22話 最上位魔法くらいなら簡単なものは使えるよ
「でも、リーノ君の家に入れないのか……」
少し残念そうな表情を見せてくるシーナ。でも、僕の家に入れないとなると宿に泊まるしかないかな。
「それじゃあ二人とも、今日のところは宿で泊まろうか?」
「うん、そうだね」
返事をしてくれたのはシーナだけだった。
マシェの方を見てみるとすっかり本を読むのに必死になって周りが見えていないようだった。
「……ここはこうすればよかったんだ」
うんうんと頷きながら目を輝かせるマシェを見るとなんだか声を掛けづらくなった。
ただ、そんなマシェの状態を気にもせずにシーナが彼女の肩を叩いていた。
「マシェ、行くよー!」
突然声をかけられてマシェは飛び跳ねそうなほど驚いていた。
「……う、うん――」
恥ずかしそうに頷くマシェ。
「そうだね。宿に着いたらゆっくり本を読んでくれたらいいから、歩きながらは危ないよ」
「……わかったの」
マシェが本を畳んだのをみて、僕たちは宿屋へと向かっていった。
◇
「いらっしゃい。あっ、リーノ君。珍しいね、泊まっていくの?」
「えぇ、お願いします」
宿屋で受付をしていたのは僕より数歳上の少女だった。
昔から宿の受付をしていた少女で僕の顔見知りだったけど、いつも家に帰っていたから泊まっていくのが珍しいようだった。
ただ僕の後ろにいる二人をみて概ね察してくれたようだった。
「そうだね……。一部屋銀貨一枚だよー。何部屋とる?」
「二部屋お願いします」
当然のように答えると少女が部屋へと案内してくれた。
「では、ごゆっくり……」
早速部屋に入っていく。
中は質素な作りでテーブルと椅子、あとはベッドが二つ置かれていた。
そして、当然のように僕の後に続いてくるシーナとマシェ。
「……なんで着いてくるの?」
わざわざ二部屋とってるんだから普通は男女で別れるよね?
「私はリーノ君と一緒の部屋でいいよ」
「……私もリーノにはいろいろ聞きたい」
笑みを見せてくるシーナと本をギュッと抱きしめながら上目遣いで見てくるマシェ。
「それなら後から来るといいよ。せっかく部屋は二つとったんだから別でいいよね?」
きっぱりというと残念そうに部屋を出ていった。
ただ、本当に荷物だけ置いたらすぐに僕の部屋に集まっていた。
「それでリーノ、ここに書かれてる最上位魔法の使い方……だけど、全く詠唱が載ってないの」
「うん、詠唱自体がないからね」
そのことを伝えるとマシェが驚いていた。
「……もしかして使える?」
「えっと……」
少し答えすぎたかな? でももうバレてしまってるみたいだし、今から使えないというのもおかしいよね。
「まぁ、簡単なものならね」
「……すごい」
マシェが目を輝かせてくる。
「……私にも教えて!」
グッと近づいてきて、僕の手を握ってくる。
「そ、それなら私も教えてほしいな」
シーナも慌てて言ってくる。
まぁ、前にしていた詠唱破棄の練習みたいなものだもんね。
「別にいいけど、学園に戻ってからにしようね」
流石に最上位魔法となると周囲にかなりの被害が出る。ただ、訓練場なら被害が出たとしても直ってくれるわけだし、遠慮する理由もないもんね。
そのことを確認するとマシェたちは頷いた。
そして、翌日になるとギルドのお姉さんが慌てた様子で僕の泊まってる宿へとやってきた。
「あ、あの、リーノ君はまだいますか!?」
「えぇ、まだ泊まってますけど、どうかしましたか?」
「その……。魔物が……。ただ、大きな声では言えないので、できたらリーノ君だけを呼んでくれたら……」
そんなやりとりが聞こえたので、僕は宿の受付へと向かう。
「どうかしましたか?」
「あっ、リーノ君、ちょうどいいところに。今すぐにギルドに来てもらっていいかな?」
「わかりました。それじゃあすぐにシーナたちにも……」
「いえ、
そのことを聞くと概ね事情を察する。
「それじゃあシーナたちに気づかれる前に行きましょう」
◇
僕たちは冒険者ギルドにやってきた。
「それで何があったのですか?」
「その……、すごく言いにくいことなんですけど、またSランクの魔物が現れたんですよ。流石にうちにいる冒険者たちだけじゃ相手にできなくて……。リーノ君の力を借りてもいいですか?」
「わかりました。それでその魔物はどこにいますか?」
「ここから一日ほど歩いた先にある山脈ってわかりますか? そこに炎を纏った鳥、ファイアフェニックスが出たのですよ」
不死鳥と言われる鳥か……。
「あれっ、でも、ファイアフェニックスはあまり人を襲う魔物ではないですよね?」
「そのはず……なんですけどね」
お姉さんが顔を伏せる。
なるほど、その異変も合わせて調べてほしい……ってことなんだろうな。
「わかりました。少し行ってきますね。ただ、その間、シーナたちがおかしく思うかもしれませんので、誤魔化すのを手伝ってください」
「それは……大丈夫。彼女たちなら」
何か確信的なことでもあったのだろうか。
とにかく、それなら安心して向かうことが出来るね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます