第30話 不運は重なるものなんです

 次の日僕は、またチェトと二人で見回りの後、冒険者の街へ来ていた。

 昨日レベル2のスキルを見てみたけどやっぱり魔法系はなかったんだ。で、色々見た結果、『観察』『確認』『チェック』となんか似た感じで物を見たりするみたいだで、どうせだからとここに来た。

 この街ならいっぱい見るモノがある。


 というわけで、昨日入らなかった雑貨屋に。

 まずは『観察』から。一つのモノを色んな角度から見るを3個。

 うーん空の瓶とかも売ってる。


 あ、採取袋だって。

 手に取って色んな角度から見て、袋の中身も確認っと。これは巾着みたいになっていて、紐を引っ張って閉じるみたい。

 採取セットというのもある。スコップに軍手にさっきの採取袋のセットだ。

 このスコップ凄い! 刃の部分を縦に半分に折って、柄の中にしまえるから小さく出来る! まあ最初から小型だけど。これほしいかも。

 軍手は普通だけど、ちょっと僕には大きいかな。

 スポッとはめてみるとやっぱり大きい。


 ――『観察』の条件が整いました。『観察』を作成しますか?

 ――『確認』の条件が整いました。『確認』を作成しますか?


 あ、もう、二つも条件を達成した。


 「熱心だね。買うかい?」


 「はい……え?」


 ――『観察』のスキルを取得しました。

 ――『確認』のスキルを取得しました。


 おじさん、聞くタイミングを計っていたみたいだよね! ど、どうしよう。買ったら帰れない!


 「あ、でも軍手が大きいから……」


 「それなら小さいのにも交換できるよ」


 「はう……」


 「毎度アリ~」


 こ、断り切れなかった……。まあいっか!

 このセットは、元から腰に着けれる様に袋に入っている。だから腰につければOK。

 少しは、冒険者らしくなったかな。


 『まだかかるのか? 今日は追いかけっこしないのか?』


 「う……あのね、ちょっとだけお仕事を受けて行っていいかな?」


 『いいが。この街で受けるのか?』


 「うん」


 ここの冒険者商会、建物が大きいな。二階まである。

 中に入って驚いた! 人がいっぱいいる! って。なぜか、ジーッと見られてるんだけど。

 チェトかな? 犬連れている人に出会わなかったし珍しいのかも。


 「あの……Eランクの採取ってありますか?」


 「うん? お嬢さん一人でするのかい?」


 お嬢さん? 僕は辺りを見渡したけど、お嬢さんはいない。って僕をジッと見ている? え? 僕の事?


 「……おや、男だったか。まあ、趣味は人それぞれだよな」


 また間違えられた。


 「一応聞くが、モンスターと戦えるのか? 絶対合わないという保証はないんだが……」


 「……だ、大丈夫です」


 「あの~鳥の巣の残骸ってなんですか?」


 Dランクだけど、ちらっと張ってあるのに目が行った。鳥の巣なら木の上だよね?


 「これかい? ここから馬車で30分程行った所から森へ入って更に30分ぐらいの所に、幹が通常の五倍ぐらいある大きな億樹という木があって、そこにある鳥の巣ごと取って来てほしいっていう依頼だな」


 結構遠いな。走ったらどれくらいかかるかな? って、鳥の巣なんて奪おうとしたら鳥に襲われるよね?


 「もう子育てが終わってるはずだから鳥はいないはずなんだが、この仕事は誰もやりたがらないんだよ。やってくれるなら色をつけるよ」


 「色?」


 「少し、多く報酬をあげるって事さ」


 「え? でもなんで、みんなやりたがらないんですか?」


 「その木が凄く背丈が高くそのてっぺんにあるからね。去年の巣も残ってるはずさ。あ、聞くけど一人でいかないよな?」


 「……うん。二人」


 チェトと二人だからね。


 「そうか。ならよかった。大きさはこのサイズだからね」


 そう言って渡されたのは僕がすっぽり入っても余るほどの大きさの袋だった!


 「二人でなら持って帰って来れるだろう。で、これがロープな。持って下りるのは大変だろうからこれで降ろすといい」


 今度は、太くて長いロープを渡された。どうしよう……これ走って行く以前に、重くて無理かも。


 「あ、別に今日中でなくてもいいからな! 宜しく頼むよ。はいカード貸して」


 「あ……」


 首から下げているカードをひょいと引っ張って、請け負いの登録を勝手にされてしまった!!


 「が、頑張ります」


 そういう事で、大きな袋にロープを入れて持って行くことになった。


 『何をやっているのやら……』


 「うー。重いよう」


 これなら夜になってもいいから家に走って帰ればよかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る