第3話 ジルとの出会い

「やぁ、初めまして。僕ジル」

「......」

「ねぇ、聞こえてる?」


「ね、ねこが、話してる.....」

驚きのあまり、思考回路が止まる。


「ねぇってば~!お~い」

我にかえるまり。


「聞こえてる。いったいあんた何者なの?」

「だから、僕ジルだって」


少し冷静になったまりは

「名前はさっき聞いた。

それでジルは何でここにいるわけ?」

怒り気味に答える。


「怒らないで、僕の話し聞いて?ねっ!」

「可愛く言ってもダメ」


なんとなく分かってしまったのだ。

この猫のせいで、この世界に

やって来たことを。


「それで?」

「うーん、凄く言いずらいのだけど

僕が急に飛び出しちゃったから、

まりは死んじゃったみたいで...」

「やっぱり、死んだんだ」

「急いで体が空いてる

人探したらさ、ちょうどマリーって人も

魂抜けてたの。まりと名前も似てるし

いいかなって」

「·········」

黙りこむまり。


「名前で決めたんかいっ!」

てっいうか、ここはどこで、

私はいったい誰なのよー!!!」


「名前はマリー・ウィリアム・マシューズ」

公爵家の長女だよ。お金持ちで

良かったよね」


「とういう事で、なんとかなるよね。

僕忙しいからもう行くね~」


「ちょっ、ちょっと待って。

なんとかなんてならない!まだ聞きたい事

沢山あるんだから」

とっさに、しっぽをつかむ。

「ちょっとー!何するのさ」


「じゃあさ、これでも読んで。

あと、指輪もあげるから、呼んでくれたら、

行ける時、行くから~。そうその指輪ね、

僕と通信出来る有難いアイテムだから。

大切にしてね。じゃあ、行くね~」

ジルは、パッと目の前から

消えて行った。


手の平には紫色の石の指輪が握られていて

床には一冊の本が置かれていた。


フォレスト・フェアリー


「この世界の事でも書いてあるのかな。

とりあえず、指輪をはめってっと」

指輪をはめた瞬間、マリーの記憶が

走馬灯のように流れ込んできた。


「ちょっ、ちょっ、性格めちゃ悪い....」


マリーは両親から溺愛されて育てられた為、

気に入らないメイドなどは、いびり倒し

あげくのはてには、クビにする。

という、めちゃくちゃワガママ性格な

お嬢様に育ってしまったのだ。

そのおかげで、本当の友達は1人もいない。


「あ~あ、本物の悪役令嬢じゃん」

「これから、どーしよ」


ふと一冊の本が目に入る。

「とりあえず、この本でも読むか」


その時、

「マリー、マリー、大丈夫なの?

返事をしてちょうだい。マリー」

ドアの向こうから、母がうろたえて

涙声になりながら、言っているのが聞こえる。


「どうぞ、お母様お入りになって」

返事をするなり、ドアが勢いよく開き

走りこんでくる。

「マリー、大丈夫なの?

私の可愛いマリーに何かあったらかと思うと

心配で、心配で。」


これか、この溺愛っぷり。

そりゃ、ワガママにもなりますわ。

心の中で呟く。


まりは、おばあちゃんから

優しい愛情と厳しさと

なんといっても、

悪を切る、正義の味方、金さんを見て

育てられているので、少し困惑してしまう。


「お母様、心配なさらないで、

少し転んだだけで、記憶も全て無くなった

わけではないですから」

「心配して頂いて、ありがとうございます」


「...................」


「んっ? 」

何か変な事言ったかしら。


「マっマリーが、ありがとう。って

初めて、ありがとうって~」

急に、号泣し出す母。


おーい、

クララが立ったみたいに言うな~


「マリーが、私にありがとうって」

母は涙を拭きながら、冷静になったようで、

「やはり、頭を打っているに違いないわ」


「···············」


「明日のルーファス王子の誕生日の夜会

出席できるかしら?

マリーとっても楽しみにしていたでしょ?」


なんと?

明日、誕生日会だと~?

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