第45話 負けない
「何故?何故、ここに奴らがいるのよ?」
「それは、わからない」
首を振って西崎に答えた。
「落ち着いて!相手は何も脅したり、具体的なアクションはしていないんだ。今もただバイクで走り去っただけじゃないか。相手は、こうやって、あなたをビビらせ、監視しているんだと見せつけているだけなんだよ。自分たちの存在をひけらかして、あんたにプレッシャーを感じさせるのが目的だとしたら、これでビビって動けなくなったら奴らの思う壺だぞ。それでいいのか?パニックになる事態が良くないんだ。なあ、今から堂島の再開発の現場を見に行くんだろう?」
そう言って訊ねると、西崎の手がブルブルと震えていた。
「このまま何処まで行っても、危険がいっぱいじゃないの?」
「それもわからない。奴らが何もので何がしたいのか、今の時点で、さっぱりわからないと何度も言っている」
「わ、わからへんって何や?おまえ、プロやろ?」
横で倒れていた山丘が、激怒してそう言った。
「念のために、僕にボディガードを付けているって聞いてたが、もうこんな状態で仕事を進めるのは危なかっ過ぎるわ。無理や。巻き込まれるのはゴメンやわ」
「誰かに、何かをされた訳じゃないだろう?何故、そんな簡単に決めつけるんだ?」
「何んなんだ、テメーはよ!何処のチンピラや?」
山丘が立ち上がりながら、言い方に腹立ちを覚えてそう怒鳴った。山丘が突如背中から飛んで行った。安が背後から掴み引っ張ったためだ。山丘が急に腰を抜かしたように後ろ向きで座り込んだ。
「な、何をしているのよ!」
西崎が驚いて止めに入る。
「1番の被害者は、あんただ。それなのに自分が巻き込まれたらと言い、自分の保身しか考えていない。おまけに蛇喰さんに対し、チンピラ呼ばわりしたのは許せない。言葉に気をつけろ」
背中の襟首を鷲掴みにしたまま、安が山丘の耳元で大声で怒鳴った。西崎が山丘に駆け寄ると、山丘の顔面はまるで幽霊に両手で頬を挟まれたかのように真っ青になっていた。
「安、もういい!言っても仕方がない事だ」
そう言って止めると、安が山丘の背中を離した。
「西崎社長は、この件では間違いなく被害者だ。何の言われかわからない。それなのに、何故こんな言われようをされなくてはいけないんだろうな」
ボヌールフィギュエールのステンドグラスは、投石をされて割られてしまった。理由のわからない、無言の脅迫に怯えている被害者だというのに全く理不尽な話だ。
本来なら助けてくれる仲間から、巻き込まれたくないから友達じゃないと非難されるような物だ。
「この後の予定をどうするんだ?堂島の再開発の場所を見にいかなくてはならないんだろう?」
そう訊ねると、西崎はコクリと頷き山丘の側から離れた。
「誰がどんな圧力をかけ、こういうことをするのかはわからないけど、私は決して負けないわ」
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