第34話 チェトとお揃いで

 「ではこれね。全部お金でいいのかい?」


 「うん……」


 「きみ、どこから来たの? 見ない顔出し。もし変な冒険者に絡まれたら助けを求めるんだよ」


 「……酔っ払いかぁ。あ、そうだ。携帯ランプってここで買えますか?」


 「いや、ここの街では、冒険者商会には売り物は置いてないんだ。24時間店が開いてるから雑貨屋か魔法道具マジックアイテム屋に行ってみな」


 「うん? 魔法道具屋?」


 「知らないのかい? 携帯ランプには二種類あるんだよ。普通に火を点けるランプと魔力を流し込んで点けるタイプ。魔力を流し込む方は、魔法石が光るから魔力がなくならい限りは消えない。だから冒険者のほとんどはそっちを持っているね」


 「そうなんだ。ありがとう、おじさん!」


 「気を付けて宿に戻るんだよ」


 「うん。って宿に泊まらないけどね」


 「え? だったら野宿かい? お金があるから今日は泊まった方がよくないかい?」


 「え? 自分の家に帰るんだけど」


 「へえ、歩いて帰れる距離なのかい。この街には、住居はなかったよな?」


 僕は首をかしげる。歩いて帰るなんて言ってないのにな。


 「馬車で帰ります」


 「じゃやっぱり宿に泊まった方がいい」


 「なんで?」


 『もしかしたら夜は馬車が走ってないのではないか?』


 「え? 走ってない!?」


 「……? そうだが、誰かと話してるのか?」


 「え? あ、いや。そうなのかなって気がついて……って、ないの!?」


 「当たり前だろう」


 「………」


 僕は、とぼとぼと冒険者商会を出た。

 何の為に、仕事をしたんだ僕は。これなら走って家に帰った方が早く帰れたじゃないかぁ!!


 「とりあえず、魔法道具屋に行ってみよう!」


 『気づいていなかったとは……』


 「うん? 何か言った? チェト」


 『いや、なんでもない。行こうか』


 「うん!」



 魔法道具屋は、楽しい場所だった。不思議なモノがいっぱいだ!


 『ロマド、また変な事にならない為に、買うモノだけを手にとるんだぞ』


 僕が、商品に手を伸ばそうとするとチェトにそう言われてしまった。そういえば、発端はこれだった。

 あの時は、スキルを覚える為だったけど。


 「ランプだよね!」


 チェトが頷く。

 えーと。ランプはっと。

 あった!


 面白い。四角いサイコロみたいな形のがある。これならチェトが出したライトみたいに、全体が明るくなるかも。

 手に取って見てみると、一か所だけ真ん中に穴があいている。


 「そこに別売りのチェーンを付ける事で、色んな場所に吊るす事ができますよ」


 びっくりした。店員さんだ。


 「魔法道具のランプのいいところは、消えない事だけじゃなくて熱を持たない事なんだ。それに水の中でも使える」


 「え? 水の中!? すご~い」


 『凄いが水の中で使う事などないだろう?』


 「あ、それもそっか。でもこれいいね。後は大きさカナ」


 手に取ったのは、15センチ角だ。ちょっと持ち歩くのには大きいかな。出来れば腰に下げたいし。


 「小さいのをご希望ですか? この5センチ角のは如何でしょう。魔力調整付で、明かりの強さを調整できますよ」


 「へえ……って、たか!!」


 「でも優れものですから。チェーンを付けて腰に下げれますし、後は一方だけ照らしたい場合は、この別売りの覆いをお薦めします。これ一方だけではなく、上下だけ隠したりもできますからいいですよ。普段は、全部包んでケースにも出来ます。これにもチェーンがついていますので、直接付けたチェーンと繋げて輪にする事ができますので、引っ掛けられない太さのモノにもぶら下げる事ができます」


 「凄いね! 便利だね」


 「でしょう。首から下げる事もできるでしょう。これなら」


 僕は、うんうんと頷いた。


 『だめだこりゃ』


 「ワンちゃん様にもいかがですか? 一センチ角のサイズ。一緒に買うならこれの分のチェーンはおまけしますよ。小さいからネックレスみたいに、アクセサリーとして買う人もいるんです。あ、お揃いにあなたも一つ一緒にどうです?」


 「か、買います!」


 『おい! われは着けないぞ!』


 「絶対似あうよ!」


 「毎度アリ~」


 「はい。チェト」


 『……着けないといったのに』


 店の外に出て、チェトの首に着けてあげた。

 小さいサイコロランプにはうっすらと表面に色がついていた。チェトの瞳と同じ青っぽいのを僕は赤。お揃いだ~!

 5センチ角のランプはリュックにしまった。

 うーん。実にいい買い物をした。

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