マーブルヒルの日々 其の一


 次の日、マーブル・ヒル・ハウス内の生活やしきたりを、色々とメイブに教わったアシュレイ。

 結構ハードワークな日々を過ごすことになります。


 メイブと一緒の時は本当に雑用が多いのです。

 皿洗いなどは簡単なほうで、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社の手伝いに動員されることも。

 計算などもそれなりに出来るアシュレイは、勤務時間の集計などもさせられたのです。


「電卓、貸してあげようか?」

「電卓って何ですか?」

「簡単な計算機よ」

 アシュレイは初めて電卓などというものを知りました。


 マーブル・ヒル・ハウス内では、このようなものが沢山見受けられます。

 メイブはレディス・カレッジの優秀生、何かの折、ご褒美でいただいたとのことでした。


 このとき、ブラックウィドゥ・スチーム・モービル社から仕事の手間賃など貰い、マッケンジーさんに差し出そうとすると、貰っておきなさいといわれたのです。

 

 とにかく今までの生活では考えられないことばかり、中でも驚いたことは入浴と食事でした。


 マーブル・ヒル・ハウスの食事は朝昼晩で庶民の料理が中心、結構な量がでます。

 食材がよいのかとても美味しいのです。

 その上、備蓄食料というものがあり、毎月、賞味期限寸前のものを均等に分けてくれるのです。


 見たこともないものが多く、乾パンやソーセージ缶が入った戦闘糧食という戦闘団の食料などもありました。

 その中でも某社のシュガーコーティングの粒チョコレートは大変な人気で、皆これが配られると喜んだりします。


 これらの備蓄食料は賞味期限ぎりぎりではありますが、保存期間の一割の半分は大丈夫との説明なので両親に持ち帰る者もいるのです。


 さらに備蓄食料ではないのですが『ロシアティーの日』があり、このときロシアの焼き菓子が大量にだされます。

 なんでもロシア皇帝からの贈り物とかで、毎月貨車ぐらいの木箱で、最高級のロシア菓子が送られてくるのです。


 アリアンロッド宛ですが、これを各コロニーに均等に分けているのです。

 当初は十二フィートぐらいの木箱でしたが、好評なのを聞いたロシア皇帝が、三十一フィートの木箱としてくれたのです。


 さらにはお風呂です。

 信じられないことに入浴は大風呂です。

 なんでもアリアンロッド様が大きなお風呂がお好きで、マーブル・ヒル・ハウスもこれに習うことになっているのです。


 当初、恥ずかしくてモジモジしていたアシュレイですが、今では慣れたようで平然と裸になってはいっています。


 この浴室内は建前は無礼講ですが、やはりそれなりに上位者には軽く挨拶などはします。

 別にしなかったとしてもとやかくいう女はいません。

 不思議なことに、マーブル・ヒル・ハウスの女は告げ口とか、陰湿な行為はしないのです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る