題名「未決定」 以後決まり次第訂正予定

純恋

一投稿目

2020年1月19日↲

 暗闇は、居心地がいい。嫌いな自分も、汚い空も全て覆い隠してくれるから。光なんて懐中電灯さえあれば十分だ。歩くとき足元を照らすだけの光があればいい。気が向けば、少し先を照らそう。やっぱり、なんにもない。よかった。ただ暗闇が続くだけ。そんな安心を与えてくれる。暗闇が続くほど安心なことはない。


「外に出ればいいのに…」

「外に出れ…。」


そんなことを囁く声が聞こえた。誰かが言った音の残響は、化石となって僕の耳の奥に何度も何度も響きとなって反芻する。あぁ、消えてしまった。


「外?そんなところ言ったってしょうがない。暗闇なら襲われても怖いと感じる前に死んでいるし、遠くの獣におびえる必要もない。何より眩しくって目が開けられないよ。」


残響に話しかけても、何もかえってこない。ただただ自分の声がむなしく響く。


「外?そんなところ言ったってしょうがない。暗闇なら襲われても怖いと感じる前に死んでいるし…。」

「外?そんなところ言ったってしょうがない。暗闇なら襲われても….」

「外?そんなと….」


音はお互いに打ち消しあって、消えていく。消しているのは自分の声で、消えているのも自分の声、何も寂しくはない。音は何も聞こえない。ただ手元の懐中電灯がカチャカチャと音を立てながら、足元をゆらゆらと照らしている。



ぱたんとパソコンを閉じて、カバンに押し込み外へ出た。今日書いたポエムは意外と悪くないな。そんなことを考えながら足元を見て歩いていると、にやにやしている自分に気が付いた。なんて気持ち悪いのだろう。身震いをしながら今日のスケジュールを頭で反芻する。あぁ、もうこんな季節か。青く澄み渡った空は、寒さで凍る木々上から押さえつける。夏は緑でよくも目立ってくれたね。そんなことを叫ぶように青さを増している。自分の力ではなく、太陽の光で青く染めてもらっているだけなのに、まるで自分の青さのように勝ち誇った顔をしている空の青が僕は大嫌いだ。


あぁ、今日も眩しいなあ。目を細めながら見た太陽は、今日もただただ光り輝いている。

「美しいなあ。」

「美し…。」

「美…。」



僕はぽつりとつぶやいた。

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