していたけど。今はアルビムがトップなの?」
「ネルチ商会が
「何だ? 管理者に目を付けられたのか? ふうむ……」
国じゃなくても警戒すべき勢力はいるということだ。
「未だログレスの方は混乱が続いている。それに乗じて何をしでかすかわかったものではないな」
「グレイスウィルでも目を光らせないとなりませんな。我々が新時代の平和を先導しなければ」
「そうだな、大切なのはその気概だ--」
最後にウルトラしゃぶしゃぶタイムを開催してこの会議は幕を閉じよう。
「あー美味いー。白米が進むってもんだ」
「パンじゃ話になりませんよね。主食によって合うおかずが様々っていうのも、奥ゆかしいものです」
「むっきー! そろそろ私にも食べさせなさいー!」
「おおっ、ベロア。済まなかった。ほら肉だぞ」
「えのきが食べたいのだわー!」
「何というわがままカーバンクル」
「思えば我々の要求にも、文句一つ言わず材料と道具を用意してくれたわけだ。民には頭が上がらないな……」
「信頼にはしっかりと報いないといけませんね。それを実感する為のしゃぶしゃぶ!}
「ただ食べたかっただけの料理にそんな深い意味が?」
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