第1節2話

ファンタズムボウル。


それは、神々から戦争を禁止された世界で、人間が編み出した代理戦争。


ファンタズムボウルは、半年間のシーズンで優勝した国家が、世界を統治する権利をえる。


そして、上位プレーオフに進出した国家には、統治監視国として、世界を統治する権利を獲得する。


死者の出ない代理戦争。スポーツとしての娯楽。ファンタズムボウルは代理戦争でありながら、神や人々を熱狂的な支持を得た。




各国はチームを強化し、優勝をする為に、様々な分野から超一流のプレイヤーを引き入れる。


ある国は、カレッジファンタズムボウルのチャンピョンを。


またある国は、チェスのグラウンドマスター。


他にも、総合格闘技バトルアスリートのチャンピョン。カウガール。シャーマン。アサシン。冒険者。魔法少女等、各分野の超一流を引き入れ、チームを強化していった。




そしてここに、甲子園準優勝投手である、サワタリ・カズミが召喚をされる。異世界に召喚をされたカズミは、カゼカミ国の選手として。異世界の代理戦争に、巻き込まれていくのだ。




はあ・・・どうして、こうなったのだろう


異世界迷いこんだ少年、 沢渡和巳さわたりかずみは、何故かファンタズムボウルと言うスポーツをする事になるようだ。


まさか、足下に転がって来たボールを、正確に投げ返した事が原因で、入団させられそうになると言うこのような事態を、誰が想像しただろうか?






「つまり僕は、ファンタズムボウルの選手として召喚された。

ファンタズムボウルで、上位入賞か優勝をすると、その国には世界を統治する権利が与えられる、こんな認識でいいんですね」




「そういう事だ、もしチームに入ってくれれば、衣食住のバックアップを保証するし、給料も出る」




「もし僕が、断ると言ったら、どうなりますか?」




「おかしいな?召喚門を潜るために、君はこの世界に来るために強く願ったはずだ、スポーツをやりたいと」




「な、何でそれを!」




赤髪の少女の言葉に、カズミは狼狽える。




「召喚門は、神と契約した者しか潜る事はできない。それが答えだよ」




「じゃあ・・・断る事も、元の世界に帰ることも・・・・・・」




「プレーオフに進出しワールドファンタズムボウルに進出すれば、1年。

プレーオフに進出出来なければ、3年て所か」




「最長3年・・・こんな異世界で。嘘でしょ・・・・・・」




カズミは、悩んだ。提案を受け入れるか、断るか。


もし断れば、何も知らない異世界に放り出されるだろうか。


そうなれば、異世界のモンスターに襲われるか。追い剥ぎ等の強盗に会い、のたれ死ぬか。


最悪の事態だけは、何とか回避しようと考えた。




「わかり・・・ました、お世話になります」




赤髪の少女は上機嫌になり、カズミの肩を、バンバンとたたく。




「よろしく!ああ、君の名前は?」




沢渡和巳 さわたりかずみ です」




「よろしく、カズミ。そしてようこそ、ファンタズムへ」






場所は変わり、ここはロッカールーム。


これから、自己紹介とミーティングを、行うようだ。


和巳は、ロッカールームの豪華さに、圧倒されていた。


プロなので、個人のロッカーは当然たが、百人くらい居ても、余裕のあるロッカールームの広さ。


革製のソファーに、巨大なテレビにビデオデッキ。ここは、異世界なのか?それとも、元の世界のスタジアムなのか?


異世界とはほど遠い、機械仕掛けの施設。カズミが困惑するのも、無理は無かった。


床にはチームのエンブレムだろうか?巨大なヤタガラスと、チーム名が、描かれている。




「なになに、カゼカミ・ 39ers サーティナイナーズ と、読めばいいのかな?」




「よし、全員集まったな!ではこれから、自己紹介を始めたいと思う」




すると、先ほどの赤髪の少女が立ち上がった。




「私はイリーナ・バニンク、ポジションは

オフェンスの時はTEタイトエンド|。

前衛ラインにおける何でも屋で、相手とのバトルに始まりレシーバーまで、何でもやるのが私の仕事だ。

ディフェンスの時はDEディフェンシブエンドだ。(守備時における 前衛ライン外側の選手で、外側に走ってきた選手を止めたり、隙を見て相手後衛の選手を攻撃するポジション)

よろしく頼む」




イリーナは、和巳に握手を求めようと、手を差しだした。


改めて見ると、白いレースのビスチェにジャケットを羽織り、ショートパンツと言う薄着の装備だが、右足と右腕だけ、アーマーを装備している。


しかし、このイリーナと言う少女。彼女の胸部の膨らみ。


それは人生に置いて、見た事の無い大きさだった・・・・・・・・・

カズミは思わず、ビスチェの凄まじい膨らみを、まじまじと見てしまいそうになる。


いや、これ以上見続けたら不味いだろう。ここはリラックスだリラックス。




「どうしたんだ?サワタリ」




「いや、特に何も」




「それなら良いが」




カズミの反応を見て、腑に落ちない表情を見せるイリーナ。


ふー、危なかった。あの巨大な胸を見ていたの、多分ばれていないよな。多分・・・・・・


けど、イリーナのファッションや武器を装備しているのを見ると、ここは異世界なのだなと、実感をするな。


異世界での初体験に、ただ驚くばかりのカズミであった。




「えっと、沢渡和巳さわたりかずみ 、よろしくお願いします。友達からは、サワタリとか、カズミと呼ばれています」




「カズミだな、よろしく頼む。私のことは、イリーナと読んでくれ」




「次は、俺だな」




今度はビゲがフサフサで、まるで丸太のような、首と手足の男性が立ち上がった。




「キーン・フラール、ドワーフだ。仲間からは、ダブルシールドのキーンと呼ばれているよ。

ポジションは、Cセンター兼、DTディフェンシブタックルを勤めている(守備時における 前衛ライン中央の選手 )

よろしくな、カズミ」




「次は、私ですね・・・」




すると、巫女装束の小柄でスレンダーをな少女が静かに立ち上がる。

スラッとした手足は、少しでも力を加えれば、ポキンと折れてしまうのではないかと言う細さだ。



「スズネ・カミジョウです・・・

ポジションはBLブレイカー、貴方の世界で言う魔法使いと言ったところでしょうか・・・ 」




前髪を眉が被る位で真っ直ぐ整え、後ろ髪は腰まで伸ばしたロングヘアー。

大和撫子と言った雰囲気の少女だった。


この子は何て言うか、無表情と言うか・・・・・・いや、冷たい雰囲気と言うのかべきかな。


スズネはイリーナとは正反対で、必要最低限しか話さず、まるで氷の様な印象を与える少女だった。



その後も自己紹介が続いたが、流石に40人以上居る為か、紹介だけで一時間近くも掛かった。




「最後に俺だな」




白く染まったあご髭で、初老の男性が立ち上がった。




「ゴルド・ホプキン、選手兼ヘッドコーチだ。よろしく頼むぜ、カズミ」




「こちらこそ、よろし・・・ん、選手!失礼ですが、おいくつですか?」




するとゴルドは、ガハハッと豪快に笑い始めた。




「やはり言われちまったか。まあ、慣れてるからいいさ。今年で50才になる」




ご50才!この人は山○投手よりも年上なのかと、声に出しそうになったがそこはグッとこらえた。


ゴルドの体を見ると、ボディービルダーのように、引き締まった筋肉で、徹底管理された肉体だ。


それを見ると、確かに現役だと言うのも頷ける。




「それと、俺をヘッドコーチと呼んだら、罰金な。

みんなからは、ゴルドさん、おやっさんと呼ばれている。後、クソ親父と呼ぶのは、勘弁してくれ」




すると、メガネに金髪を後ろで結んだ、白衣の女性が立ち上がった。


イリーナ程で無いが、彼女の胸部もかなりの大きさであった。


先程と同じ事を繰り返さぬよう、目線を彼女の顔に移す。




「そこは、アンタがクソ親父と呼ばれるような事を、しているからだろ?」




「クラリス。クソは止めろと、言ってるだろう」




「ドクターの忠告を聞けない奴は、クソで十分だ。

おっと悪いね、あたしはクラリス・ホプキン、ドクターだ。よろしくな」




沢渡和巳さわたりかずみ、です。よろしくお願いします」




「まあ、口の悪い娘だがドクターとしての腕は確かだ。さて、自己紹介も終わったし、ミーティングを始めるぞ」




ルール説明を兼ねたミーティングは、2時間ほどかかり、終わる頃には僕は、ヘロヘロになっていた。




「えっと、ファンタズムボウルのルールは、こんな感じで良いですか?」




みんなの目線が、僕に集まる。




「4回の攻撃で、10ヤード以上進めば、攻撃を継続。10ヤード以上進めないか、ボールを相手に奪われると攻守が交代」




うんうんと、イリーナが頷く。




「相手に、攻撃の権利を渡さず、エンドゾーン(ゴールのようなもの)に持ち込めばいいんですね」




今度は、ゴルドが頷く。




「そして僕の役割は、相手の守備陣形を見ながら、味方にパスをする、 QB クォーターバックと言うポジションですね」




すると、ゴルドが満面の笑みを浮かべた。




「OK。この短時間で、そこまでルールを把握出来れば十分だ」




カズミはほっと胸を撫で下ろしたが、まだ不安に思う所があった。


もし僕が判断出来なくて、失敗したらどうしようか。


不安そうな表情で、青ざめたていた和巳に対して、ゴルドはあるものを渡した。




「これは、インカムですか?」




「そうだ。ファンタズムボウルはインカムで情報伝達する事が出来るスポーツ。

だからカズミに対して、俺が指示を出すから、最初は指示通りやればいい」




なるほど、キャッチャーがピッチャーに指示を出すかんじか。


それなら何とかなるかもしれない。




「いいか、カズミ。お前さんのパスは、プロでもトップクラスだ物だ。

後は、自信を持ってプレイをすればいい」




多少、大げさに言ってるのかもしれないが、カズミは自信のスキルを誉めて貰えた事が嬉しかった。


こんな気持ちは、いつ以来だろうか。




「ゴルドさん。僕、頑張ります!」




「よし、そのいきだ。さあ、言ってこい!」




一同「オッス!」




これから、どんな困難を迎えるか分からないが、頼もしい仲間がいれば、何とかなるかもしれない。そう思った、カズミであった。


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