Ep.10 後悔先に立たず
「あーっ、つっっかれたぁ……!」
「お疲れ様でした、お嬢様。明日は高等科の入学式です、今夜はしっかりお休みください」
カナリアの湯浴みを手伝い、マッサージまでしてくれたマーガレットに感謝をのべて下がらせると、カナリアはようやくベッドに入った。柔らかな毛布にくるまりながら、今日あったことを思い返す。
(まさかゲームが始まる前にこんな形でリヒト様の本音を聞いたりイグニスと友達になったりするとは思わなかったけど……、ゲームのバッドエンドを回避したいことを考えたらまぁ結果オーライなのかな)
そう。実はイグニスは攻略キャラである反面、リヒトルートでは悪役令嬢カナリアと手を組んでヒロインとリヒトを引き裂く悪役になる男でもあるのだ。まぁ理由は今のブラコンなイグニスと真逆で、ゲームの場合はイグニスもヒロインが好きで弟から彼女を奪い取りたいが故の行動なのだが。
まぁもちろんその企みは失敗。しかしイグニスはすべての罪をカナリアに被せ、哀れ悪役令嬢は道化として破滅し国外へポイと言うわけだ。まぁ結局その後イグニスも破滅はするのだが。
「……と考えると、ヒロインが現れる前にイグニスと仲良く(?)なれたのはやっぱ進歩よね。今のまま仲良くなれればヒロインが現れてもイグニスが道を間違えるのだって止められるかもだし。第一、ヒロインだろうがなんだろうが私はまずリヒト様を譲る気はないし!!」
なんにせよ、成り行きではあったが破滅フラグのひとつがまた折れたようでひと安心だ。
あと回避すべきイベントがあるとすれば、入学前に一回だけあるメインヒーロー(リヒト)とヒロインの出会いイベントである。
(どんなイベントだったっけなぁ。確かヒロインははじめは普通の町娘で、でも実はこの世界でも超レアな聖女しか使えない“癒し”の魔法の使い手で……でもゲーム開始の前だからまだ覚醒してないんだよね)
そうだ、ヒロインも参加していた収穫祭で、視察に来ていたリヒト王子が馬車の暴走事故に巻き込まれ怪我をする。それを見たヒロインがリヒトを手当てした際に彼女の力が初の覚醒、リヒトの傷を癒したことで聖女候補じゃないかと見初められ、特待生枠として学院に入学してリヒトと再会を果たすわけだ。
「……ん?」
高等科入学直前の収穫祭。視察に行くリヒト。運命の出会い……!?
グルグルと回っていたワードがカチッとひとつに重なり、スチルで見たヒロインに感謝のキスをするリヒトの格好を思い出す。その衣装が今日リヒトが着ていたものと全く同じだったことを思い出し、カナリアは思わずベッドから飛び起きた。
「って、その出会いイベントまさしく今日じゃん、もう終わってるじゃん!私の馬鹿ぁぁぁぁっ!!!」
『ついでにイグニスも馬鹿ーっ!!』と八つ当たりで馬鹿にされたイグニスが、同時刻に自室でくしゃみをしていたことはさておき。
翌朝迎えに来たリヒトに『昨日の視察で聖女の候補を見つけたんだよ』と言われたカナリアが撃沈したのは言うまでもない。
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