〜無情の紫陽花〜

しゃけ

募る度に

私には夢がある。幸せに暮らすこと。誰よりも。


どれだけ不幸であっても、きっと幸はくる。

絶対。

絶対…


目を覚ませば彼らは私を「失敗作」と呼ぶ。

ありもしないつぼみが私に絡みつく

小さな花は私に問いかける。

「シアワセ?」


うるさい、黙れ、これ以上


言わないで…


幻覚とわかっていながらもいつも見るものはこれだった。

煌めく赤色が見える。これは幻覚?

パッとまぶたを開けると綺麗な紅色の瞳に、白く首を垂らした花に赤く食べられてしまいそうな花を背負った少女。


どうやら錯乱している。聞こえるか分からないけれど、小さく話しかけてみる。

「ねぇ、大丈夫?」


「ん…だ、誰?」


この壁越しでも話は出来るのね。

「わたし、紫陽花!って言っても自分でつけたんだけどね…」

家族との記憶も、今までも自分も、言えば生きていた記憶すら何も無い。


は少しキツイことを言ったりもするけど、悪い気分にはならなかった。


だって彼女も私と同じ”失敗作”だと思ってたのだから。


「あの子はいい出来だ」


「今までで1番の実験体だよ」


「素晴らしい」


そんな…そんな…!!

ひどい!私には…そんなこと一言も言ったことない!!どうしてあの子だけ!?!!憎い!!憎い憎い憎い!!!!!!!

私を犠牲にして、あの子を作ったって言うの?!?!?


ふざけないでよ!!!!!!!


…晴らしてやる。絶対に。


幸せになるのは私。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「緊急事態を報告します。実験体No.1が脱走しました。研究員が19名負傷。加え研究員が実験体No.2を故意的に逃がしました。直ちに本部に連絡してください。」



「はぁっ…はぁっっ」


自分から漂う血の匂いと流血。

左眼はもう見えず、砕けたガラスで頭を切った血が絶えなく。


明日まで、路地裏に居座る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る