第10話 俺が勇者だ

 魔王を倒したアンソニー。

だが、モンスターたちは世界中から消えなかった。

安息の地を求めて、ハイジャンの元へ帰るはずのアンソニーは、未だに魔王城に居た。


 魔王城から、世界の行く末を見ていた。

勇者として、モンスター退治に出るものいいだろうと思ったアンソニーだったが、

アンソニーの独り言は、更に極みを増していた。


「俺は、勇者だ!」

「俺が、勇者だ!」

「俺が、世界中を救ったんだ! だから俺が偉い!」

「俺が、俺が!俺が!世界に示してやる!」

「俺が勇者だということを!」


 魔王を倒したと、情報が世界中に流れたにもかかわらず、

世の中のモンスターたちが消えないのは、不思議だと

またモンスターを倒すための組織が世界各地で増えていった。


各地に現れる「俺こそが勇者だ!」という人物たち。


 今度は、大勢の勇者が出現した。

世界の平和を守るために、世界各地に「俺は勇者だ!」と言う人たちが。


そして、モンスターたちが、次々と倒されていった。


人々は各地に点在する勇者を崇めた。

そんな人々が崇めた事によって、

本当の勇者であるはずのアンソニーが怒りを露わにした。


「俺は力も名誉もある偉大な勇者だ!何故もっと俺様を崇めない」と・・・。


「真の勇者は俺だ! 世界に点在する勇者など、俺が滅ぼしてやる!」

と、勘違いをした勇者アンソニー。

 そして、世界に点在する勇者の元へ行き、首を狩る日々が続けられた。


人々は、その勇者アンソニーの事を恐れた。


「奴は、本当に勇者なのか!? 村長! このまま放っておいていいのか?」

「うむ! しかし、わしらが手を出せる相手ではない……」


 世界各地で、暴動が起きた。


「勇者を殺せ!」と……。

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