第9話 思い出の天使
1982号305番は、大魔導士戦士ディオに連れられて…いや、連行されて再び帝都へ皇帝城へ来た。
大魔導士戦士ディオを戦闘に息子とその長男、さらに、その一族の厳重な囲いの連行をされて1982号305番は再び、皇帝の王座の前に立つ。
数十段も上の皇帝の座から、威厳を醸し出す代々この帝国の帝位を継承する竜族の長にして皇帝ロンバルディアが鋭い目で、連行された1982号305番を見下ろす。
1982号305番は、周囲を見る。
皇帝城の皇帝の座は、広大な室内、いや、ドームだ。
ギリシャ神殿のような石柱が多数ならび、その幅は、全長五十メートルの超位種である竜が通れる程だ。
そして、前に皇帝ロンバルディアと謁見した時には違った事がある。
大多数の竜が、皇帝の座の周囲に居座っている。
その視線は全て殺気を持っている。
おそらくだが…竜族の長である皇帝ロンバルディアの臣下達であろう。
竜族達が竜の形態で、1982号305番を囲んでいる。
皇帝ロンバルディアが
「どうして、連れて来られたか…理由は分かっているか? ネオ…」
1982号305番は首を横に振り
「いいえ」
否定を口にしただけで、皇帝の座にいる竜達の顎門から数千度の火炎が覗かせる。
今すぐ、焼き払いたいのだろうが…。
逆に肝が据わっている1982号305番に、皇帝ロンバルディアは笑み
「お前は…本当に図太い。これ程の竜達に囲まれて…その余裕…どこから来るのか…」
1982号305番はフッと笑み
「大した事ではありません。私の経験上…このような巨大な存在、竜族よりもっと巨大な存在と戦いを繰り広げた事と比べれば…」
竜達の警戒が上がる。
ハッタリではない。それを裏付けるように…1982号305番の密度が上がっていくのをマナ感知で察する竜達。
皇帝ロンバルディアは、余裕な態度で
「では、お前をここに連れてきた理由を言おう。ネオ、キサマは…飛び出した本国と連絡を取っているそうだな」
1982号305番は頷き「はい」と頷く。
皇帝ロンバルディアは
「その理由はなんだ?」
1982号305番は冷静に
「私がここへ流れてくる条件として、本国は、私が暮らしている地域の土地や社会、様々な事をデータ、情報として送るようにすると約束を交わしました。その約束を守っているだけです」
その言葉に1982号305番を囲んでいる大魔導士戦士ディオ達と、竜達の気配が鋭くなる。
皇帝ロンバルディアが
「それは…我が帝国と戦争をする為か?」
フッとバカにした笑みをした1982号305番が
「どうして、そうなるですか? 理解できない」
皇帝ロンバルディアの隣にいる竜が
「愚かな…国を知ろうとする事は、すなわち戦争の準備である。それは当たり前であろう」
1982号305番が
「ああ…失礼、それがこの世界の常識でしたね…」
と、何処か皮肉な笑みをする。
皇帝ロンバルディアの傍にいる竜が
「陛下、こやつを処刑しましょう。帝国の安寧を乱す輩は始末するべきです」
皇帝ロンバルディアが
「汝、ネオに聞く。ネオ…キサマが持つ力は…血族に遺伝するのか?」
1982号305番が鋭い顔をして
「なるほど…つまり、遺伝するとしたら…どうしますか?」
皇帝ロンバルディアが
「汝の力が血族に遺伝するなら、我ら竜族から妻を娶り、汝…機神、マキナ族の力を我らに寄越せ。そうすれば…処刑は免れるぞ」
1982号305番は鋭い顔をする。
本来、恒星間戦術兵器ネオデウスの力は遺伝する事はない。譲渡という形で別の者に受け渡すのだが…1982号305番は違った。
あまりにも苛烈な戦場で戦い続けた結果、ネオデウスが変異進化して、1982号305番と完全に融合してしまった。
なので、1982号305番が子孫を残した場合、そのネオデウスが遺伝するのだ。
それ故に、元妻であった女アリアとの間にもうけたであろう娘の遺伝子調査がされて、結果、娘は1982号305番の娘ではないと分かった。
そして、その結果…アリアと元友人だった男との密通が発覚した。
遺伝するネオデウスを持つのは1982号305番しかいない。
1982号305番は
「申し訳ありませんが。出来ません」
周囲にいる竜達が
「キサマ、死にたいのか!」
「なんと不遜な!」
「この愚か者に死を、陛下!」
大魔導士戦士ディオ達の殺気が倍になる。
大魔導士戦士ディオにとって他の思惑がある。
このまま1982号305番を取り込めないなら、この帝国にとって大損害になる。
それ程の功績を1982号305番は、帝国で示して来た。
そんな男が、帝国の権力に属さないのは、あまりも危険すぎるのだ。
皇帝ロンバルディアが
「お前は、夜な夜な…リリスガール街へ繰り出している。妻を一人とは言わん、欲しいだけ申せ、十人でも二十人でも…満足するだけ用意してやる」
1982号305番は、現地調査で竜族の生態について調査している。
竜族は一匹のオスに複数のメス達が集まる一夫多妻の形式を取っている。
オスもメスも、共に強大な超位種な為に、確実に子孫を残せるメスが多くなる傾向がある。
オスは、そんなメス達を守る為に強大で、知恵を付けるようになる。
寿命も神的な存在、ハイエルフや、精霊に近い千年単位だ。
竜族としての純度が下がれば…ハーフになると寿命は桁違いに下がる。
1982号305番は少し訝しい顔をして
「私がどうして、本国から出て行ったのか…その理由はご存じですか?」
大魔導士戦士ディオが
「建前は、妻の不貞によって出て行った…と」
1982号305番は暫し悲しげな顔で
「それも理由の一つですが…。本国がある世界、こことは違う異世界ですが…。そこでは戦争が撲滅された。私は、その世界で無用の長物となったのです」
突然に1982号305番の背中から円盤が飛び出し、赤と白の光を明滅させ
「ネオデウス1982号305番。それ以上は、規約に抵触します」
と、その円盤から人工知性体DIの映像が出る。
警告の為に出て来た。
1982号305番以外の者達は驚き、1982号305番は冷静に
「この状況…その規約が守れる事態ではないと結論する」
皇帝ロンバルディアが
「お前が、本国の者か…」
と、円盤から飛び出た人工知性体DIの立体映像を指差す。
警告に現れた人工知性体DIの立体映像が
「もし、規約を守れないなら…ネオデウス1982号305番。貴方を回収します」
人口100万の帝都の上空に、巨大な次元の穴が出現する。
100キロにも及ぶ次元の穴から、100キロ級の宇宙戦艦、いや高次元から無限にエネルギーを取り出せるオメガデウスをコアとした恒星間戦略時空戦艦エルドリッジが出現する。
数十キロの円盤をコアに翼を伸ばす鳥の形をした恒星間戦略時空戦艦エルドリッジから、光輪を背負った無数の機械の巨人達が降臨して、瞬く間に帝都の上空を制圧。
そして皇帝城内部に、機械の巨人の軍勢が着地して、無数の円盤が1982号305番のいる皇帝の座に到達する。
鉄の空を帝都の民達は不安に見上げている。
その報告は、直ぐに皇帝ロンバルディアに来ると、同時に円盤達が到着、1982号305番の周囲に浮かび、最高議長DI達の立体映像を投影させ
老年の人工知性体DIの最高議長が
「ネオデウス1982号305番、規約違反だ」
1982号305番はフンと鼻息を荒げて
「私より、まずは…現地住民に説明をした方がいいだろう」
こうして、1982号305番を回収しに来た人工知性体DI達が、帝都の支配者、皇帝ロンバルディア達に自分達の事を、立体映像も交えて説明する。
この皇帝の座にいる者達は、それを理解できる程の知性を持っていた。
この異世界では資源、土地が最も重要で、次に人だ。
だが、無限のような宇宙に広がる超技術文明にとって、資源と土地は、簡単に作り出せる玩具であり、最も重要なのは知性体生命の存続である事、つまり…人の永続的な存続が主命であると…。
それの宇宙級超技術文明は、惑星、つまり…自分達がいる世界を一瞬で崩壊させる程の単騎の兵器を作り出した。
その成功例が、ネオデウス1982号305番、ネオであると…。
その1982号305番は、戦争が撲滅した宇宙級超技術文明にとって不要になったが。
生命であるが故に、追放という形で、別世界に当たるここへ、現地調査員として来たと…。
全てが驚愕の事実でしかない。
説明を終えた後、人工知性体DI達が
「今回の件に関しまして、こちらでは慰謝料を用意させます。どのような慰謝料を請求するかは…後ほど、お伺い致しますので」
皇帝ロンバルディアは
「では、慰謝料を請求する。その男を置いて行け!」
と、1982号305番を指差す。
人工知性体DI達が止まる。
皇帝ロンバルディアは
「我らの慰謝料として、おの男…ネオを我らのモノとして、ネオの血族を我が帝国で育て、帝国に組み入れる」
人工知性体DI達が
「しかし、他の莫大な資源や、エネルギーといった」
皇帝ロンバルディアが鋭く
「そんなモノより、ネオを要求する」
皇帝ロンバルディアは見抜いていた。
ネオデウス1982号305番は、その宇宙級超技術文明の技術、力をその身に宿す存在。その世界での最高傑作なのだ。
故に、放逐するしかないが、回収にも来たと…。
人工知性体DI達は演算する。そして…
「分かりました。では、交渉致しましょう」
転移してきた恒星間戦略時空戦艦エルドリッジを元の世界に戻し、交渉用の二百メートルの時空戦艦だけを残して、人工知性体DI達と、帝都の為政者達との交渉をスタートさせた。
その間、1982号305番は帝都に滞在する事になった。
滞在場所は、帝都の皇帝城の客間だ。
まあ、言わずと知れた豪華だ。
どのくらい豪華って? 大便をする部屋も調度品に囲まれた部屋だ。
考えて欲しい、ルーブル美術館のような室内と、体が気持ちよく沈むベッド、更に貴重な本、多分…売れば金貨数十枚は匹敵するであろう結晶鉱物の置物。
そんな美術品だらけのホールのような5Lの部屋だが、機能は充実している。
空気清浄機のような魔法結晶装置、絶えず室内の湿度に温度は完璧に管理、更に何かある場合は、ベルを鳴らせば執事や女中さんが来て何でもしてくれる。
そんな部屋で、世界の様々な植物や動物、魔法工学、技術、といった書籍を読みふける1982号305番。
運動不足には、執事がトレーニングルームへ連れていってくれる。
ここは、21世紀でいうシンフォニー・オブ・ザ・シーズという豪華客船の内部か?
そう勘違いさせる程の充実ぶりだ。
まあ、地下の牢獄でないだけで、満足だ。
その豪華なベッドで本を読んでいる1982号305番は首を傾げる。
書籍の書かれている内容が、これまた凄くて正確だ。
貧困による経済学とか、行動による心理学経済とか、人間の無知による過剰自信の心理学とか。
明らかに中世レベルの社会では、書かれないであろう学問の本まで充実している。
本当にこの世界は不思議だ。
技術や知識は、おそらくだが…21世紀中期か、初期に匹敵するのに、その社会は…セクロス風俗が盛んな、中世レベルなのだ。
だからといって、人々の意識が低いではない。
なんというか、温厚、何でも受け容れる。ものすごく度量が広い。
色んな異種族と色んな価値観が、ぶつかるも共存している。
むしろ、色んな異種族の価値観や性質を、上手く組み合わせて七色の複雑な絵画を構築しているようだ。
だからこそ、1982号305番は、この世界に飽きない。下半身も…。
この世界に来て、自身の感情の複雑度合いが上がったような気がする。
そんなこんなで、四日が過ぎた頃、再び皇帝の座に呼ばれた。
天の川銀河連合と、この帝国との交渉が終わったのだ。
さて…どうなっているのやら…と1982号305番は、少し自嘲気味に思う。
数十段も高い皇帝の座から皇帝ロンバルディアが見下ろし、その階段の元に会議をした人工知性体DIの最高議長達の立体映像を乗せる円盤端子達がいた。
人工知性体DIの最高議長達が
「では、ネオデウス1982号305番。我々の協議の結果を伝える」
1982号305番は渋い顔をする。
予想としては決裂、自分は回収されて別の異世界への現地調査へ向かうだろう。
その前に…脳裏に過ぎる、ここで出会った彼ら彼女達に挨拶だけはしたい。
人工知性体DIの最高議長が
「ネオデウス1982号305番、君にここでの戸籍を与える」
「ふあ!」と1982号305番は、今まで出した事もない声が出てしまった。
予想を完全に裏切られた。
「つまり…え? 現地調査の…継続…ですか?」
老年の人工知性体DIの最高議長が
「様々にこの国の者達と協議した結果。ネオデウス1982号305番、君にこの国での戸籍を付与。そして、引き続き現地調査を命じる。
そして、新たな任務を追加する。
この国、ドラグ・アース帝国の国民となって、この国の安寧と平和に寄与しつつ。
この世界の現地調査を続行。
そして、新たな君の戸籍を付与し、君はこの帝国での巨大海運財閥の会長としての地位を持って、帝国の発展と安定に努めつつ生活の向上に努めよ」
1982号305番は、戸惑いつつ
「了解しました。ですが…もし…他国との戦争が勃発した場合…」
老年の人工知性体DIの最高議長が
「他国との戦争が勃発した場合、君には殺人及び強姦、窃盗、詐欺は許されていない。
つまり、殺人をしないで戦争を収束させるという行動をして貰う」
フッと1982号305番は笑み
「なるほど、私が天の川銀河で戦ったように…」
老年の人工知性体DIの最高議長は
「そうだ。潜入ミッションによって他国との戦争の収束を行う。この世界の戦争は非常に単純だ。将軍を拿捕すればいい。大軍の侵攻も、それを妨害すればいい。
君が18年間もやって来た作戦と同じ事をすればいい。君の能力を鑑みれば問題ない」
1982号305番は笑みながら背筋を伸ばし
「了解です。ネオデウス1982号305番。命令を復唱します!
現地調査を続行。
新たに、この国の民となり、この国の安寧と発展に寄与。
他国との戦争となった場合は、いかなる手段を持っても殺人を行わずに収束。
そして、海運財閥の会長としての職務の真っ当」
老年の人工知性体DIの最高議長が
「復唱確認。任務の続行を」
「は!」と1982号305番は敬礼する。
人工知性体DIの最高議長達が
「では、君に新たな名前を付与する」
「君の帝国での名は、ネオ・サーペイント・バハムート」
「海運財閥の名は、エンテイス」
「海運財団エンテイスの拠点は、君が前から提唱していた大型システム島、アルヴァス型時空戦艦を元に現地に合わせて建造し、三日後に…帝国内湾の中心に設置、運営を開始する」
老年の人工知性体DIの最高議長が
「これは…君、個人の判断に任せるが…。現地住民との間に子孫を成した場合は、我々の監視が入る事になる。その事は考慮するように。あくまでも君が君の意思で、現地住民との間に子孫を残した場合だ」
1982号305番、いやネオ・サーペイント・バハムートは、微妙な顔をして
「はぁ…りょ、了解しました」
最近、下半身がユルユルなのを人工知性体DI達は知っているようだ。
かつて、天の川銀河の宇宙で伝説…レジェンドであったネオデウス1982号305番は、この新たな世界で、ネオ・サーペイント・バハムートとして生まれ変わった。
それから…皇帝城の軟禁…。まあ、充実した本を読み込んだバカンスから、皇帝城眼下の帝都へ自由に遊びに行けるようになり、帝国民となって、明日…元の街に帰る事になった夜、帝都の散策を1982号305番ならぬネオは、案内をしてくれる竜族の若者ラダントと一緒にしていた。
完全な人型になっているラダントが、ネオを色んな美味しいお店に案内する。
100万人を超える人口を誇る帝都はデカい。
帝国内の色んな料理に舌鼓しつつ、夜中は…やっぱり、リリスガール街へ来た。
巨大な一角全てがリリスガール街で、おそらく住んできた街の規模より数倍も大きい。
その象徴に、大きな五十階に相当する巨塔が三つもある。
その巨塔が全てリリスガールのお店なのだがら…ビックリだ。
まず、帝都のリリスガール街に入るには、先にお金を支払いする。
その額は8000Gだ。これは一律だ。
そして、支払ったという札を貰う。
その札を持って、リリスガール街へ入ると、周囲全てが大量のリリスガール達で埋め尽くされている。
もう、ピンクの艶やかなネオンに満ちていて、それしか…見えない。
帝都のリリスガール街のシステムは、先に8000Gを支払い、支払った札をリリスガールに渡して、一晩を過ごす。
要するに、一晩中、リリスガールとやれるのだ。
前の街にあったライト、ミドル、ウェイトのようなシステムではない。
だから、その分、料金も高いのだ。
ネオは思った。
待てよ、それじゃあ、何回も出来る絶倫野郎にとって特じゃあないのか?
その問いをラダントに聞くと
「ああ…大丈夫ですよ。そんなタイプには、この札を渡しません。そういう絶倫なインキュバス・ロードみたいなヤツは、入ってくる段階で、魔法のチェックが働いて調べて料金三倍で、そんなタイプ専用の低級淫魔のお店に行かされますから…」
「へぇ…」とネオは頷きつつ、あ、そういえば…入口の前の道路に色んな魔方陣が書かれていて、その上を歩いていたなぁ…それがチェックする魔法なのか…。
そうして、ネオは、帝都リリスガール街のマップ紙を見ると、円形で魔方陣のような形に見える。
自分がいた街ロランダのリリスガール街も似たような構造をしていた。
街全体が避妊と性病や病気を予防する魔方陣なのだ。
無論、お店の天井を見ると、その効果を発揮する魔方陣があるのは、言うまでもない。
さて…どこへ行こうか…と迷うネオ。
下手をしたら拠点にしているロランダ街と同等の大きさがある帝都リリスガール街に、考えあぐねていると、ラダントが
「あの…ネオさん。女の子の気分を味わえるお店に行きませんか?」
「はぁ?」とネオは首を傾げる。
そこは、性転換できるリリスガールのお店が並んでいる区画だった。
「へぇ…」とネオは興味津々だ。
いや、天の川銀河の宇宙でも性転換の技術がない訳ではない。
性転換は、心理的に女性であるとか男性であるとか、そういうLGBTといった人達用の為に用意された技術であって、性転換ナノマシンによって安全に男性から女性、女性から男性に変われる。ただ…その術式を受けるのは極少数であり、主に男性から女性に変わるのが圧倒的に多数なのだ。
それを…一時的に男性から女性になり、女性のセクロスの体験してみるお店があるなんて…なんて業が深いのだ…とネオは思った。
早速、店に入ると受付の魔女っ子さんが、性転換の魔法薬に関しての説明をする。
ただ、このビーカーに入った飲み薬を飲むと直ぐに女の子になれるらしい。
因みに、女性から男性に変わるのも、同じ薬らしい。
案内のラダントが、性転換薬を飲むと「ああ」と何処か艶やかな声を出して、胸が膨らみ股間を押さえる。
女の子になっているのか、声が女の子のように変わった。
ネオは…ちょっと引きつつ飲んでみるが
「あれ?」
変化がない。
その前に、視覚情報に
”警告。許可のない変異作用の薬品を感知。ナノマシンで分解、解毒します”
ネオは…………と黙る。
女性にならないネオに受付の魔女っ子さんが
「あれ? どうして変化しないんですか?」
ネオは微妙な顔で
「いや…どうやら…私には…作用しないようだ」
「えええええ!」と驚く魔女っ子さんの受付が「人族の方ですよね?」と
ネオは微妙な顔で
「いや、その人族ではなく、マキナ族ってヤツでな」
と、腕をめくり、腕に広がるナノマシン端子から様々な武器を伸ばして見せた。
受付の魔女っ子さんは
「申し訳ありません。これはお返ししますので…」
と、渡した先払いの札を返してくれるも
ネオは
「このお店ってどういうシステムなの?」
と、聞いて、一応は女の子になったら、女の子か男の子を呼んで体験するらしいので、普通に女の子のリリスガールを呼んで楽しむ事にした。
そうして、奥の待合へ行くと
「ぐへへへへへ、すげぇなぁ、やっぱ、帝都ってくらいだから違うわ」
と、笑う少し髪を纏めた人族の女と
「どうするよ!!」
と、金髪巨乳のエルフ。
天使の輪っかを持つ天使のような金髪の女の子が
「うわぁ…いっぱいいるんですね」
と、三人して話していた。
入って来たネオ達を見て、人族の女が
「おい! 呼んだヤツって! 男がいるじゃあないかーー お前!」
天使の輪っかを持つ天使のような金髪の女の子が
「そ、そんな! ぼく、呼んでないですよーーー」
女体化したラダントが
「自分達は、貴方達と同じ女体化したお客ですよ」
人族の女と、金髪巨乳のエルフ女が顔を見合わせて、金髪巨乳のエルフの女が
「男がいるじゃあないか!」
と、ネオを指差す。
ネオは渋い顔で
「私には女体化の薬が効かなかったんだ」
人族の女が
「オレと同じ人族なんだろう? そんなはずは…」
ネオは右腕を捲って、ナノマシン端子が張っている腕を見せると、そこから無数の武器達の先端を突出させる。
「私は、マキナ族という種族だ」
天使の輪っかを天使のような金髪の女の子が
「へぇ…今まで見た事もない種族ですね」
ネオは
「まあ、この辺にはいない。ここからかなり遠方から来たからなぁ…」
そうして、先に女体化した人族とエルフに天使の三人と一緒に、女の子を紹介本を見つつ選んでいるとネオが
「せっかく、女になったのに…男は頼まないのか?」
それを聞いた人族の女(男)と金髪巨乳のエルフの女(男)と竜族の女(男)のラダントが、驚愕した顔をする。
ネオが困り顔で、え?何か間違った事でも言ったのか?と…。
人族の女(男)が
「それは冗談だけにしてくれよ」
ラダントが
「考えてください。薬で男になっているんですから、間接的に考えれば男と男がやっている事になるんですよ!」
ネオが戸惑いつつ
「ああ…う…うん。なるほど…」
金髪巨乳のエルフの女(男)は
「そういう事だから…女の子を選んで、女の子を体験しようぜ!」
天使の彼女(彼)は黙って見つめていた。
数分後、選んだ一同は。
人族の女(男)は前に試していなかったスライムのリリスガールを。
金髪巨乳のエルフの女(男)は、今度は人族のリリスガールを。
ラダントは、ハーフドラゴンのリリスガールを。
三人は各の一晩楽しむ部屋に向かった。
残されたネオと、天使の彼女(男)は、まだ…紹介本を見ていた。
だが、天使の彼女(男)がネオの背中を突っついて
「あの…ちょっと良いですか?」
ネオが振り向き
「どうしたんだ?」
天使の彼女(男)がホホを染めて恥ずかしそうに
「あの…お相手の女性は…見つかりました」
ネオは首を横に振って「いいや」と
天使の彼女(男)は、かわいい小動物のような顔で
「もし、良ければ…ぼくと…しませんか?」
ネオは訝しい顔をして
「いや、その…さっき…」
天使の彼女(男)は
「ぼくは、天使なんですけど…天使は両性具有なんです」
ネオは暫し考え
「ええ…両性具有…ん! 雌雄同体って事か!」
天使の彼女(男)は頷き
「はい。普段は…その両方を持っていまして、今は…薬で男性の部分が消えているだけで…」
ネオは戸惑いつつ「あ、うん。なるほど」と
まあ、色んな異種族がいるのだから…雌雄同体の種族がいてもおかしくないだろう。
まあ、実際…天の川銀河以外の他銀河でも雌雄同体の民族はいた。
天使の彼女(男)は怯えつつもホホを紅葉させて
「ダメ…ですか?」
ネオは考え
「良いのか?」
その問いに天使の彼女(男)は
「前に、こういうお店を体験した時には、獣人の女性で…擬似的にペニスが付いているハイエナ獣人の方と、した事があるんです。今回の店の紹介本には、そういう方がいませんから…」
ネオは頷き
「分かった。良いだろう」
天使の彼女(男)は安心した顔をして
「ホントですか! ありがとうございます」
ネオが
「ただし、店にそれが可能か、聞いて見てからだ」
と、受付に聞きに行くと、偶に片方が女体化して片方が男性のままで、そういう事をする人達がいるので、大丈夫となった。
なので、ネオは天使の彼女(男)と一緒に、一夜の恋人になった。
ネオと天使の彼女(男)は、ベッドに寝そべり、怪しく揺らぐ火の明かりの中で体を重ねる。
ネオが
「へぇ…本当に女の子みたいだ」
天使の彼女(男)は
「恥ずかしいです。やっぱり本当の男の人だと…」
ネオが笑み
「じゃあ、明かりを消そう」
と、左腕から兵器の一部を消して、部屋を暗くした。
暗い室内では、お互いが触る感覚だけが頼りだ。
なので、ここからは、お互いの言葉しか響かない。
ネオが
「柔らかい。ここはどうだろう」
天使の彼女(男)
「あああ! そんな…あ、ああああああああ、はぁはぁはぁ」
ネオが
「ごめんね。ちょっと荒くしてしまった」
天使の彼女(男)
「そんな…気にしないでください」
ネオが
「一晩は長いんだ。ゆっくり楽しもう」
天使の彼女(男)
「ああ、はぁはぁ、あああああああ! はあああ、ああああうあううああうんん」
天使の彼女(男)の艶やかな声が部屋に響く。
天使の彼女(男)は
「もう、切ないです。お願いです…来てください」
ネオが優しく
「分かったよ」
天使の彼女(男)はネオのモノが入ってくる感覚に
「あああああ! うあああああああーーーー あ、あ、あ、あああ、ああ」
信じられない程の裏返った声を出す。
ネオが
「ごめん。痛かったかい?」
天使の彼女(男)は
「だ、大丈夫です。それより、動いて」
ネオが
「苦しそうだから、まだ少しこのまま、体の固さが無くなってからね」
そして、天使の彼女(男)は
「ん、んん! んんんん、う…んんんん」
ネオが
「ほら、おいで」
天使の彼女(男)が
「そんな優しくされて、ぼく、ぼくーーーー あああああああ!」
ネオが
「疲れたかい?」
天使の彼女(男)は
「貴方も…気持ちよくなって欲しいです」
ネオは
「分かったよ。夜は長いんだ。ゆっくりと焦らずに…ね」
天使の彼女(男)は
「はい…」
と、メスの声を…。
こうして、天使の彼女(男)は…いや、天使の彼は良き思い出を作った。
三日後、獅子食亭がある帝都から離れたロランダ街。
獅子食亭では、ネオを心配する声が聞こえている。
ハーフドラゴンのドリンが
「やっぱり、助けに行こうぜ!」
エルフのレリスが
「最強の竜皇帝を敵に回して勝てますか?」
鬼人族のムラマサが
「だからってネオを…」
ハールリングのルディリが
「もしかして…ネオは…」
不穏な空気が当たりを包む。
ウェイトレスのケニーが悲しげな顔をする。
そこへ「ただいま」とネオが顔を見せた。
「ネオーーーーー」とみんなが集まる。
ドリンが
「一週間もどうしたんだよ! 心配したぞ」
ネオが微妙な笑みで
「本国とこの帝国で色々と折衷してなぁ…。まあ、面倒な事も押しつけられたが…今まで通り、ここで暮らしていけるようになった」
周囲が、良かった良かった。そうかーーーと喜ぶ声を放つ。
ネオがケニーの元へ来て
「ケニーちゃん。色んなアイテムや鉱物とかの情報紙、貯まっているかい?」
ケニーは嬉し涙の笑みで
「はい。今、持って来ますね」
ネオのこの世界での日々が再び始まった。
いや、ネオ・サーペイント・バハムートとしての人生が始まった。
それから二日後…。
とある、こっちで言うリリスガールのレビュー記事が獅子食亭に来た。
ST、人族
帝都のサービスは、すげー。
色んなお店があって、たぶん、人族の人生では回りきれないお店ばかりだ。
ただ、料金システムが前払いで、高額のはイタい。
10点中7点
ZL、エルフ
いやーーー百万を超える人口の都市のサキュバス街は、広大だ。
まるで無限の宇宙を彷徨っているように、ものすごい数のお店がある。
料金が最初から前払いだが、エルフの時間間隔では、直ぐに稼げるので
けっこう、エルフと同じ長寿な種族を見る事が多かった。
寿命が短い種族には痛い出費だろう。
10点中8点
KM、天使
お二人の付添で遠路はるばる、帝国へ来ました。
広大な領土を収める帝国だけあって、その帝都は凄まじい規模です。
エッチなお店もたくさんあって、本当に種類が多くて目移りしてしまいます。
ですが、お気に入りのお店が出来ました。
自分達の街にも同じお店がありますが、そこで出会ったマキナ族とされる方に
いっぱい優しくして貰って、身も心も満たされました。
マキナ族の方にお名前を聞いても、一晩だけの恋人だから…名前はダメだよって。
もし、また何処かでお会い出来るなら…お会いしたいです。
10点中9点
地元帝都民の竜族G
帝都は、本当に色んなモノが揃い、多くの異種族達が行き交う大都市だ。
ここ最近、帝都の内海を結ぶ、巨大な中継港の島が完成する予定が近々ある。
それによって、構築された海運航路によって、より遠方から多くの人達や異種族が来るであろう。
益々、帝都は栄え、それに応じて、もっと沢山のリリスガールの多種多様なお店が増える事は間違いない。
我が帝国民ならず、帝国に来た者達は、必ず一度は帝都へ来るのが当たり前になるやもしれん。
点数は期待を込めるので、記さない。
レビューを見ている獅子食亭の面々が、天使の言っていたマキナ族という単語に目を奪われた。
そう、マキナ族といえば…。
ネオが獅子食亭に来て「ケニーちゃん」と呼ぶと、レビュー記事が載る掲示板にいる面々が、ネオを凝視する。
「んん?」とネオは首を傾げる。
獅子食亭の面々は、ネオに尊敬の念を放っていた。
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