第19話 受付担当笹岡紗季

星倉が頷いた。

「店長、個別で話せるかしら?嶋田も一緒に来て」

そう西崎がエステの店員たちに訊ねると、こちらをチラッと見て後は頼んだといった風な顔をした。星倉が頷きながら奥の部屋へ案内をした。嶋田と西崎が後に続いた。

「安が外を見回ってくる」と言って、店を横切ると、店の端で固まっている女の子をチラッと見た。エステの職員たちがとろけたような眼差しで安を見つめた。その安の視線で、女の子の心を溶かしたような気がした。安が出て行った。


何者かが、このエステサロンに対して何らかの恨みを抱いているとしか考えられなかった。Googleの書き込みも、このエステは接客が良くないという指摘や、値段が高価な割には大した施術をしていないから釣り合ってないというものだった。内容は上手く脅迫めいたような発言を避けているような所があり、何か仕組まれたような感じだった。それと無断キャンセルとが繋がっているのかどうかまではわからなかった。突然の社長の訪問に緊張して立っているエステ職員たちに話しかけた。

「蛇喰探偵事務所の蛇喰です」

2人に名刺を渡した。


「受付担当の笹岡です」

「エステシャンの南棟です」

笹岡は、ショートヘアでこじんまりとした顔付をしていた。薄い両唇に知性を感じさせる。

「無断キャンセルで料金が派生しても大抵の人たちは気にしないのだろうか?」

「3割はキャンセル料としていただきますので、各コースの3割というとお客様のキャンセル料もバカにならないと思います」


南棟は、茶色髪の毛を頭の上でソフトクリームみたいに巻いていた。付けまつ毛なのか、まつ毛エクステなのかはわからないが、まつ毛が束になって瞼にくっついている。その南棟が言った。

「キャンセルは、お客様の負担にもなりますけど、私たちも手が急に空きますし、他の施術を希望されるお客様のご予約が取れなくなりますし、お互いにメリットはないと思います」


「私たちはキャンセルされないように、前日に予約確認の電話をいたしまして、SONETエレクトリックカンパニーの社員様たちと繋がっても当日に来ないんですよ」

受付の笹岡が、私たちも努力しているのだと強調するかのようにそう言った。

「ご予約通り来ていただかないと売り上げも下がるし、店舗自体の収益が上がりません」

そう笹岡が言うと、南棟が何度か頷いた。

ふと、エステの出窓から外の様子が見えた。黒のレースのカーデン越しに反対車線側の道路が見えた。反対車線側に2台の単車がライダーが単車に跨いだままこちらを見ている。そのうちの1台は先程尾行していたように感じたYAMAHAのXSR400だった。被っているフルフェイスの色も同じ物、ライダースーツの色も同じ物だった。


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