第55話 連行

白石が、警官たちに言った。

「私立探偵事務所を開いている蛇喰は、昔大阪府警の刑事だったんだよ。腐れ縁のような感じだ」

「そうでしたか。あのあそこに停まっているベンツに、株式会社ハンナリマタリーの社長の西崎美咲さんが乗っています。私立探偵事務所の依頼人です。それと秘書の嶋田詩織、運転手の谷河口定雄が乗車しています」

年配の警官が自分がバインダーに書き込んだ文字を見ながらそう言った。


「西崎氏は、ここ最近周りで起こる出来事が気になったため私立探偵を雇った。そしてそれが、蛇喰探偵事務所で本日は、西崎氏の営業活動に同行し活動を終え、大阪から京都に帰社途中にこの阪神高速守口線に乗って暫く走っていると、3人のライダーの容疑者に襲われたとのことです」

白石が、「なるほど」と呟いた。

「日本刀やゴルフクラブで襲撃されたため、ベンツGLEの運転手が危機感を感じ必死に抵抗しているうち、容疑者3名と事故を起こしたそうです。容疑者3人のうち2人が逃走し、バイクを置いて逃げ去っています。後の1人の女性の容疑者を確保し、救急車で搬送するようですが、何分意識が無く非常に微弱な呼吸しかしてなかったとの事で助からない可能性が高いですね」


「西崎氏が、探偵を雇わなけばならなくなった最近この周りで起こった気になる出来事とは?」

白石が警官に訊ねる。

「Googleサイトで、嫌な書き込みや、メールが届いた後、先程襲撃してきたライダーたちと思える連中に、彼女が経営するエステサロンに石を投げ入れられたらしいです」

「投石か」

白石が顎をさすりながら何事かを考えていた。鑑識官が、Ninjaのライダーが振り回していた刀を白手袋をした手で持って来た。白石がそれをチラッと見て訊ねた。

「突然、その刀を持って襲って来たのか?」

「普通バイクに乗って持ち歩かない物だろう?ゴルフクラブもそうだが」

そう言うと、更に安が訊ねた。

「まさか、過剰防衛で連行しようというんじゃないだろうな」

「それは、俺にもわからない。検察が判断する事だ」

白石が、スリスクを手の平に2、3個出すと口の中に放り込んだ。組織を離れた人間など、全く気にもしていないといった様子に見えた。


「まずはご同行願って、署で話を聞こうじゃないか?ベンツの運転手も含めてね」

白石は、こちらの方をチラッと見るとそう言った。

「ベンツの乗員全員、参考人で同行してもらえ。ベンツと蛇喰が乗っていたバイクは一時的に署で預かる」

「おい、参考人で出頭させるのを数回に分けたらどうなんだ?」

「蛇喰、この状況を見ろよ。この渋滞を。数回に分けて話が聞くほど、警察は悠長なところじゃないんだよ!おまえも知っているだろう?嫌なら即連行するまでだ」

白石がそう言ってニヤリと笑った。白石は、冷徹で人を小馬鹿にするような話し方をする。前からこういうところが気に入らない所だった。警官が、数人西崎らを参考人で呼ぶためにベンツに向かった。こちらは被害者なのに、警官に囲まれている姿はとても見られた物じゃなかった。




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