第22話 リンリン草でバレました
「きっと、これだ!」
スポッ。
リーン。
よし、これで3つ目、どうだ!
――『サーチ』の条件が整いました。『サーチ』を作成しますか?
「やったぁ! はい!」
――『サーチ』のスキルを取得しました。
「すぐに行かないと!」
僕は、リンリン草を家から持って来た袋に入れて、本と一緒にリュックにしまった。見回りの道に戻った僕は、軽く汚れを落とすと、ダッシュだ!
□
「ただいま!」
「お前なぁ……うん? どこへ行ってきた?」
「ちゃ、ちゃんと見回りをしてきました!」
ユイジュさんに問われ、答えた。嘘じゃないもん。
「それはわかっている。それ以外にどこに行ったか、聞いているんだ」
「ど、どこにも……」
「嘘つくな」
ユイジュさんは、僕を指さした。
「袖と足、それに靴に泥。見回りだけしたのならそうはならないだろう?」
「こ、転んだんだ!」
「お前、転んだって、靴の泥は……」
「ユイジュ、ロマドが一生懸命に隠そうとしているんだ。汲んでやれ」
ダダルさんが、カウンターから出て来てユイジュさんの肩に手を置いて言った。隠そうとしてって……思いっきりバレてる。
『我にも隠そうとしたな? 何しに行った』
「言えない! チェトの為だから!」
『我の為? うん? この臭いは! 我は、そのかばんの中に入りたいぞ』
「え?!」
ぴょーんと僕の肩までジャンプした。そして、リュックを開けようとしている!?
「ダメだってば!」
「おぉ、凄いジャンプ力だな」
うん? チェトが浮いた?
そう思ったけど違った。チェトの胴体を後ろからダダルさんが持ちあげていた。それでもチェトは、リュックを咥えて離さない!
「ダメだってチェト。リュックを離して!」
僕は、リュックを下ろして引っ張った。
「ロマド、リュックの中に何を入れて来たんだ?」
ユイジュさんに問われるも教えられない。だって採りに行った理由も言えないから。
『リンリン草を採りに行って来たな』
「え? 何で分かったの?」
『臭いでわかった』
「わかるだろう、そりゃ」
「うん? ユイジュさんもリュックにリンリン草が入ってるのわかったの? なんで?」
「はぁ? リンリン草? なんでそんな物……」
「とりあえず犬ころ、リュックを離そうか?」
ダダルさんが少し凄んで言うと、口を開いてチェトは大人しくリュックを離した。
『我を後ろから捕らえるとは! リンリン草に気を取られていたわい』
僕は、ホッと胸を撫で下ろす。
「で、何に使う気だ? お前には必要ないものだろうが」
「うん。まあ……もう必要ないかも」
ユイジュさんに言われて気がついた。別に持って来る事なかったんだ。サーチを覚えたんだから捨てて来てもよかった。
「僕ってバカだ……」
「今頃気づいたのか……」
ボソッと、酷い事をユイジュさんが呟いている。
「この前、教えただろう? 危ないからダメだって。また、犬ころと遊ぶつもりだったのか?」
ダダルさんの問いに違うと首を横に振った。
「じゃなんだ?」
今度はユイジュさんが聞いて来る。
ど、どうしよう。嘘ついてもすぐバレちゃうし……。
きっと教えないと、ユイジュさんパーティー組んでくれないよね?
「スキルを覚える為……」
「は? スキルって何のスキル?」
「サーチ……」
『なるほど。昨日言いかけたのは、それか!』
「だって、言ったら連れて行けって言うでしょう? チェト、これ本物のリンリン草だから食べたら死んじゃうんだよ!」
「サーチって……誰にそんな嘘を吹き込まれたんだか、はぁ……」
『犬ではないと言ったのに……はぁ……』
ユイジュさんと一緒に、チェトまでため息をついている。
「取りあえず、詳しく話を聞こうか。放って置ける内容じゃないからな。全く誰だ、変な事をロマドに吹き込んだのは……」
そう言って、ダダルさんはなぜか玄関のドアを閉めてカギを掛けた。
「これで誰にも聞かれない。俺達も誰にも言わないからちゃんと話せ」
「………」
「心配して俺達は言っているんだ。普通は、絶対に騙される内容じゃないからな!」
それって、僕だから騙されたって言っているのと同じなんだけど~。
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