堂島開発創業30周年パーティー
第32話 大阪南港 蛇喰私立探偵事務所
閑散とした港の風景だった。
これが今の大阪南港の現実の姿だった。遊びで行くなら、早く起きるのは辛くない。
だが仕事となると、どうしてこうもスッキリと目覚める事が出来ないものなのだろう。早めに起きるつもりが、ドアを叩く音で起こされてしまった。
安が起こしに来てくれたのだろう。毎日彼はロードワークをしていて、その時間を確保するために逆算して起きていた。そのため、こちらからすれば目覚まし時計をセットする必要はなかった。彼が朝のトレーニングが終われば出発時間になるからだといっても言い訳に過ぎないのだが。
上体を起こした。大阪南港の事務所の皮張りのソファーで寝ていたため体が痛かった。
「ドンドン」
「わかった。今行くよ」
そう何度もドアを叩かれると、借金取りが朝一ら取り立てに来ているみたいじゃないか。近隣に聞かれて困るといっても、周りは空き事務所ばかりだった。ドアを開けると、安ともう1人筋肉質の逆三角形の見た事がない知男性と一緒に立っていた。
「元K1ファイターの松川稲美君だ。思ったよりも早く合流出来るようになったので、今日から来てくれることになった」
「よろしくお願いします」
そう言うと松川は、西洋人のように手を差し出して来たので「よろしく」と答えて握手をした。握っただけで凄い握力がある持ち主だとわかった。軽く日に焼けており、時々覗かせる白い歯は彼の考えている理想としている姿を表しているなのだろう。ブーメランパンツを履いたら、典型的なプロテインマニアにしか見えない。ドアを大きく開け、室内に案内する。
「ここで待っていてくれないか?身支度を整える」
ドアを開けると入ってすぐの場所が待合い室となっていた。昨日の服装のまま眠ってしまったので、服を着替えてから出発をしたかった。
「あそこにコーヒーメーカーがある。コーヒーの沸かした方はわかるな?」
安が頷き、松川は待合い室の椅子に座った。
「昨日は、ここで泊まったのか?」
安がそう言って訊ねると、コーヒーメーカーの置いてある戸棚を覗いた。棚のところには何かの空き缶にコーヒーの粉末が入って置いてあった。ジャムの空き瓶にスティクシュガーが刺して置いてある。密封ビンの中には紅茶パック、粉末のミルクなどが入っていた。安は手慣れた様子でコーヒーメーカーに粉末のコーヒーを入れる。
「色々調べ物をしていたんだ」
そう答えると、隣の自分のデスクが置いてある相談室に入った。
「ご苦労な事だな」
そう言った後、松川に訊ねた。
「あんたは、コーヒーよりプロテインの方が良かったか?」
それを聞いて、松川が思わず苦笑いした。
「コーヒーでいいですよ」
安が思わず目を細め、「うんうん」と頷いた。そして更に訊ねた。
「コーヒーの中にプロテインは入れないのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます