スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜

第1話 熟練度が増えません

 この世界はどんなスキル持ちかによって、人生が決まる。そんな世界に生まれた僕が、手に入れたスキルは、『スキル錬金』だった――。



 スキル『鑑定』を持った者が、毎年村にやってきて、若者を鑑定する。

 ノレノズ国では、12歳から鑑定をしてもらう。早い者でその年からスキルが現れるからだ。

 魔法系なら魔法学園に無料で通える。

 武術系ならモンスター討伐指南所で、訓練を無料で受けられる。

 鑑定、錬金術、など特殊なスキルの場合は、国立育成学校に入学できる。ここに入れれば、一生を約束されたようなものだ。


 僕は、4度目の鑑定を今から受ける。

 まあ大抵な者は、ほとんど村に残る様なスキルだ。農耕スキルだったり、料理だったり。

 あってもなくてもっていうスキルだ。


 スキルに熟練度があり、一定の条件の元で上がる仕組みだ。

 料理なら材料を切るだけでも熟練度が上がるらしい。


 あ~~ワクワクする!


 「では、ロマド・エリザール」


 あ、呼ばれた!


 「はい!」


 返事を返し、鑑定師の前に立った。

 不思議な事に、足元に魔法陣が浮かび上がり、僕を淡く照らす。


 「こ、これは!」


 うん? この反応はもしかして? 鑑定か? 錬金術か? それとも魔法?


 成り行きを見守っていた村の皆も鑑定師の次の言葉を待っている。


 「スキル錬金だ」


 「錬金! やったぁ!!」


 「待て、喜ぶのはまだ早い。スキル、錬金ではなく、『スキル錬金』というスキルだ。詳細を確認するので待ちなさい」


 「あ、はい……」


 スキル錬金だって錬金術だろう? やったぁ! この村初の国立育成学校行きだ!


 「うーん。少し相談してみるので、待つがよい」


 そう言うと、連絡係に何やら話している。一体僕の詳細は、どういう内容だったんだろう?

 連絡係も連絡出来るスキル持ちの人だ。


 「少し試したい。聖水を」


 鑑定師がそう言うと、僕の前に聖水が入った瓶が置かれた。


 「これをあげよう」


 「え? あ、はい。ありがとうございます?」


 素直に受け取った。これをどうすれと言うのだろうか?


 「うーむ。変わらないな。蓋を開け、聖水自体に触れてもらって宜しいか?」


 「え? あ、はい」


 辺りは何をしているのだろうと、僕達のやり取りをジーッと見ている。


 聖水の瓶の蓋を開け、瓶を傾けて出て来た聖水を手に掛けてみた。これでいいんだろうか?


 「これでもダメか。では、薬草を」


 僕の目の前に今度は薬草が置かれた。一番ポピュラーな、ライラ草という薬草だ。錬金術で一番最初に練習するという、傷薬に使われる材料だ。


 「それもやろう。手に取るがよい」


 「はい……」


 なんだかなぁ。何を調べてるんだろう。段々不安になってきた。


 「これでもだめか。うーん」


 「あの? 何を調べているんですか?」


 「君のスキル錬金の熟練度を上げる為には、スキル錬金の材料を手に入れる事らしい。一度も行った事がないスキルは、熟練度ゼロだからな。錬金術に使う材料を手渡してみたのだが、どうやら手に入れるという認識が、手にするだけではダメのようだな。悪いがもう少し待つ様に」


 「……あ、はい」


 そういう事か。どういうものかわからないから検証していたって事か。普通の錬金術じゃないって事? え~~! 錬金術なのに、錬金出来ないの?


 「後で、錬金術に使う材料と機材をあなたの元に届けますので、色々試してみて下さい。それで試したつど、この熟練度メーターで熟練度数を計って下さい。そして、熟練度が上がったやり方を後ほど教えて頂いて宜しいですか?」


 「え? わ、わかりました」


 あれ? このままだと僕は、錬金術師になれないの?

 僕は、熟練度メーターを手に愕然とするのだった。

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