16話 剣って切れるものだけど?
次に僕たちは道具屋へとやってきた。
「ここでは何を買うの?」
「薬草とかだよ」
「……普通だね。リーノ君ならもっと変わったものを買うのかと思ったよ」
一体僕をなんだと思っているのだろうか。
店の中に入るといろんなものが置かれていた。
薬草やポーションといったものの他に普段使うような羽根ペンやインク、紙といったものなども置かれていた。
えっと、値段は……薬草一つ銅貨八枚なんだ。それで、ポーションは……銀貨五枚もするの!?
効果自体はそこまで差はないはずなのにあまりの値段の違いに驚いてしまう。
ただ、今回は自分で作るから薬草だけで良いよね。
いくつか薬草を抜き取るとそれを店員に渡す。
もちろん先ほどみたいに驚かれないように今度は銀貨を渡しておく。
すると思いのほかスムーズに買い物を終えることが出来た。
◇
「さて、僕の欲しいものは買えたし、次は魔道具屋へ行こう」
「本当にいいの? ただ見るだけなのに」
シーナが不安そうに聞いてくる。
「うん、僕ももう用事が終わったからね。こうやって見に行くのも楽しいよね」
僕が笑みを見せるとシーナは嬉しそうに大きく頷いていた。
そして、案内してもらったのはまるで宝石屋のような場所だった。
手のひらサイズの大きさの石。色は様々で確かにシーナが欲しがるのも分かる気がする。
ただ、込められてる魔力はそこまでいいものではなさそうだ。
せいぜい初級クラスの魔法……。
これなら僕の方がもっといい魔道具を作れそうだ。
「やっぱり魔道具は綺麗だね……。いつか私も魔道具を買えるようになりたいなぁ……」
魔道具を見て、惚けていたシーナ。
「それなら僕が作ってあげようか?」
「えっ、リーノ君、魔道具作れるの!?」
すぐ目の前まで近づいてきてじっと僕の目を見てくるシーナ。
「うん、ただそこまですごい効果は期待しないでね」
「ありがとう、リーノ君! 楽しみに待ってるね」
シーナが本当に嬉しそうに満面の笑みを見せてくる。
あれだけ喜んでくれてるんだから、できるだけ使えるものにしてあげたいな。
そんなことを考えながら残りの時間、シーナと二人で町を見て回った。
◇
一日町を見て回ったあと、部屋に戻ってきた僕は早速買ってきた剣を取り出した。
少し古くなった普通の鉄の剣。
武器としての使い道はあまりないだろうけど、僕がしたいことを試すにはちょうどいい。
早速、その剣をテーブルに置くとそれに魔力を加えていってみる。
ただ、あまり力を込めすぎるとバレた時に困るかなとほどほどの力を込めていく。
しかし、しばらく込めたあとに剣はポキッと折れてしまう。
あの青白い光を出す前に……。
古くなっている剣じゃダメなのだろうか?
もう一度別の剣を取り出すと同じ要領で魔力を込めていく。
ただ、結果は同じだった。
木剣なら簡単に込められたんだけどなぁ……。
力を抑えたらダメなのかも。
でも、力を込めすぎたらまずいよね……。まぁこの部屋の中では大丈夫かな。
試しに思いっきり魔力を込めてみる。
すると激しい衝撃とともに鉄の剣が青白く光っていく。
そして、その光が収まるとなぜかそこには短剣が転がっていた。
先ほど魔力を込めた影響か、刃の部分には模様のようなものが描かれていた。
これでうまくいったのかな?
軽く短剣を振ってみる。
すると、まるで体の一部かのように軽々と振り回せる。
軽く魔力を込めてみるとすぐに青白く光る。
先ほど無理やり魔力を込めたことで、魔力が込めやすくなったのかな?
でも、普通の剣が短剣になってしまうのは失敗に思えてしまった。
まぁ、このくらいの長さの方が僕には使いやすいしいいかもしれないね。
とにかく次の日、その短剣が実際に使えるものかを確かめるためにアデルに付き合ってもらった。
「剣を確かめるのはいいが、絶対に魔法を使うなよ」
相変わらず念を押してくるアデル。
「大丈夫だよ。今回はこの剣を本当に使えるか知りたいだけだから」
「それならいいが……、俺は普通の剣でいいんだな?」
「うん、大丈夫だよ」
心配そうに答えるアデルに僕は頷いた。
「それじゃあ訓練を始めるね。二人とも、準備はいい?」
シーナが確認をしてくるので、僕たちは頷く。
「それじゃあ、スタート!!」
シーナの合図とともにアデルが剣を振りかぶって、僕に近づいてくる。
そして、そのまま剣を振り下ろしてくるので短剣でそれを受け止めようとする。
スパッ。
「えっ!?」
受け止めたはずが、そのまま軽くアデルの剣を切ってしまった。
そのことを驚いたアデル。
「うん、結構使いやすい剣だね」
思いのほか使いやすい剣に納得して、頷いていた。
「いやいや、おかしいだろ! なんで剣が切れるんだよ!」
「剣って切れるものだけど?」
魔物が切れるんだから鉄くらい切れてもおかしくないよね。
僕のその回答にアデルたちは思わずため息を吐いていた。
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