セイブザマイス
太陽が真上に来る頃、あたしたちは森に囲まれた小高い山道の途中でランドクルーザーを停めていた。
数百メートル先にある低山の稜線近く、山肌が大きく崩れて流れ出した土砂が周囲の山林を巻き込んでいた。北上するにはかなりの迂回が必要なのだけれども、何人かのひとたちが復旧作業をしているようだ。木々で視界が塞がれている上に人影も豆粒くらいなので状況はあまりよくわからない。
「怪我人とか出てそう?」
「う〜ん……たぶん大丈夫。笑い声も聞こえるし、あんまり緊迫した感じはないかな」
「埋まったものを掘り出してるというより、通るためにどけてるみたいなの」
そのひとたちに手を貸す必要があるのか微妙なところだ。工事用重機はオアシスに置いてきてしまったから、さほど役に立つこともない。
あたしは休憩がてら、荷台で携行食を温めていた。いざとなったらすぐ車を出せるように、ジュニパーは運転席の横で待機している。いつでも
「気になるのは、あのひとたちじゃなくて、いくつか生き物の気配があることかな」
「……え。待ってジュニパー、それって、危なそうなやつ?」
「
「いや、あたしにはわからん。そもそも、気配とか全く感知できてないから」
「大きいのは、たぶん猪。かなり大型だけど、遠ざかってくから大丈夫なの。あとは……敵意を持ったひとの集団がいるみたいなの」
「ねえミュニオ、
「そう、強い隠蔽魔法を掛けてるの。軍の魔導師か元魔導師の盗賊だと思うの」
「あたしにはサッパリだけど、それ戦闘なしで突破できるかな?」
「無理かも。シェーナ、遮蔽に入って」
何かを察したジュニパーが運転席に戻り、ミュニオも荷台に降りて戦闘に備える。
「敵襲なの」
降り注いだ矢と攻撃魔法で、土砂崩れを復旧していた集団が倒されるのが見えた。彼らを助けるかどうかの判断は難しいところだけど、悲鳴を上げて転げ回っているようなので、生きてはいる。茂みから姿を現した男たちを見て、あたしは頭に血が昇るのを感じた。射られたひとたちが苦しんでいるのを楽しむかのように、威嚇めいた動きでゆっくり歩み寄っている。
「……くそッ!」
「だめ!」
荷台から飛び出そうとしたあたしはミュニオから止められる。怒りを押し殺して振り返ると、辛そうな顔の彼女は東側に銃を向け薬室に初弾を送り込んだ。
「少しだけ待って。
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